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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
ブロウクン・ナイトメア編
44/86

魔術師一行と陰陽師、参戦

 ———予玖土町(よくどちょう) 蒼葉邸(あおばてい)にて


「で、私たちを玄関ホールに呼び出した理由は何かしら? シェリー」


 ボーイッシュな髪型の銀髪と深い(あお)(ひとみ)の少女……蒼葉アキルが問う。


「あー……どうって言われてもそのぉ……」


 白い肌と腰まで届く白い髪が特徴の大人の女性……シェリーは曖昧(あいまい)に答える。


「私以外もほぼ全員呼び出す、ってことは相当な大事だと思うけど……」


 アキルが話すのを(さえぎ)る様にシェリーは発言する。


「あ! 一人忘れてた! ちょっとタイム!」


 そう言うや否やシェリーは自身の頭上にゲートを開き、背中の翼を広げて飛翔し上半身をゲートに突っ込んだ。



 ———京都 某所神代家の屋敷


「あー、いい天気ですねぇ。こんなにぽかぽかしているとお昼寝したくなっちゃいますね」


 縁側にてそんなことを呟くのは黒髪の少女……神代光美(かみしろミツミ)、結界術を得意とする巫女にして陰陽師である。

 その(かたわら)には三体の式神、右牙(ウガ)左牙(サガ)白楼(ハクロウ)がスヤスヤと眠っていた。

 三体は本来、もっと巨大なのだが、今は省エネモード。

 右牙、左牙は白い柴犬の姿に、白楼は小さな蛇の姿になっていた。

 光美も式神に釣られてうとうとし始める。

 実は、()()()()()以降、光美は長期休暇に入っていた。

 滅多にない休暇を満喫しているのだ。


「ハァイ……光美ィ、調子どう?」


 (たたみ)の中から上半身だけ(のぞ)かせ、後ろ側から声をかけたのはシェリーだった。


「ギャァァァァァア!!!」


 光美の絶叫と共に彼女の休暇の強制終了が決まった。


「とりあえず、来てちょうだい」


 そう言うとシェリーは光美の腕を掴みホールに引き()り込む。

 因みにこの時、シェリーは三体の式神に噛みつかれ頭から流血し、血みどろの状態だ。


「お化けやだぁぁぁあ!」


 光美は号泣する。

 シェリーは「え? どっちかって言うとアンタがお化けに畏れられる側じゃない? て言うか私って気付いてない?」と思ったがとりあえず引き摺り込んだ。




 ———予玖土町 蒼葉邸


「ぜづな゛ぁぁぁあ! ごわがっだよぉぉお!」


 ぐしゃぐしゃの顔で泣きながら光美は二振りの刀を帯刀した黒髪ポニーテールの少女……雪奈(せつな)に抱きつく。


「よしよし、で、なんでこんな事になってるんですかシェリーさん?」


 雪奈はシェリーに質問する。

 肝心のシェリーは両足を右牙と左牙にそれぞれ噛みつかれ、白楼には思いっきり首を絞められていた。


「説明したいんだけど、肝心の説明するものがわかんないのよねぇ」


 HAHAHA、と笑いながらシェリーは答えた。


「「「「「「はぁ?」」」」」」


 その場にいたシェリー以外の六人、アキル、光美、雪奈、赤い髪を後ろで(まと)めた赤い瞳の少女……ケイト、長い銀の髪を後ろで束ねた紅の瞳の少年……クリス、ボサボサの銀髪と目の下の深いくまが特徴の少年……グレン、彼らは事前に打ち合わせていたかの様に同じ言葉を発した。

 同時に、キレたアキルは自らの右腕に魔力を回す。

<ヨグ=ソトースのこぶし>、宙の外からもたらされた魔術、その発展系にしてアキルの新たな必殺の魔術(オリジナル)<神王の鉄槌>が放たれようとしていた。


「タイム、タイム、タイム‼︎今すぐどんな要件なのか聞くから! アキルステイ‼︎」


 シェリーは急いでスマホでリリスに電話をかけ始める。


「くだらん内容だったらわかってるよな?」


 アキルは既に準備万端、いつでも<神王の鉄槌>をシェリーに放つことができる。


「……わかったわ。今回の案件は邪神関連だそうよ。詳しいことはこっちについてからってリリスが言ってた。……ってグレン以外はリリス知らないか」


 シェリーはいつもの飄々(ひょうひょう)とした態度とは違う、冷静に淡々と静かに答えた。


「邪神……!」


 アキルは<神王の鉄槌>を解く。

 彼女はよく知っている、邪神が如何に危険なモノであるかを。


「ちょっと待て、リリスからの案件だと⁈しかも、邪神って、結構前にお嬢とニャルラトホテプが仕方なく協力してどうにかした様なヤツだろ!」


 グレンが叫ぶ。


「えぇ、そうよ。そして時間がないわ」


 パチン、とシェリーが指を鳴らしゲートが開く。


「リリスは強制はしない、と言っていたけど、私は違う。一度邪神と相対し在るべき場所に還した者、邪神との戦いに身を投じた者、大災害の呪楼(元凶)を封じ続けた者、今は貴方達がみんな必要なのよ! だからお願い、ゲートを通って!」


 シェリーは心の底から頼み込むと深々と頭を下げた。


「トマス、ヴァレット、ちょっと来なさい」


 アキルが大声で二人の名を呼ぶ。

 しばらくして屋敷の奥から二人の人物がやってきた。

 白い長髪を後ろで纏めた老齢の執事……蒼葉邸執事長(しつじちょう)のトマス・フォスター。

 身長2メートルは在る筋肉質の大男……蒼葉邸の執事兼番人ヴァレット・ユーグ。


「どうか致しましたか、お嬢様?」


 トマスは微笑(ほほえ)みながらアキルに問いかける。


「私達は(しばら)く屋敷を留守にする。二人にはその間屋敷の警備と維持をお願いしたいの」


 アキルはそう答えた。


「……なるほど、そう言うことでございますか」


 周りの状況を見てトマスは即座に理解する。


承知(しょうち)致しました。しかし、お嬢様、そして皆様方に約束して欲しいのです。必ず帰ってくる、と」


 トマスはまっすぐな瞳で皆を見つめ、そう告げた。


「当たり前でしょ? 私は死ににいくんじゃないんだから」


 アキルはまっすぐと答える。


「安心しなよトマっさん、アタシは死なねぇし他の奴らも死なせねぇよ!」


 ニヒヒ、と笑いながらケイトが答える。


「同意ですね。ご安心を」


 雪奈は静かに告げる。


「えっと……私は初めて会いましたが、任せてください‼︎(まも)るのは得意なんです‼︎」


 光美は自らを鼓舞(こぶ)するかの様に告げる。


「安心しろよ、養父(オヤジ)。どうせ俺は裏方だしな、それに……馬鹿どもが死にかけたら俺が全力で治す! 簡単には死なせねぇよ!」


 グレンは決意に満ちた瞳でトマスの瞳を真っ直ぐ見て答えた。


養父(とう)さん、私も同じです。必ず皆さんと一緒に帰ってきます!」


 クリスはトマスに誓う様に答えた。


「そうですか……では、いってらっしゃいませ。皆様のお帰りをお待ちしております」


 トマスは瞳を閉じて礼をする。


「……!」


 ヴァレットは終始無言だったが力強くサムズアップをして皆を送り出した。


「「「「「「応!」」」」」」


 答える様にアキル達はサムズアップしながらゲートの中へと消えていき、最後にシェリーが通ってゲートは閉じられた。

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