ながいときのはて
———私が自我と呼べる物を獲得してから一体、どれだけの時が過ぎただろうか。
燃え盛る岩しかなかったこの惑星に命が溢れ、消え、最適化されるサイクルの果てに忘れられた彼ら。
星が終わるその時まで眠り続けるはずだった彼らの眠りは、一人の少女に向けられた愛によって妨げられた。
本来なら私が手を出すべきではないだろうが、今の人類に滅びられるのは少々困る。
この星が滅びるまでの暇つぶしが無くなるのは私には耐えられないからね。
だからこそ、彼をノアに呼んだのサ。
私は新しい玩具を手に入れられる、人類は存続できる可能性が生まれる。
win-winの関係ってやつサ!
ノア 居住区画 豪華な洋室にて
「……とは言え暇だなぁ」
そう呟きならがらリリスはソファにもたれ掛かっている。
「そんなこと言っても、作業をグレンに任せて自分から出て行ったのはリリス、貴方じゃない?」
シェリーはリリスの隣で淹れたての紅茶を飲みながらリリスに言う。
「仕方がないだろう? 彼は口にしなかったがアレは一人の方が仕事が捗るタイプなんだよ」
リリスはテーブルに置かれた紅茶に手を伸ばしながら答える。
「そんなのわかるもんなの?」
シェリーが不思議そうに問う。
「分かるものサ、少なくとも同じクリエイター兼技術屋としてはネ」
ふふん、と自慢げにリリスは答える。
「んー、よくわかんないわねぇ?」
「キミはどっちかというと作られた物を集めるタイプだからじゃないか?」
「そうかも、一から作ったりはしないわねぇ……けど」
そう言うと、シェリーは手元のティーカップに目を向ける。
「創り変えたり動かすのは得意よ?」
その言葉に反応するかのようにティーカップと注がれた紅茶が波打ち溶けた金属の様に流動し始める。
次第に流動するティーカップは新しいカタチへと変わり始める。
10秒もしないうちにティーカップと紅茶は鎧を纏った騎士となって掌の上で動き始めた。
「どうよ」
フンス、とドヤ顔でシェリーはリリスにの返答を待つ。
「これは……あー、どう反応してやればいい?」
リリスは紅茶に口をつけながらリリスに聞く。
「んもう! そんな反応だとシェリーちゃん拗ねちゃいますよ?」
「と言ってもなぁ……」
リリスは頭を軽く掻きながら考える。
少し考えた後、リリスは答えた。
「正直もう何京回見たか分からないくらい見せられてるから、ちょっと凄い宴会芸くらいにしか感じないんだよなぁ……」
「なっ……」
その一言に反応してか、掌の上の騎士が足から崩れ落ちる。
「おヨヨヨ……まさか数億年の付き合いのリリスにそんなこと言われるなんて……シェリー泣いちゃう」
「キミが泣くなんて数千万年単位の激レアイベントだろ。つまらん小芝居するな」
「ちぇー、リリスったらつれないんだから」
「正直、私はキミに関してなら全生物で一番詳しいからな」
Prrrrrr
「おっと?」
二人の会話に割り込む様にリリスの電話がなる。
電話の主はグレンだ。
「どうかしたか?」
リリスがグレンに問う。
『出来た』
そうグレンが答える。
「そうか、出来たか……出来たァ⁈」
想定外すぎる返答にリリスは思わず声を上げる。
『……ッ、そう言ってるだろ。ただ、ちょっと問題があってなぁ……少なくとも"俺がやれる範囲"は出来たぞ』
「わかった! すぐ行く‼︎」
そう言うとリリスは電話を切る。
「聞いたとおりだ‼︎シェリー! ゲート、ゲート開けてくれ‼︎」
「オッケー! さぁて、どうなったのかしらね?」
そう言ってシェリーは何もない空中をなぞる。
すると、皮が剥がれるかの様になぞった空間が崩れ落ち『ゲート』が開いた。




