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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
ブロウクン・ナイトメア編
50/86

生まれ変われ!『アナンタ』!

 何もない漆黒の空間に、一つのライトで照らされた椅子があり、そこには少女……リリスが座っていた。


「やぁ、観測者諸君。ちょっとした話をしよう。と、言うか私が話したい。何、休息の三日の話を簡単にね? あぁ、それと、急に()()()()()だと思うだろう? けれど、私にも君たちは限定的に()えているのさ、深淵(しんえん)(のぞ)く時はなんとやらってね。まぁ、それについてはまたいつかということで。では、語るとしよう」


 ———休息の三日間の物語を。


 第一の休日。


 まぁ、この日は皆泥のように眠っていたな。

 無理もない、何せ40時間フル稼働した後だったからな! 

 とは言え、私的には暇でしょうがなかったからとりあえず各階層に変異した『イタクァ』のデータだけは資料として共有できるように『ダアト』と対話をしていた。

 ついでに、『ダアト』のビジュアル問題についてもだ。

 正直、初日のクレアの暴言には割とカチンと来ていたからな! 

 ……まぁ、結局ビジュアルについてはまとまらなかったのだがね。


 第二の休日。


 流石に二日目になると全員起きてきた。

 とりあえず朝食を振舞った後は自由行動としたんだが、どいつもこいつも隠れて仕事をしようとするものだからホールを使って強制的に第一層に集めた後、一時的に中央エレベーターを止めることにした。

 いや、正直私が焦らせてるのは重々承知しているが、ここまでとは思わなんだ。

 第一層は他の層と違い比較的娯楽と生活に特化した層にしてある。

 空間拡張して作った娯楽室とかは割と自信作だった。

 何せ巨大モニター、空調、映画にTVゲーム各種からアナログゲームに漫画や小説等室内娯楽を詰め込んだ上で美しく整理し、かつ機能的にも完璧な部屋だ。

 ……だと言うのにアイツら使わないんだ! 

 ちゃんと娯楽室の説明をしたのに誰も使わないで寝室で邪神対策の練り合いをしていたから、ムカついて全員を娯楽室に連行して映画鑑賞会と洒落込んでやったよ。

 なんだかんだでみんな楽しんでいたようだったし良い結果だっただろう。

 それに、最後の方のホラー映画ラッシュ時の各々の反応を見るのは実に愉快だった! 

 特にアキル、光美(ミツミ)、メリアーナの反応は王道ながら最高だったな! 

 ……けど、アイツらそれ以上の化け物と()りあっているんだが、何かの不具合(バグ)か? 


 第三の休日


 この日になってアイツらはようやく正しい休日と言うやつを謳歌し始めた。

 早速、娯楽室でアナログゲームをし始めた。

 し始めたんだが……私も誘われた。

 別に嫌ではなかったが、そんな経験はシェリー相手以外では無かったからどう反応したら良いかわからなかった。

 正直、どうするのが正解かわからなかったがされるがままに私も混ざることになった。

 なんとも無理矢理な奴らだ。

 ……だが、とても楽しかったのには違いない。


「以上が私が語りたかった三日間の物語だ。何、他愛もない話だが私にとっては今まで生きてきた数兆年の中でも実に美しく感じた三日間だったのさ! さて、それでは私の自分語りはお終いだ。正しい時間の話に戻るとしよう」


 リリスがそう語ると、唯一の明かりは消え全ては暗闇に還る。







 ———地下超巨大施設『ノア』第十層 高次元万能設計機『アイン・ソフ・オウル』制御室にて




「いぃっよっしゃゃゃやぁぁあ‼︎」


 5人のグレン達が立ち上がり雄叫びを上げる。

 その不意の雄叫びに治療班として常駐していたメリアーナはビクッ、と驚く。


「その様子だと、完成したんだな! 新しい『アナンタ』が‼︎」


 そう言うと、隣で作業していた二人のリリスのうちの一人……オリジナルの方が指を鳴らし5人のグレンを統合(とうごう)させる。


「うげぇ……! ッ急に統合すんじゃねぇよ‼︎……それはともかく、できたぜ‼︎新しい『アナンタ』の設計データがな‼︎後は、『アイン・ソフ・オウル』で出力するだけなんだが……」


 グレンは軽く頭を掻いたのち、告げる。


「『アナンタ』本体のサイズが足りねぇ……」


 その言葉を聞いたリリスはすぐさま答えた。


「やはり……か、今の『アナンタ』は25メートル、対して変異体『イタクァ』は少なく見積もっても100メートルはあるだろう。このサイズ差は正直キツい。が、勿論解決策を用意してあるとも! グレンはとにかく『アイン・ソフ・オウル』を起動し新たな『アナンタ』を出力させろ。そして『ダアト』に完成までの時間を演算させてくれ。サイズ問題は私がなんとかする。()()()()()()()()


 そう言うとリリスは部屋の椅子に座ってスマホをいじっている自称吸血鬼(シェリー)に近寄る。


「やぁ! シェリー、暇してるようだな? そうだな?」


 ニコニコとした笑顔でリリスはシェリーに詰め寄る。

 瞬間、シェリーはゲートを開いて逃走を図るが何故かゲートを通れない。


「逃さんぞ、シェリー? 今まで散々休んでいたんだ、休息は十分だろう? ようやくお前の仕事の番だ」


 シェリーの両肩をがっちり掴みリリスは悪どい笑みを浮かべる。


「嫌よ! だって()()やらされるんでしょ! 私疲れて死んじゃうわ!」


 シェリーは自分が何をさせられるのか理解していた。

 それ故に断固拒否の姿勢をとる。


「そうか、じゃあ死ね。と言っても君は死なんがな」


 そう言ってリリスは自らの右手を強く握りしめる。

 瞬間、シェリーは悲鳴を上げる間もなくビー玉くらいの大きさの肉塊(にくかい)に成り果てた。


「シェリー、私は辛い。君がYESと答えてくれれば大事な友人である君にこんなことをしなくて済むのに……」


 リリスは声こそ悲しげだったが顔は邪悪な笑みを浮かべていた。


「「うわぁ……」」


 その場にいたグレンとメリアーナはその所業にドン引きしていた。

 いくら不死とはいえ、友人を容易く殺すとは……二人は一周回って謎の清々しさすら感じていた。


「さて、シェリー、時間はたっぷりあるしなんならケイトあたりも手伝ってくれるだろう。そして君はもう『ノア』から逃げられ無い。いつになったらYESと言ってくれるかじっくり待ってやろう」


 ふふ、とサディスティックな笑みを浮かべながらリリスは肉団子(シェリー)に針を突き刺すのを繰り返す。

 その度に肉団子(シェリー)はビクビクと震えていた。


「やっぱり悪魔ですよ、あの人……」


 メリアーナは絶句する。


「いつも以上に今回はハッスルしてるなぁ……」


 グレンは空虚な瞳でその光景を見ていた。


「おい、二人とも」


 不意にリリスが暗黒の笑みを浮かべながらグレン達の方を向く。


「「ひぃ!」」


 二人は思わず声を上げた。


「ふむ、期待通りの反応をありがとう。とりあえず君達の仕事は終わった。また追加の仕事が入るまではゆっくり休むと良い」


 リリスは優しげな笑みで二人に告げる。

 むしろその優しげな笑みが二人の恐怖心をより煽る。

 二人は軽く礼を言うとそそくさと第一層に帰っていった。


「さて……君はいつまで耐えられるかな? シェリー」


 リリスは肉団子(シェリー)を愛でるようにそう告げた……

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