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紅き獣の厄災

 ——とある海沿いの小さな港町 真夏の深夜


 美しく輝く星々が光のない町を照らす中、それとは対極をなすような暗黒に満ちた洞窟の奥深くより冒涜的な呪文の合唱が静かに、それでいて恐ろしくも傲慢に響き渡る。


「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん‼︎」


 ひどい湿気と磯の匂いと微かな鉄錆にも似た匂いの中、黒いフードを纏った者どもが厳かに呪文を唱える。

 傍には恐怖の表情で固まった無数の死体が捨て置かれている。


「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」


 黒フードの集団が歓喜にも似た声で高らかに呪文を唱える。

 町一つを犠牲に行われた冒涜的な儀式はもうすぐ完遂される。

 その時こそ、彼らが崇める(あくま)は目覚めるのだ! 


「ってな感じで盛り上がってるところ悪いんだけど、鉛玉パーティの時間だぜベイビー‼︎」


 そんな素っ頓狂なセリフと共に黒フードの集団の一人の頭が弾け飛ぶ。


「な、何奴⁈」


「あらま、100点満点の反応ありがとう! アタシはケイト。アンタらぶっ殺すイカれた女さ!」


 そう言うとケイトと名乗った少女は追加で二人の頭に銃弾を打ち込み爆ぜさせる。

 先程から彼女がさも当然のように扱っているのはハンドガンなどと言う生優しいものではない。

 デザートイーグルを素体に魔改造に魔改造を重ねたオリジナル、破壊力は勿論反動も馬鹿にならない。

 もし、普通の人間が使おうものなら反動で腕が消し飛びおまけで胴体もぐちゃぐちゃになるような代物だ。

 それをエアガン感覚でポンポン打つ彼女の肉体は最早、人間の物ではないだろう。


「あ、ヤッベ……」


 ケイトが一言漏らす。

 確かに彼女の肉体にはなんら問題はない。

 ないが、銃本体が耐え切れるとは言っていない。

 魔改造イーグルは計3発打って壊れてしまった。

 その光景を見た黒フードの集団はこれ幸いと祭具としても使っていたナイフや槍を手に取り死んだ仲間の仇を取らんとケイトに襲い掛かる! 

 が……


「ああー、汚れるのやだから銃使ったのに結局素手(コレ)かよ!」


 飛びかかった一人の頭を捻じ切り、手に抱えながらケイトは愚痴る。


「仕事終わったら、メンテしなきゃじゃんッ‼︎」


 言い切ると同時に手に抱えていた頭を別のメンバーの頭に思いっきり投げつけ両者を粉砕する。

 この時点で残っていた十数人の黒フード達は勝ち目がないと悟り逃げ始めた。


「ちょっと! 逃げないでよ! 仕事量増えるじゃん!」


 そう言いながらケイトは身体を限界まで沈め込ませ、跳躍し洞窟の出口に陣取った。

 それは最早瞬間移動と変わりないものだった。


「まってくれ! 頼む! 助けてくれ! 罪なら償う! だから……」


 瞬きの間に男の首がケイトによって捻じ切られ、捨てられる。


「アンタらさ? なんか勘違いしてるみたいだけど、別にアンタらはどうでもいいのよアタシ。ただ……」


 二人、三人と首が飛ぶ。


「アタシのクライアント的には不味いらしいのよねー?」


 四人、五人と頭を握りつぶされる。


「要はアタシはアンタら殺して報酬を貰う、クライアントはアンタら消えて不安が無くなる。ウィンウィンってやつよ」


 六人、七人は洞窟の壁で頭を摩り下ろされる


「ば……化け物めッ‼︎お前の方がよっぽど悪魔だ‼︎」


「よく言われるわ」


 残りの頭には手刀で綺麗な穴を開けましょう。




「ってことで、終わったわよ〜。町の方はダメね全員死んでるわ」


 仕事を終えたケイトはクライアントに電話をかける。


「んなこと言われても町民の救助は依頼に入ってなかったじゃない、どのみち間に合わなかっただろうけど。ま、後はいつも通りアンタらの功績にするなり隠蔽するなりお好きにどうぞ。報酬はいつもの方法でよろしくね〜」


「んじゃね、()()()さん」


 電話を終えたケイトは街の外に停めていた愛車にまたがり帰路に着く。

 とにかく今はさっさと汚れを落として飯が食べたい。

 そんなことに思いを馳せながら厄災(ケイト)は町を後にした。

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