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幕間 ケイトちゃん最強伝説

 ———某日 日本 予玖土町(よくどちょう) 蒼葉(あおば)邸 蒼葉アキルの寝室にて


「へー、あのでっかい木急に消えちゃったんだー、アキルなんか知ってる?」


 アキルのベッドで横になりスマホを眺める少女……ケイトはアキルに質問した。


「知ってるわよ。それより私はなんでアンタが私のベッドを我が物顔で使ってるかの方が謎なんだけど?」


 不機嫌そうにアキルと呼ばれた少女が答える。

 ケイトがベッドをほぼ占領しているせいで彼女はベッドの端の方にポツンと座っていた。


「そりゃ簡単よ、ベッドの質がいいのと仄かにアキルのいい匂いがするからよ!」


 ドヤ顔でケイトは答える。

 その後、追加する様に「後で木の件教えてね!」と付け加えた。


「……なんか、真面目に返すのが馬鹿らしくなるわね、本当にこんなのが地上最強の殺人鬼とか世も末ね」


 心底めんどくさそうにアキルが呟く。


「なぁにおう! じゃあ、アタシのやべぇ伝説教えてやるぜ!」


 ケイトは意気揚々と体を上げる。

 アキルは「ソレただの武勇伝話したがりのオッサンと同じよ?」と言いたかったが我慢した。

 契約上殺されないとは言えクソ痛いパンチは喰らいたくないからだ。


「さぁて、アキルよぉ、六年前にあった惨殺逆さ吊り事件って知ってるか?」


 ケイトはアキルに問う。


「知ってるわよ、こっちでもニュースになったくらいだもの。某大国の官邸正面玄関に五人の屈強な軍人、しかも軍の上層部の人間がギリギリ原型をとどめて惨殺された状態で逆さ吊りにされた事件。内臓が飛び出てたり皮を剥がれていたりとても人のすることとは思えない所業、極め付けは官邸の白い壁に被害者の血で書かれた『悪魔は裏切り者を許さない、これは警告だ』、と書かれた怪文書。オマケに犯人の証拠は0で目撃情報すら一つもないから未だ未解決の……え、待って。アレ、アンタやったの⁈」


 アキルは驚愕すると共にドン引きした。


「正解〜! さっすがアキルちゃん、冴えてるぅ! ま、アレは文字にも書いたけど『裏切った』某国が悪いのよ? わざわざ人に偽の依頼を寄越して人を荒野に呼んで、B-2を三機も使って殺そうとするとか頭イカれてるわよ! まぁ、全部撃ち落としたけど」


 ケイトはさらっととんでもない発言をした。


「待って、待って待って! 理解が追いつかないのだけれど⁈と言うか、どうやってB-2を三機も撃墜したのよ! 荒野にそんな武器ないでしょ! ソレともアレか? 対空武器持ってたとか?」


 めちゃくちゃな情報にアキルがバグり始める。


「まぁ、ある意味対空武器ね。石よ、ちょっと大きめのやつ」


 ケイトの答えにアキルは壊れた。


「石で! B-2を! 撃墜する! 人類は! いない!」


 最もな答えをアキルは叫ぶ。


「いるさっここにひとりな‼︎……なんて冗談は置いといて、殺ったわよ、マジで。相手の飛行速度計算やらルートの目安付けやら結構大変だったわぁ、なんせ全部目視と耳でどうにかしてたからねぇ。まぁ、後はアタシという最強兵器が石ぶん投げたらソレはもう石じゃない音速超えた弾丸に大化けして当たったら大撃墜ってわけよ! ってことを3回やっただけよ?」


 ケイトは当たり前の様に言う。


「ソウデスカ……スゴイデスネ……」


 アキルは理解するのを諦めた。

 普通ならただの口からの出まかせに過ぎないがケイト(コイツ)に限っては違う。

 仕事の内容に関してだけは秘匿しろと依頼人に言われない限りは嘘偽りなく答える女だ。

 何より、アキルとケイトは6年の付き合いだがコイツならやれかねんと散々実感させられてきているからだ。


「んで、次は……」


 ケイトが次の話に入る前にアキルが止めにかかる。


「もういい! もういいから! アンタがすごいのは十分理解したから! なんなら最近まで信じてなかった世界中の裏社会から恐れられてるとか、ほぼ全世界の国と個人間で条約結んでるのも今信じたから!」


「むぅ……まぁ、それならいいか!」


 ケイトは満足げな笑顔を見せる。

 対象的にアキルはぐったりとした顔をしていた。

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