チェーンソーシスター カースド・サクラ・ブレイク
憎悪の咆哮がこだまする。
ただそこにいただけ、何の罪もない人々の嘆きが、怨みが、怒りが、漆黒の夜に響き渡る。
なぜ私たちは死ななければならなかったのか、なぜ私たちが死ぬのか、問うように猛るように叫び続ける。
最早人ではないそれらは嘆き続けた。
最初は純粋な怒りだった。
彼らを無慈悲にも殺し尽くした者に対する怒りだった。
けれど、それは次第に輪郭を失い、ただ全てを呪う禍となった。
故に———
「そう言う奴らをアタシらが救済いてやるわけ。ドゥユーアンダースタン?」
シスター服を纏った長い金髪の女……クレアが同じくシスター服を纏った黒髪の少女に得意げに言う。
「そのシバくって表現やめませんか? クレア」
話を振られた少女……静葉が苦言を呈す。
「んだよ、別に問題ないだろシズハ! 死人に口なしってやつだぜ!」
クレアはそう答えた、少なくともシスターが口にする様なことではないのは明らかだ。
「一応そんなんでも名目上はシスターなんですからもう少し上品になってください」
静葉は呆れて言い返す。
「あん? それじゃあ、まるでアタシが汚ねぇみてぇじゃねえかよ!」
「そう言ってるんですよ、クレア。理解できませんでしたか?」
静葉は即答する。心なしかその視線も哀れみと怒りが混ざった様な眼差しだ。
「よし泣かすわ。つうかシズハ、テメェ最近アタシに対して当たり強くない? カルシウム足りてる?」
クレアの額に青筋が浮かび指を鳴らすが、そこに捲し立てる様に静葉が怒鳴る。
「あなたが‼︎いつも‼︎仕事でめちゃくちゃするからですよ! 毎度毎度『教会』経由の苦情が絶えないんです! 誰が対応してるかわかりますか? わかりますよね!」
普段はおとなしい静葉だが、今回は日頃の鬱憤が溜まっているからか圧がいつも以上に強かった。
「あー、それよりーアタシらの今回の仕事の事前確認しよっかなー……」
そうしてクレアが取った選択は逃げの一手。
「逃 げ る な ……コホン。まぁ、実際今回の仕事はかなり面倒みたいですからね。続きは仕事が終わってからですね」
どうやらうまく行ったらしいとクレアは胸を撫で下ろす。
しかし、本題はここからだ。
「それで、今回の仕事ですが……まぁ、ここから見えるアレの中身の浄化だそうです」
そう言って静葉が指を刺した方には天を貫くほどの焼け焦げた巨木が聳え立っていた。
「わざわざキョートまで来てあれと対面することになるたぁなぁ……アレが噂の呪楼『蠱毒』ねぇ?」
クレアの目つきが変わる。
「呪楼自体は既に焼かれており脅威ではありませんが、問題はその中身。『大樹異変』の際の犠牲者の魂が呪楼内で混ざり合って新しい厄災になりかけてるそうです」
「まぁ、つまりはアタシらが全員シバけばいいんだろ? いつも通りじゃねぇか」
「まぁ、うまくことが運べばその通りですが……まぁ、今回は現地協力者のかたもいますしね。とりあえず、その方と合流するためにも歩きますよ!」
「えぇ、歩くのかよぉ……しゃあねぇか」
そう言うと二人は協力者の元へと向かった。
「遠い所、ようこそいらっしゃいました。私、現京都守護陰陽師の神城光美と申します」
掠れた声で自己紹介をしたのち、ゴホッ、と光美は咳をする。
彼女を心配するかの様に近くにいた二匹の白い豆柴と小さな白蛇が光美に擦り寄る。
「なぁ、本当にあのちっこいやつで合ってんのか? 今にも死にそうだぞ?」
クレアは静葉に耳打ちする。
静葉も少々困惑している様だ。
「すいません……いかんせん復帰してすぐに色々と任されちゃいまして……と言うか、普通、死にかけだった人間にこんな激務任せますかね!」
怒り気味に光美は笑う。
「あー……ミツミだっけか? アタシはクレア、横の黒髪はシズハだ。とりあえずよろしくな!」
場の空気を変えるためクレアが自己紹介をする。
「はい、『教会』の方からお話は伺っています。こちらこそよろしくお願いします」
光美はお辞儀をして返す。
「ところで、その……わんちゃんと蛇はいったい?」
静葉が光美に質問する。
「この子達は私の式神……なんですけど、今は私が弱ってるのとこの子達も力をだいぶ使ってしまったのでこの姿になってます。所謂省エネモードってやつです!」
その言葉を聞いてクレアの目が輝く。
「聞いたかシズハ! やっぱりオンミョージはシキガミだせるじゃねぇか‼︎なんでお前はでかいカエルとか出せねぇんだよ?」
「何度も言いますが、出せる方が珍しいんですぅ! ……とは言え、式神ですか。イメージしていたものとはだいぶ違いますね。なんか、こう、もっと神々しいものかと思ってました」
「本来の姿ならそうなんですけどねぇ……まぁ、この姿も可愛らしくて私は好きですよ」
光美は、ねぇーと笑顔で式神達に呼びかける。
それに呼応するかの様に二匹の白い豆柴はワンッ、と吠え白蛇はチロチロと舌を出した。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか。と、言っても既に今回の内容は伝わっていると思いますが」
そう言うと光美はクレア達の方を見た。
「応よ、要は悪霊全員シバけば良いんだろ? いつも通りだ」
クレアが答える。
「大体はその通りです! その上で呪楼が消滅しなかったら、完全に消滅させるんですが……まぁ、そこは問題ないと思います」
光美は少し補足を付け足して返した。
「消滅しない可能性もあるのでは?」
静葉が光美に対してもっともな質問を投げる。
「う〜ん、どうでしょう? 先ほども言いましたが、あの呪楼、既に根まで含めて全てが焼き尽くされた後なんですよねぇ。『今は内部にいる霊達によってギリギリ形を維持してますが、私達が全ての霊を除霊してしまえば灰に還る』と言うのが私に仕事を押し付けた連中の結論です。まぁ、最悪の場合は焼いた本人を呼んできてまた焼いてもらいますが……っと、喋っていたら着きましたね」
そう言うと光美が止まる。
彼女たちの目の前には透明だが薄い桜色をした壁があった。
「これが呪楼とそこに潜む霊達を外と隔絶する為の結界、『楼獄』です。私は今から結界の術式を少し弄るので御二方は戦闘の準備をお願いします」
そう言った後、光美は右手で結界に触れ術式変更を始めた。
「さぁて! じゃあアタシらも準備しようかねぇ!」
そう言うとクレアは首からかけていた中心に青く輝く石が埋め込まれた銀の十字架を天高く投げた。
「聖装……展、開ッ!!!」
クレアはその掛け声と共に、自身の眼前に垂直に落ちてきた十字架を全力で殴りつけた。
十字架は5つのパーツに分かれた。
瞬間、激しい光がクレアを包む。
分かれた十字架の銀のパーツはそれぞれクレアの胸部、背面、左右の前腕付近で浮遊、そして青く輝く石は空中で浮いたまま待機している。
そうして各パーツが変形を始める。
胸部のパーツは広がり上半身を覆う鋭くかつスマートな鎧へと姿を変える。
背部のパーツは鎧の配備と一部結合したのち、一対の二股に分かれた翼のない羽根の骨格のようなものへと姿を変える、さながらロボット作品のブースターじみたものだ。
左右の腕の2つのパーツはそれぞれの腕の前腕部を覆う様な鎧に形を変え、手の甲に沿う様に前腕部の鎧の側面からは腕と同じくらいの長さのブレード状のエネルギー展開パーツが構成された。
最後に、浮いていた青く輝く石が鎧の中心にはめ込まれる。
すると、変形した各パーツに石と同じ青い光の機械的なラインが浮かび上がった。
この間僅か0.5秒の出来事である。
「展開……完了! ……くぅぅう!!! 我ながら最高にカッコよく決まったぜ!」
ぴょんぴょんとはしゃぎながらクレアは叫ぶ。
「あー、はいはいスゴイデスネー。散々教会の地下でその変身シークエンス? でしたっけ? 練習してましたもんねー」
静葉は冷たげにあしらう。
「そもそも、投げる必要も殴る必要もないんですよ。ただこうやって……」
静葉は首からかけられた緑に輝く石が埋め込まれた十字架を手に取る。
「……聖装展開」
ただ一言、静かに告げる。
瞬間、眩い光が静葉を包む。
「展開完了」
光が収束した後に見えた静葉の姿はクレアのそれとは大きく違っていた。
全身に軽度の鎧を身に纏い、下半身、特に脚部が重点的に装備によって強化されており、両足は完全に鎧で覆われかつその鎧にクレアの背中に付いているブースターの極小版の様なものが片足につき左右5個づつ、計10個も付いている
両足で計20個もあるブースターから分かる通り静葉の聖装はスピードに特化したものだ。
そして、一際目を引くのは彼女の背面に浮遊している彼女の身長の倍ほどの大きさの∞の形を作って動いている無数の緑色の光の刃……否、大量のクナイであろう。
「んだよ。なんだかんだいう割にはシズハも結構カッコつけてんじゃん」
クレアが静葉にボヤく。
「普通にやっただけでカッコつけてませんから、聖装のデザインや性能設定は『教会』の創造課の管轄ですからデザイン面は私は関係ありません。そんな事より、どうやら結界の術式変更が終わったみたいですよ?」
静葉はそう答えるとクレアを連れて光美の方に向く。
「お二人とも準備万端みたいですね! それでは呪楼唯一の出入り口、根元の虚までまた少し歩きますよ〜」
二人を見た後、光美はそう言って結界の中へと入っていく。
それに続く様にクレアと静葉も続く。
「……案外普通に入れちまうもんなんだな」
クレアが呟く。
「ええ、霊体含めて入るのは誰でもできます。ただし出れるのは生物に限りますがね。まぁ、結界を壊せる様な奴がいたら話は変わりますが……」
あはは……、と光美がこぼす。
「そう言えば、さっきの術式変更は何をしていらしたんですか?」
静葉が光美に質問する。
「あぁ、私が死んでも予備のリソースで48時間は結界が維持できるようにしたのと、私が死んだら結界の範囲が自動縮小し続ける様に改変したんです。そうしておけば後任で来るであろう彼女が戦いやすくなりますからね!」
光美はそう答えた。
「んだよ。死ぬ前提か? ミツミ」
クレアが光美に問う。
「まさか、死ぬ前提では無いですよ。ただ……いかんせん私は弱いのでこういった保険をかけておかないと安心出来ないんですよ」
少し悲しそうに光美が答える。
「……そうかよ。まぁ、安心しな! なんせ今回はアタシら二人がついてんだ! そう簡単に死にやしねぇよ! それに……オマエは自分で思ってるよりよっぽど強えよ」
そう言ってクレアが光美に笑いかけた。
「そうでしょうか……」
「応よ! 自慢じゃねぇがアタシは他人を見る目だけは超一流だからな!」
「クレア、あまり調子に乗らないでください。……ですが、光美さん貴女の身の安全は私達が保証します。それに、クレアの言う通り貴女は弱くはありませんよ」
三人がそんな会話をする中『呪楼』……その入り口たる虚が目前に迫る。
悍ましい邪気を放ちながらまるで新たな贄を待っていたかの様に……
———呪楼『蠱毒』内部
「おい、大量にゴーストが居やがるとは聞いてたがこの量は聞いてねぇぞ……」
クレアが思わずこぼす。
無理もない、虚の中に入った三人が目にしたのは数多の死霊の軍勢、巨大な呪楼の内部空間を埋め尽くしてなお溢れんばかりの大軍勢だったのだから。
「……右牙! 左牙! 白楼!」
軍勢を認識した光美はすぐさま叫ぶ。
同時に三体の式神は本来の姿……右の牙が大きく発達した巨大な白狼と左の牙が大きく発達した白狼、強大かつ圧倒的なまでの巨体を誇る白蛇へとその姿を変えた。
「クレアさん! 静葉さん! 一旦上に離脱します!」
そう光美が支持をすると右牙はクレアを、左牙は静葉を咥え上げて背に乗せ、呪楼ないにある上へと続く足場を駆け上がる。
それを追う様に光美を乗せた白楼が殿を務める。
「バッ……何やってんだよ、敵は下にいんだぞ‼︎」
クレアが叫ぶ
「そうです! 下にいるんですよ! この呪楼に魅入られた筈の霊が全て‼︎」
光美が大声で答える。
「それって、どういう……」
静葉が呟くのを遮る様に光美が答える。
「彼らは怯え、畏れていました。だから下にいた! 実際問題、一体も私達を追ってきていない! それは上に『畏れ』の本体がいるからッ‼︎」
答えると同時に三人は呪楼の最上層……薄暗く開けた広間に到着した。
そして同時に『畏れ』の本体を目視した。
ソレは肉でできた様な黒く巨大な繭だった。
ソレは蠢き、胎動し、まさに今、産まれようとしている事、そしてこの世に産まれさせてはならないものである事が本能で理解った。
三人が取った行動はシンプルかつ最適な解答だった。
今出せる個々の最大火力をぶつける。
瞬時に三人は行動を起こした。
「さぁ、右牙! 左牙! 白楼! 未完成ですが行きますよ! 天神霊衣‼︎三神結界砲!!」
光美は自らの式神を鎧と定義しその全てと融合し巫女服の上から鎧武者じみた鎧を纏い、その背後には三体の式神の力を集約した三つの円環が浮遊していた。
すぐさまその円環を黒い繭に向けて砲門のように設置し、今出せる最大出力の砲撃を放った。
「大人しく逝け! 救済! スゥラァッッッシュ‼︎」
クレアは両腕を天に掲げ、ブレードに即座に生命エネルギーを集約させ自らの三倍近い長さの超高速回転する光の刃、即ちチェーンソーを形成し黒い繭へと向けてその刃を振り落とした。
「神手流奥義! 神罪破道!」
静葉は自身の背後を廻る∞の円環に生命エネルギーを集約させさらに肥大化、そしてその無数のクナイを操り黒い繭のあらゆる場所を切り刻み、刺し貫き続けた。
「はぁ、はぁ……」
光美が足をつき、息を切らす。
既に式神との融合は解けていた。
三人の攻撃は寸分の狂いもなく同時に黒い繭を襲った。
完璧だった、今行える最善の行動、威力の面でも判断も何の間違いもなかった。
そう、彼女達に非はなかったのだ。
「……嘘だろ」
絶望に満ちた声でクレアが呟く。
繭は何事もなかったかの如く鎮座していた。
そして今、繭に一筋の亀裂が入る。
「一旦下がりましょう!」
静葉が叫ぶ。
そんなことは関係ないとばかりに亀裂は大きくなる。
肉の切れる音、蠢く音、そうして産声は上げられた。
生まれ出たのは影でできた顔の無い人の赤子、赤子は生まれてすぐ、その影を下へと伸ばした。
呪楼の最下層からは霊たちの叫びの声が悍ましくこだまする。
恐怖、畏れ、苦痛、嘆き……様々な感情が入り混じった叫び声と断末魔が赤子の誕生を祝福する。
赤子は霊達を喰っている、次第に聞こえる声は小さく、弱くなる。
僅か数分で赤子は霊達を食い尽くした。
そうして変化が現れる。
赤子の肉体がボコボコと滅茶苦茶に肥大化していく、肉弾け黒いヘドロの様な体液を撒き散らしながら赤子は育つ。
ありもしない口で嗤いながら赤子は育つ、ようやく時は来たと歓喜の声をあげる。
醜く悍ましいソレの肥大化は止まらない、産ませてはならなかったもの、悪意を持って人の世を終わらせる巨人はゆっくりと成長する。
ありもしない目で見たのは自分の眼下にいる矮小な人間だ。
新しい世を作る前に遊ぶ玩具にはちょうどいいだろう。
醜い巨人はその手振り上げた。
———赤子が霊を食していた頃
「チクショウ‼︎あれどうすんだよ‼︎馬鹿なアタシでもアレがめちゃくちゃやばいのはわかるぞ‼︎」
クレアが叫ぶ。
「そう言っても、もうこれ以上の戦力が無いんですよ‼︎」
静葉が大声で返す、今の静葉にはいつもの様な余裕がない。
「私も正直手詰まりです……」
悲しげに光美が声をこぼす。
「クソ‼︎武器も今あるやつだけだし三人だけじゃ……あ? あ!」
クレアの顔色が変わる。
「よっしゃあ‼︎こうなりゃやることは一つ‼︎」
クレアが叫ぶ。
「一体何を……」
静葉がクレアを見る。
「決まってンだろ‼︎全武装合体だぁぁぁぁあ!!!」
クレアの発言に一瞬、静葉と光美が固まるがそんなのお構いなしにクレアは続ける。
「シズハ! ミツミ! お前らの力を貸せッ‼︎具体的に言うとシズハは聖装、ミツミはさっきやってたやつをアタシでやってくれ‼︎」
クレアはそう叫ぶ時間はあまり残されていないしかし……
「そんなめちゃくちゃしたら最悪貴女が死ぬんですよ‼︎そもそも光美さんの術式は転用できるか分からない‼︎それに、やったところであの化け物に勝てるかなんて……」
静葉が止めようとするがクレアの意思は変わらない。
「アホ‼︎アタシが死ぬわけねぇだろ‼︎それに今はこんなんで時間使ってる暇ねぇんだよ‼︎確かに確率はものすごい低いかも知れねぇ、けど、今は賭けるしかねぇんだよ‼︎それに、アタシは勝負もせずに負けを認めるとかぜってぇしねぇからな‼︎」
クレアが魂を込めて叫ぶ。
「クレアさん……分かりました! 可能な限りやってみましょう!」
光美が立ち上がる。
「なっ……あぁ! もう、分かりましたよ! こうなったらヤケクソです! ただしクレア‼︎絶対勝ちなさいよ‼︎」
そう言うと静葉は自らの聖装を解除し、クレアに託す。
「応よ‼︎さぁて……行くぜぇ‼︎聖装‼︎二重展開‼︎」
クレアに合わせて光美も術式を展開する。
「右牙! 左牙! 白楼! お願い‼︎力を貸して‼︎天神霊衣改変武装式‼︎」
そうしてクレアは光に包まれる。
既に装備していた自身の聖装でカバーされていなかった下半身部分を静葉の聖装が覆い、余ったパーツによって両腕のブレードパーツは三又に強化された後緑の石が腹部パーツに埋め込まれる。
さらに背後のブースターはさらに肥大化しステンドグラスを思わせる翼ができた。
そして、その背後には巨大な光の輪が三つとその中心部の穴には∞思わせる光が輝いている。
そして全身の機械的なラインは七色に光り輝き、鎧は白金を思わせる希望の光を放つ。
「さて、待たせたなクソガキ! お仕置きの時間だぜ‼︎」
既に巨人の手は振り落とされ今にもクレア達を潰そうとしていた。
が……
「行儀が悪い‼︎」
クレアは簡単に巨人の腕を弾く。
巨人は唖然とするが関係ない。
「さっさと終わらせてやる‼︎彷徨える無垢なる魂達よ、怒りも憎しみも全部救済されて、天へと還れ‼︎」
その叫びと共にクレアは両腕を天に掲げ点を貫くほどの三つのエネルギー刃を形成、ダメ押しに三つの光輪をそれぞれに通すことにより更なる威力をもたらし、その刃は輝かしい金色の光を放つ。
さらには背後の∞の光とステンドグラスの翼、各種ブースターをフルパワーで稼働させることによりスピードも限界までアップさせたのだ。
その極限の一撃を持って巨人は断末魔を上げる暇もなく真っ二つに両断され蒸発した。
「あ、言い忘れてたが、クソガキは地獄に堕ちな!」
こうして、今回の騒動はなんとか無事幕を閉じた。
「なんて、なればよかったんですけどね‼︎」
そう言いながら静葉はクレアと光美を抱えて急いで呪楼を駆け降りる。
「だって、こんなすぐ呪楼が崩れると思わなかったんだよ! それにアタシうごけねぇーんだもん。後、鼻血が止まらん」
クレアがボヤく。
「あはは……私も持ってもらっちゃってすいません……」
光美が静葉に謝る。
「……まぁ、みんな無事だからいいですよ。クレアは後で説教ですがね」
静葉が答える。
「はぁ⁈なんでアタシなんだよ! 一番頑張ったのに!」
クレアが静葉に文句を言う。
「はいはい、後でね。とにかく、帰りましょう」
少し嬉しそうに静葉は答えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
———日本 地獄 『大樹異変』後すぐの頃
「はー、閻魔様まで長いんだけどぉー、どうせ無間地獄無期懲役とかなんだからさっさとしてくんないかしら?」
一人の少女がボヤく。
その周囲にはツノを生やした屈強な男が四人いる。
そして少女は全身を拘束されている。
「……」
男たちは何も喋らない。
「お喋りもなしねぇ、つまんないわ。……はぁ」
少女は溜め息を吐く。
少女の名は神代美影。
大罪人である。




