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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
シスターズIII七大罪の魔王編
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失ったモノ

 目が覚める。

 最初に映ったのは寝室の天井だった。

 私は何故ここに? 

 ……暫くして思い出し、飛び起きる。

 周囲を見渡すがクレアがいない! 

 私は急いで部屋から出る。


「お、起きたかシズハ!」


 二階の居間でクレアは何事もなかったかのように私を呼ぶ。

 その右目は大きな傷跡が残り、眼球は無い。

 左腕は完全に無くなっている、まるで最初から存在しなかったように。


「ん? あー、悪りい悪りい、まだ右目閉じたままってのに慣れてなかった! びびっちまうよな普通!」


 そう言ってクレアは笑って右目を閉じた。


「なんで笑ってられるんですか!」


 私は我慢できずにクレアに叫ぶ。


「そんな怒んなよ……別に気にしてねえし、アタシ」


「私が気にするんですよ! クレアは私のせいでそんな傷を……」


 言い切る前にクレアが私の足に蹴りを入れた。


「舐めんなよ、シズハ? アタシが負けたのはアタシの力不足のせいだ! テメェは関係ねえ! それともアレか? アタシを憐れんでるのか? なら、尚更筋違いだ!」


 クレアが怒鳴る。


「そんなつもりじゃ……」


「なら、これからは気にするな。無くなったモノは戻ってこねぇんだからな!」


 そう言ってクレアはまた笑う。

 無くなったモノは戻って来ない。

 その通りだ、それを憐れむなんて私の自己満足でしか無い。

 ん? 

 無くなったモノ……


「クレア、マモンはクレアは以前は奇蹟が使えたようなことを言っていました。私の聞いていた話と違いますよね?」


 クレアに問う。

 クレアはそっぽを向いて小さな声で答える。


「シズハには関係ねえ」


「クレア!」


 クレアは今まで私に隠し事をしたことは無かった。

 けど、今回は頑なに言う気がないらしい。

 普段なら気にしないのに今の私には気になって仕方なかった。

 そもそも魔王もなんなのかわからないままだ。

 だから。


「答えてください、クレア!」


「しつこいんだよ! わぁった! そんなに知りてぇなら教えてやるよ! それに……今回はお前を嫌でも巻き込まなきゃいけねぇみたいだしな……」


 クレアはいつになく神妙な顔つきで話し出した。


「さて、話すことは3つ。1つ魔王について、2つアタシの奇蹟について、そして3つお前の奇蹟と役割についてだ」


 そう言ってクレアは指を三本立てた。


「んじゃ、一つ目な。魔王……正確には七大罪の魔王は地獄(ゲヘナ)を管理するトップ7の悪魔の総称だ。シズハも七つの大罪って聞いたことくらいあるだろ?」


「まぁ、確か『色欲』『強欲』『暴食』『傲慢』『嫉妬』『怠惰』『憤怒』でしたっけ?」


「正解! そんでもってこの前来たのは『強欲』のマモンだ」


「そこまでは分かってますよ! けど、なぜ? 契約がどうとか言ってましたが……」


 クレアは一息ついて次の議題に移る。


「そこで二つ目が関わってくる。簡潔に話すと十年前にアタシは全魔王を倒して封印した」


「ちょっと待ってください! 色々飛ばしすぎです!」


「いや、事実だし……まぁ、その時に契約を強制的に結んだんだよ。『魔王は地上に出られ無い』ってやつ。事実上の完全封印だ。何せ魔王と『教会』は長いこと戦ってたからな。まぁ、そのあとがかなり不味かったんだよなぁ……」


「もしかして『教会』がやらかしました?」


「正解、魔王を封印したはいいけど今度はアタシの奇蹟が脅威だって話になった。アタシの奇蹟は『神の権能の模倣』まぁ、いちゃえば大抵何でもできるチート奇蹟だったわけよ」


「名前からして凄そうですね……」


「実際、魔王と互角以上に戦えたのは奇蹟のおかげだったしな! で、話を戻すが『教会』の一部がこの奇蹟は人が持つべきでは無いと反発して……まぁ、こうなったわけ」


 そう言ってクレアは着ていたシャツを脱ぎ上半身を曝け出す。

 そこには無数の傷跡が生々しく残っていた。


「……クレア、今すぐ『教会』に行きましょう。用を思い出しました」


 私の中で殺意の鼓動が目覚める。

 クレアをこんな目にした奴を見つけて死ぬより苦しい目に合わせてやる! 


「落ち着けシズハ、そもそもこれやった奴全員死んでるから復讐できないぜ?」


 クレアはいつもの口調でそう言う。

 は? 死んだ? 

 私の思考が停止しかける。

 そんなのお構いなしにクレアは語る。


「奇蹟の暴走とでも言うのかな、奇蹟をアタシから引き剥がそうとしたら引き剥がされた奇跡が暴走してアタシ以外は皆殺し、残ったのはアタシだけ。困った『教会』側は事実を隠蔽、魔王討伐の事実を改竄して今に至るってわけ」


 なんだそれは? なんだそれは! そんなんじゃクレアが報われない! 人のために戦ったクレアがどうしてそんな目に遭う必要がある! 


「シズハ、多分今お前はアタシのために怒ってくれてるんだろうがこれでよかったんだよ。少なくともアタシはそう思ってる。さて……最後の話をしようか」


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