幕間 紅い殺戮者
「我が身、我が魂、我が尊厳、その全てを貴方様に……」
薄暗い煉瓦造りの小部屋、手製の祭壇の前にて祈りを捧げる男がいた。
一つ異常な点を挙げるとしたら彼が祈っていたの神や仏ではなく一人の少女の写真だった、無数の。
どうやって撮ったのかはわからないがその殆どが日常生活の1シーンだ、祭壇に飾られたもの以外はだが。
祭壇に飾られた写真に写っているのは無数の屍の中心に立つ少女だ。
その少女の写真に彼は執着にも似た祈りを捧げた後、こちらに気づいた。
「予定より早いじゃないか?」
「あいにくこっちも商売なんでね?」
「まぁいい」
そう言うと彼は懐から紅いUSBメモリを取り出した。
「お前に頼まれたデータだ。料金は要らん」
「あら? 聴いてた話と違うけど?」
そう言うと彼は歪に嗤い、言葉を紡いだ。
「あぁ、何故なら私はもう報酬を得られたのだから……あの方は自らの敵対者を必ず殺す、そこに例外は無い。私はお前にあの方の情報を渡した、それはあの方に対する敵対と変わらない。ならばこそ、あの方は必ず私を殺して殺してくれる!」
どす黒い瞳を輝かせて彼は捲し立てる。
「あぁ……想像するだけでたまらない! あの方にとって私なぞ虫も同然! そんな私があの方に意識され殺される! この日をどれだけ待ち望んだことか! あの美しい殺戮の女神に!」
話には聴いていたが彼はだいぶ末期らしい。
コッチの業界には一定数こういう奴がいるがトップレベルだ。
「その話長くなる? 私サッサと帰りたいんだけど?」
「別に構わん、お前とはもう会うこともない」
そう言うと彼は再び祭壇に向かい祈りを捧げ始める。
何度かアイツの信者には会ったことがあるが、何が彼等をそうさせるのか未だ理解できない。
けれど、そんな事はどうだっていい。
この女を殺しさえすれば私の懐には一生涯でも使い切れないほどの大金が手に入るのだから!
何が殺戮の女神だ! 所詮は人間なんだか……
瞬間、女は血飛沫を上げ、その首を飛ばされる。
彼女は何が起こったかすらわからないまま殺された。
たかだか8歳の少女の手によって。
彼女は甘くみすぎていたのだ、『紅い厄災』と恐れられる殺戮者の少女を……
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紅い血溜まりに紅い少女が一人佇む。
殺した者たちの血を吸い尽くしたかのような紅い髪と真紅の瞳が月明かりに照らされ異様な美しささえも感じさせる。
一息ついた少女は紅い軌跡を残し月夜に消える。残った獲物を殺す為。




