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第5話 【実況】PREVAILANT【挨拶決め】

「はいどうも〜。皆さんこんばんみこんばんむこんばんめ〜」


『待ってました!』

『男Vが居ると聞いて馳せ参じました』


 お〜お〜あいも変わらず逆転前ではありえない待機人数が......既に2000人を超えている。やっぱりテンション昂るなぁ〜!!


「今回やっていくゲームはこちら、PREVAILANT!今話題フットー中の5vs5テクニカルFPSゲームです......なんて今更な説明ですねハイ。」


 PREVAILANT(プレヴァリアント)。「打ち勝つ」という意味の「prevail」を語源とし、それを使った造語「PREVAILANT(打ち勝つ者)」という名のゲーム。先程も言ったが5vs5のテクニカルFPSゲームで、逆転前から良く配信していたタイトルの1つでもある。


『結構硬派なゲームやるんだね』

『もっとポップなゲームやるかと......』

『ガチガチの戦略FPSで草も生えない』


「みんなアーカイブ見てたんじゃないの......?」


 俺のアーカイブは大体PREVAILANTか雑談か、他にも音ゲーなりを幾つか......という感じ。別にカワイイゲームを主にやっていた訳でも無く、アーカイブ勢ならそれをわかっていた筈だが。


『それもそうなんだけど』

『何周もしたし知ってるけど、マジで信じられなくて』

『女でもやり込んでる人少ないのに運帯まで行ってるのも信じられない』


 運帯とは「Undying(アンダイイング)帯」の略称であり、PREVAILANTプレイヤーからは頭文字をとってUN(運)帯と言われている。PREVAILANTにおける最高ランクなので、「そこまで上がるのも運だよね〜」という意味も込められている。


「まぁまぁ見てなさいな。いつもなら1人で寂し〜くやっていきますが、今は視聴者がいるからお兄さん頑張っちゃう」


《対戦が決定しました》


「おっ! 珍しく早いマッチですね。」


 戦うマップが表示され、キャラ選択画面に移る。撃ち合いは苦手な訳では無いので、アタッカーをやる事もあるが出来ればやりたくないのが本音。なんて思ってたら味方2人がアタッカーキャラを選択した。俺は索敵キャラを選択する。他2人も裏取りを警戒出来るキャラとスモークで撹乱するタイプのキャラを選択し、バランスは良くなった。


「流石にこのランク帯となると余裕も出てきますよね」


 定点やワンウェイ(こちら側からだけ姿が見えるスモークの事)等はこのランク帯なら当たり前。ランクをお金に例えるなら「金持ち喧嘩せず」という奴で、ゴールドプラチナ辺りの中堅ぐらいの上を目指している層と比べると「強いヤツと戦い勝ちたくてやっている」勢が多い。かくいう俺もそうである。

 まずこちらがアタック側としてスタートする。

 このゲームは最初にゲーム内マネーのようなものが配られ、キルや勝利等様々な要因によって次のラウンドで貰えるマネーが前後する。1ラウンド目はお金が少ないが、索敵キャラとスモークキャラはスキルが必須なのでスキルを買って武器はハンドガンと初期装備のナイフだけになる。スキンは変えてるが。

 途中まで上手く立ち回れていたのだが、アタッカーの奮戦虚しくラウンドを落としてしまった。相手は残り2人で俺は最後まで残ったがギリギリ勝てず、ゲーム内チャットも「NT(ナイストライの略)」が多い。


『NT』

『惜しい!』

『ガチ強いじゃん』

『太陽くんもそうだけど敵も強過ぎんか......?』

『敵の2キル目のスモーク抜き怪しいけど普通なんだろうな』


「かぁ〜っ! 悔しいねぇ!!」


『昭和のオトンみたいな発散方法じゃん』


 その後も拮抗した状態が続いたが、雲行きが怪しくなってきたのは4戦目、1対2で負けている状態のラウンドスタート前。


《smoke plz》


「ん?」


『スモーク欲しいんだ』

『モクキャラ仕事してるよね』


 ゲーム内チャットで打たれた「smoke plz」の文字。そこから段々とそのチャットを打ったアタッカーキャラが本性を現し始めた。

 味方のスモークキャラに悪い所はなく、このマップはワンウェイも少ない。ただこのアタッカーキャラは味方唯一のスモークキャラを「自分の為に動いて欲しい」と思っているらしく、勝っても自分が死んでいたらチャットで「????」等打ち込むようになった。


「これスモなんも悪くないよな」


 そんな事を言って配信チャットのみんなもそうだそうだと言っていますという風な感じになってきたんだが、6対8で総合では負けているが今ラウンドは勝った時にチャットを打っていたアタッカーのVC(ヴォイスチャット)が聞こえる。


《モクキャラちゃんと合わせて動いて》


 それは少し若めの女性の普通の声で、勝ったと言うのに文句を垂れている。


「なんコイツ」


 金持ち喧嘩せず。しかし例外あり、だったようだ。それか、運帯に上がりたい上位層なのかもしれない。完全に運帯に身を置いてる俺からしたら勝ち負けはそれ程重要ではなく、気持ちよくプレイ出来るのが重要なのだが......


「昇格戦でピリピリしてるのかな?」


『無視無視』

『そもそも太陽くんモクキャラじゃないし』

『生理でしょ』


 最後のチャットは無視します。

 その後も荒らしアタッカーによる口撃は続き、目標が俺じゃない事は知っているし表には出さないが俺もイラついて来た。そして、決定的な事を言った。


《おいちゃんとモク置けよクソが》


 流石に頭に来た俺はプッシュtoトーク(特定のキーを押した時だけVCが繋がる機能)キーを押してVCを繋ぐ。


《オイ黙れ。モクキャラちゃんとやってんだろォが》

《......は? 男がなんだよ......》

《性別関係ねぇだろ。それよりお前もう1人のアタッカーよりキル出てねぇじゃん。キルが全てじゃねぇけど実績もねぇくせにガタガタ言ってんじゃねぇよ。あ?》

《......》


 現在10対11で、あと敵が1戦勝ったら敵の勝ち、こっちが勝ったらサドンデスに入る。


《自分本位なアタッカーマジで害悪だから黙ってくれ。なんで索敵キャラの俺がフラグ2位なんだよおかしいだろ。フラグトップのアタッカーさんが可哀想で仕方ないぜクソが》


 それっきりVCは黙りきってしまった。ここで慰めの言葉を言うのは簡単だが、大体こういうネトゲで荒れるタイプは下手に慰めるとプライドを刺激して逆に暴れ散らかし、トロール(意図的にチームに不利な行動。利敵行為)をする事も多い。なので、対抗心を燃やす程度で収めておくのがいい。


『えぇ......』


「あっ!」


 やっべぇぇぇぇぇ!!!! そういや俺視聴者居るんだった!!!! いつもなら配信してても視聴者居ないから好き勝手言ってたけど、今後は言動に気を付けないといけないんだった!!!! や、やべぇ......マジでどうしよう......


「あ、あー。いや、その......」


『太陽くん......』


 終わったか......


『人居ても居なくても変わらず怒るんだ』

『女にも強気に出れるの強い』

『無名でも有名でも変わらんのよな』

『アーカイブ全視聴勢に死角無し』

『他人の為に怒れるのえらい』


「おぉう」


 そ、そうだ。別に炎上しようが......いや良くはないが......ダメージは少ない。逆転前に置き換えたら個人勢女性配信者(暴言厨)になるが、これはまぁまぁ居たし。企業勢は面子があるのでそう易々と口に出来ないが、俺は個人勢なので関係ない。


「人が居ても居なくても変わらないよ! って言いたいけど、ガチ君達が居ること忘れてたわ。そうだ俺今視聴者居るんだった。気を付けます。」


『気付けなくていい』

『ありのままで』


「......まぁ、いきなり態度変えたらそれはそれでキモいか」


『そこまでは言ってない』


 その後サドンデスまでもつれ込んだが、14対12で勝つ事が出来た。チャット欄が「GG(グッドゲームの略)」で溢れる中、VCマークが光る。


《Yuukiさんすみませんでした》


 慌ててこちらもプッシュtoトークキーを押してVCを付ける。


《こちらこそゴチャゴチャ言ってすみません。頑張ってください》


 そして、リザルト画面に移った。リザルト画面ではVCは出来ない。結局総合フラグトップはVCを付けなかった味方アタッカーで、2位が敵のアタッカー。3位が俺で4位がVCアタッカーだった。なんだかんだ俺よりランキングは下だが実績は残している。後ランクは1個下だった。是非運帯に上がって揉まれて欲しい。


 その後も2戦程ランクに籠ったが、時間的に2時間程経過した。今回は調子が良く3戦3勝だったのでホクホクだ。


「はーいおつかれ〜」


『乙!』

『色々あったけど太陽くんなんでも出来るね』


「器用貧乏だけどね」


『3戦3勝の器用貧乏は最早オールラウンダーなんよ』

『嘘つけ』

『アーカイブで薄々分かってたけどゲーム上手いね』


「まぁ昔からの趣味だし、年の功って奴かな? さて、PREVAILANTはこのくらいにして、今回挨拶作りたいんだよね。雑談に移行します」


『挨拶?』

『そういえば終わりの挨拶作るとか言ってたね』

『せんせー! 公募ですかー!?』


「一部視聴者の意見も取り入れたいと思います。マロに投げてください」


 デスクトップ画面を表示して、メモアプリを起動しそこに考えてた挨拶を記入していく。


《始まりの挨拶》

・こんゆう〜

・こんゆき〜

・こんびに〜


《終わりの挨拶》

・おつゆう〜

・おつゆき〜


「まぁ適当に考えた奴だから公募で決めたいな」


『こんびに〜......?』

『コンビニ?』


「それはアレよ。「こん」に、太陽の「び」、語呂合わせで「に」で「こんびに」。コンビニエンスストアとも合わせてま〜す。さて、マロはどうかな......」


 マロを開いて1番上のものを拾う。


《ただいま(はぁと)がいいと思います》


「うーん却下かなぁ」


『ちょっと悩んでるやん』

『どっちかっていうとおかえり(はぁと)がいいなぁ!!!!』


 次々ぃ!


《こんばんみこんばんむこんばんめ好きなんだけどなぁ》


「好きな人居るんだ」


『好きというか慣れというか......』

『終わりの挨拶はなかったから増えて欲しかったけど、始まりの挨拶はアーカイブ周回勢からしたら変わらない方が自然ではある』

『懐古厨よな』


「2ヶ月でしかも盛り上がったのここ数日なのにもう懐古厨とか終わりでしょこの配信者......」


『自虐ネタ草』


 その後1時間の会議の末、始まりの挨拶は変わらず「こんばんみこんばんむこんばんめ」。終わりの挨拶は公募で「おつしー」になった。由来は俺が海沿いの街住みという設定(設定というかガチだが)から海の英語「Sea」から取った。


「それじゃ早速、おつしー!」


『おつしー!』

『おつしー!』

『おっつしー!』

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