第9話 思いもかけない誘い
昨日の救急治療で、僕は疲れていたが、今日は夜勤で夕方には病院に入らなければいけなかった。
「行って来ます」と母に声をかけた。「いつもより1時間ほど早いのね」
「少し寄らなけれはいけない用事があって」と僕が言うと、母はそれ以上突っ込んで聞く事はしない。
本を返却しに、というより彼女に会いたかったからだった。
図書館に着くと今日までの返却期限の本を返した。
興味のある本を探して、机に座った。本を開くと、彼女が僕の横に来て筆談で『少しお時間ありますか?』と聞いた。
良かった、彼女は元気そうだ。
『母がどうしても貴方にお礼がしたいと言っています。私の家でお食事に招待したいと。ご都合の良い日はありますか?』
突然の話しに正直戸惑った。
夜勤明けの次の日は呼び出しがない限り休日になっているなとスケジュール帳を見た。
『明後日だと仕事が休みです』
とメモを彼女に見せた。
『母に聞いてみますね。私のメールアドレスを教えますので登録してもらえますか?』
『では僕のメールアドレスもそのメールに送っておきます』
僕は急に彼女と近くなった事に間違えはない。
『今から仕事なので』
とメモを書くと僕は病院へと向かった。
彼女の微笑みが眩しい。
夏の日差しがそれを教えてくれた。