プロローグofブロウクン・ナイトメア
———アメリカ合衆国 某所 地下超巨大施設『ノア』内部、リリスの寝室にて
「ふむ……」
ワイングラスを片手に持った金髪の11歳くらいの少女……リリスは苦い顔をしていた。
と言うのも、今の彼女は得体の知れない不安感を感じていた。
「久々に、少し視てみるか……」
そうこぼすと、リリスの紅い眼が仄かに輝きを帯びる。
彼女が行なっているのは上位の魔術『魔眼』と世に呼ばれるものだ。
本来、『魔眼』は生まれついて得る資質がなければ開花しない。
しかも彼女はこの星の生命ですらないのだから本来は『魔眼』を扱うなどあり得ないことだ。
しかし、彼女は違った。
長い時の果て集め続けた実物から理論と法則を解明し、自らが欲しい効果を付与した魔眼を後天的に作り上げたのだ。
その名を『過去視の魔眼』あらゆる過去を見通す『魔眼』である。
だが、これでは語弊がある。
彼女の定義上の過去を視るのが『過去視の魔眼』の性質だ。
そして、彼女にとっての過去は生命が感じることすらできない程の僅かな時間が過ぎ去った時。
例えるなら12時から一瞬でも時が動けばソレは最早過去、故に彼女の『魔眼』は実質、過去と現在を見通すものだ。
「さて、私の勘的にはルルイエ辺りなんだが……ハズレか。他は……ハズレ、ハズレ、ハズレ……いたか! 当たり! にしてもマズいなこれ、時間の猶予がなさそうだ。『ダアト』! 私の脳内データを変換して送った! 何もしなかった時の被害規模と奴らが邪神を呼び出す最短時間を計算してくれ!」
リリスが『ダアト』と呼ぶと、彼女の前にウィンドウが表示され絵文字の様な顔が浮かび上がる。
『了解しました。マイマスター。同期……計算開始……完了。被害規模、人類の65%の消失ないし死亡、残り猶予時間96時間です』
『ダアト』は機械的に淡々と告げる。
「マズいな、やはり時間がなさすぎる……仕方あるまい、会いたくはないが行くしかないな。『教会』本部に」
そう言うとリリスは普段着とは違うかっちりとしたスーツに着替え歩みを進める。
「あぁ、ソレと専門家たちが必要だな」
リリスはおもむろに携帯を取り出しある人物に電話をかける。
「やぁ、シェリー時間がないから概要はこっちに着いたら説明するからお前の居候先の邪神討伐に使える人材全部連れてこい! それと、京都の巫女もだ! 拒否権はないし最速で連れてこい!」
ちょ……、とシェリーが言う間もなく電話は切られた。
「さて……行くか」
そう言うとリリスはゲートを開きその中へと踏み出した。




