第二層、邪神研究を攻略せよ!
———地下超巨大施設『ノア』第二層 研究室にて
「マジで意味わかんねぇ……」
数いるグレンのうちの一人が嘆く。
と言うのも、ここにいる5人のグレン+リリスCは今回の敵……『イタクァ』について調べているのだが……
「普通の『イタクァ』の性質は大体わかったが変質後がどうなるかまるでわからねぇ! 参考資料がお嬢がキレたこのクソみたいな魔導書モドキしかねぇしよぉ!」
そう、彼らはたったの2時間強で本来の『イタクァ』の性質、サイズからどの様な戦い方をするかまでのありとあらゆるシュミレーションを終えていた。
しかし、変質した『イタクァ』については全くわからなかった。
何せ前例が0……存在しないからだ。
彼らがここまで早く本来の『イタクァ』の性質等を調べ上げられたのはリリスが『過去視の魔眼』で過去に出現した際の『イタクァ』の情報を提供したのと、すでに山の様に積まれていた関係性のありそうな資料を片っ端から第二層にいる全員で読み解いたからだ。
もちろん、グレン自身の圧倒的な才覚も関与している。
「とりあえず、そろそろ3時間か……俺らは一旦休憩だが。これ、俺過労で死ぬんじゃね?」
グレンは顔を蒼くしながら呟く。
「大丈夫だ、仮に死んでも第十層の私が無理やり蘇生してメリアーナが治すからな。安心しろ」
リリスは冷徹に答えながらも研究を続ける。
「悪魔めぇ……」
グレンが呟く。
「悪魔ではないさ、異星人だ」
リリスは答える。
「はぁ……まぁ、約束しちまったしな。やれるだけはやってやるよ! じゃ、休憩入るわ!」
そう言い残すとグレンは統合され、消えた。
「さて、私も頑張るか!」
リリスは休むことなく研究を続けた。
———地下超巨大施設『ノア』第十層 高次元万能設計機『アイン・ソフ・オウル』制御室にて
「うぼぇぇえ!!!」
統合されたグレンは口から勢いよく血を吐き出す。
「「「大丈夫か⁈」」」
その場にいた雪奈、クレア、静葉がグレンの元に急いで向かう。
「よっ、と」
シェリーはすぐさまホールを開け吐き出された血が設備につかない様に回収しきった。
「や……べ……」
グレンの身体が倒れ込む瞬間、走り込んできたケイトが綺麗にキャッチする。
おかげでグレンは無傷だ。
「シェリー! ベッドは⁈」
ケイトが叫ぶ。
「あっちよ!」
シェリーは制御室の端を指差す。
ケイトは急いでグレンをベッドに寝かせた。
「メリアーナさん! 早く!」
「分かってます! 神よ、この者の苦痛を癒したまえ……」
メリアーナがそう唱えるとグレンの体が淡く輝き始める。
その後、苦痛に歪んでいたグレンの表情は穏やかなものとなっていた。
「グレン!」
ケイトが声をかけるが反応がない。
周りにいた面子も最悪の事態を想定するが……
「zzz……」
グレンはいびきをかきながら爆睡していた。
「心配させんな! 馬鹿!」
ケイトが涙目になりながらそう叫ぶ。
他の者達もグレンの無事が分かり安堵する。
「今は寝かせてやれ、大分疲れているみたいだ。まぁ、この後も何度も同じ様なことが起こるがな!」
オリジナルのリリスは雪奈の刀に力を付与する作業をしながら言葉を発した。
「これから何度もって……アンタねぇ!」
ケイトがリリスに詰め寄る。
その声には怒りがこもっていた。
「おや? 彼が望んでやったことを否定するのか、君は? もし、グレンにやる気がないなら適度にサボるはずだ。最初に統合時の危険性は説明したからな。それでも彼は全力を尽くした。前線で戦う事になる君達の為にな! それを否定する事は私が許さない!」
リリスは真剣な眼差しでケイトの目を見て答えた。
「……ッ! 分かったわよ。けど、もしグレンが死んだらアタシはアンタを殺し続けてやるから」
場が凍りつくほどの殺意をリリスに向けた後、ケイトはエレベーターホールの方へと向かった。
「どこへ行く?」
リリスが尋ねる。
「第一層、ちょっと頭冷やしてくる」
そう言うとケイトはエレベーターに乗って行った。
「ふむ、少し言いすぎたか……」
柄にもなくリリスは落ち込む。
「いえ、ケイトさんは戻ってきますよ! さぁ、私達は私達のできることをしましょう!」
そう言うと雪奈はリリスと共に作業に戻った。
「……アタシら何もできてねぇな」
不意にクレアが言葉をこぼす。
「待つのも仕事のうちです。それともクレアにしては珍しく罪悪感でも感じてるんですか?」
静葉が返す。
「正直な、やっぱり聖装無いとアタシは能無しか……」
クレアは弱々しく答えた。
「馬鹿じゃ無いんですか? いつもみたいに破天荒でいてください! そんな弱っちいのはクレアじゃありませんよ!」
クレアに肘鉄を入れながら静葉が答える。
「こんにゃろ……でも、そうだな! アタシらしくねぇや! なぁに、武器の特攻付与が終わったら戦闘訓練だろうし、イメトレでもしてるさ!」
クレアはいつもの調子を取り戻す。
それを見た静葉は少しだけ笑顔を見せた。
———地下超巨大施設『ノア』第五層 特別隔離空間室内にて
入口も出口もない漆黒の空間、上下左右さえ曖昧で重力すらない空間にリリスBとアキルはいた。
「さて、概要の説明から始めようか」
リリスはそう言って説明を始めた。
「君は以前、魔皇と融合した経験があるそうじゃないか。ならば……」
そう言うとリリスはふよふよとアキルに近づき、その胸……心臓付近に手を触れた。
「やはり、微弱ながらまだ繋がっている!」
リリスは思わずガッツポーズを取る。
「繋がってる、ってもしかして魔皇との経路⁈まさかアンタ……」
アキルは何かを察したかの様にリリスを見る。
「君の予想通りさ! その経路を広げさせてもらう!」
リリスは高らかに宣言した。
その上で続けて説明に入る。
「と、言うのもだ。今回の作戦で使う『アナンタ』……さっきのロボは本来1人乗りなんだが、グレンに改修させて2人乗りにする。1人はパイロット……つまりクリスだ。そしてもう1人、炉心として君に乗ってもらう! 『アナンタ』は生命エネルギーを動力や武装に変化させて戦う! つまり邪神にはさらに上の邪神をぶつけるのが今回の作戦の大まかな内容だ。何か質問は?」
リリスがそう尋ねるとアキルは大声で答える。
「質問も何も、魔皇の力を使うなんて危険すぎる! それにそもそも機体が魔皇の力に耐え切れるかわからないじゃない!」
至極真っ当な答えだ。
魔皇は全ての混沌の始まり、あらゆる邪神を凌駕する究極の存在だ。
しかし、一度融合したアキルは痛いほど理解している。
あれは使ってはならない禁忌の力だと。
「安心したまえ、そのための特訓だ。君にも分かりやすい様に説明すると、今の君は魔皇との経路が1%だけ開いている状態だ。そして君は30%までなら魔皇の力に肉体と精神を侵食されずに使いこなせるだろう。だが、『アナンタ』を戦わせるなら10%まで開ければ十分すぎるくらいだ。そして、『アナンタ』は40%の出力まで耐えられる様設計している。要は君は今から最低でも10%分魔皇の力を使える様になってもらう。理解できたかい?」
リリスは淡々と説明した。
「頭は理解を拒んでるけど、理性で理解はしたわ……それで、その方法は?」
アキルはリリスに質問する。
「まず私が君と魔皇の経路を広げられるだけ広げる。と言っても、一度に+1%できたらいい方だ。その後は君には魔皇の力のみを使って私が用意した練習用の怪物達と戦ってもらい経路を馴染ませる。あぁ、それと、経路を広げる時にとてつもない激痛が走るがそれは耐えてくれ」
リリスはそう答えた。
「つまり、痛いの我慢しながら死に物狂いで化け物退治しろってことね……クソッタレ! まぁ、それしかないならやるしかないか!」
アキルは両頬を叩いて気合いを入れる。
「覚悟はいい様だな。……では行くぞ!」
暗黒空間に悲痛に満ちた絶叫が走る。
永劫にも思える苦痛の試練。
けれど、アキルはその試練に身を投じた。
護るべき大切な仲間を護る力を得るために……




