エピローグof不知火
———何処かの薄暗い会議室に男女が二人。
「以上が本件……通称『大樹異変』の内容となっております」
スーツ姿の女が静かに告げる。
「全く、ひどい損害だ」
肥満気味の男が不機嫌そうに呟く」
「えぇ、多くの人々が被害に遭われましたから……」
女が言い切る前に男が割り込む。
「価値のない一般人はどうでもいい!!! 私が言っているのは有用な人材達が無駄死にしたことを嘆いているのだ!!!」
男は机を勢い良く殴る。
「で、生き残ったと言うのはどこのどいつだ?」
「こちらが資料となっております」
そう言うと女は数枚の資料を男に渡す。
「……殆ど無名じゃないか!!! あの街にはもっと有力な術者達が居ただろうに……あぁ、クソッ!!!」
男が再び机を殴る。
「ですが本題はこちら、監視用ドローン並びに監視用式神のデータからこの三名が今回の件の重要人物かと思われます」
そう言って女は更に3枚の資料を男に渡した。
「不知火に神代か、落ちぶれた無能どもかと思っていたがまだ使えそうじゃないか。それと……蒼葉? 誰だコイツは?」
「先の件で確認された超高出力による一撃を呪楼にぶつけた少女です。ですが、不思議なことに表のデータはあってもこちら側……異能者としてのデータが一切ありません」
「ほう……」
男は顎を触りながら思考する。
「この三人は生きているんだな?」
「はい、全員生存しています。どうやら式神による治療が行われたようです」
「治療できる式神持ちとは珍しいな、希少価値が高いのは良い事だ」
「ですが、記録映像を観るにどうやら式神側が自らの意思で治療を行ったように確認できます」
「式神が自ら? 馬鹿馬鹿しい、奴らに自我などあるわけがない。大方、時間差で治療するよう命令していたのだろうよ」
男は鼻で笑う。
「とにかく、生きているなら監視をつけろ。無論バレないようにな。それとは別に、物理的にアプローチも取っておけ。管理できるなら手元に置いておく価値がある! 何より道具として使えるならなおのこといい!!! では、あとは任せた。あぁ、それと……」
男は席を立ち、会議室を後にしようとするが扉の前で思い出したように言う。
「脅威になりそうなら殺してしまえ。そして死体は研究に回せ。あとは貴様らに任せる」
言い終わると男は部屋を後にする。
「了解致しました」
女は深々と頭を下げる。
女の胸ポケットには日本国異能研究機関と書かれた銀色のネームプレートが鈍く輝いていた。




