『教会』にて不死者は現る
———某国 某所 『教会』本部、入口にて
「あぁ、マジでやだ……」
金髪の女性……クレアが愚痴をこぼす。
「珍しいですね、クレアがこの手のイベントでテンションが低いなんて、変なものでも食べましたか?」
黒髪の少女……静葉は心配げにクレアを見つめる。
何故彼女たちが『教会』本部に呼び出されたのか、それは前回の呪楼に関する事だ。
彼女たち(と光美)が倒したのはいずれ魔王と呼ばれる存在にも届き得る大災害の幼体だったのだ。
故に、その功績を称える為に彼女らは呼ばれたのだ。
「『教会』のイベントだからだよ……しかも今回は大司祭までいやがるし……アタシは落ちこぼれだからこの手のイベントに呼ばれるとろくな事にならねぇからマジで今すぐ帰りてぇ……」
クレアが大きくため息をついた。
「前から気になってたんですけど、クレアのどこが落ちこぼれなんですか?」
静葉は不思議に思い質問する。
「あー、そういやシズハにはまだ言ってなかったな。アタシは今20歳だが奇蹟が使えねぇ、だから落ちこぼれなんだよ」
クレアは淡々と語る。
「奇蹟って、いったい……」
静葉が当然の質問を返す。
「『教会』は本来、地獄に封じた七大罪の魔王と戦うためのエクソシスト養成機関だった。魔王に対抗するには神の力……奇蹟が必要だったんだよ。けれど、奇蹟の発現には生まれつきの才能とトリガーとなる出来事が必要不可欠なんだ。そして、奇蹟は18歳以降は絶対に発現しない。だから18歳を超えた時点で奇蹟を使えない奴は聖装みたいな武器を使って戦うんだ。奇蹟を使えるものの肉壁としてな。まぁ、アタシは別の理由もあるがな」
クレアはさらっと答えた。
「……ッ! そんなの」
静葉が言葉を発する前に荘厳な音色が響く。
「どうやら時間みたいだ、行くぞシズハ!」
そう言ってクレアと静葉は『教会』の扉を開きまっすぐ歩く。
「「あれが噂の新米か、確かに力を感じる」」
「「しかし、今回倒したのは落ちこぼれのクレアだ、能無しのくせに」」
「「静かにしろ、一応式典だ」」
あちこちからヒソヒソと声が聞こえる。
クレアはまたかと言わんばかりに呆れていたが、静葉は静かに怒り狂っていた。
それこそ今すぐ全員殺さんがばかりに。
そんななか歩き続け、一番奥、大司祭と呼ばれる老人が座る玉座にたどり着くと二人は跪いた。
「此度はこのような式典を……」
クレアが言葉を発しようとした時、突如地面に漆黒の穴が現れた。
「シズハ!」
「はい!」
「「聖装展開!」」
二人は即座に臨戦体制をとる。
式典に来ていたものたちも同様だ。
彼ら彼女らは各々の奇蹟を振るう用意がすでにできていた。
「やぁ、久しぶりだね。大司祭殿」
穴から浮遊するように現れたのはスーツを着こなした幼い少女だった。
少女は道化師じみたお辞儀を大司祭にする。
しかし、その場にいる誰もがその異様かつ異常な生命エネルギーをもって少女を敵と認定し攻撃を仕掛けた。
仕掛けたはずだった。
「外野は大人しくしたまえ、はしたないぞ?」
誰も体が動かせない、奇蹟さえ使えない。
少女はたった一瞬でこの場にいる全てのエクソシストを鎮圧したのだ。
「久しぶりですね。不死なるリリス」
大司教が少女の目を見て告げる。
その顔は非常に穏やかだった。
「その呼び名はやめたまえ。別のリリスと混同されかねん。まぁ、いい。時間がないから手短に話す。後三日と少しで人類が破滅する。人員を貸せ。魂を修復できる奇蹟持ちを1〜3人、肉体治療もできれば直良だ、それと結界の奇蹟持ちを最低10人は欲しい。後はそうだな……私の後ろで今にも斬り掛からんとしてるこの二人を借りる。こいつら、私の拘束の中でほんの少しとはいえ動けているのは魅力的だ! 二人は先にもらっていく。残りのメンバーはいつものところに座標を送ってくれればあとはこっちで回収する、説明も頼んだ。ではな!」
そう言うとリリスはクレアと静葉を連れてホールの中に消えていき、ホールは閉ざされた。
「全く、相変わらずめちゃくちゃな方だ。しかし嘘はつかないのだからタチが悪い。さて……」
大司祭はおもむろにに電話をかけ始める。
必要な人材を集める為に。




