第3話 命を助けるための闘い
僕の仕事…。。
救急車が来るという連絡が入ると、一階の救急入り口へ向かう。
救急隊員から患者の容態が伝えらる情報に医師が応対し、僕たち看護師に指示を与える。
とにかくスピードが求められる。
救急病棟に行かなくても良いと判断された患者さんはもちろんいる。そのような場合は救急入り口にあるベッドで治療を受けて何時間か経つと自分の家に帰って行く。
重症な患者さんは、救急車が到着すると病院のストレッチャーに患者さんを移し付き添いながらエレベーターで救急病棟へ行く。
患者さんを「いち・に・さん」の掛け声をかけて数人の看護師でベッドへ移す。
パルスオキシメーターを患者さんの指先に付けるのは常だ。
そして血圧を測り、医師の処方した点滴をする。
今運ばれてきた患者さんはベッドに移す際に「あなたは女性ですか?男性ですか?」と意識が混濁した状態で僕に聞いた。
「俺?男ですよ」と答えた。
年配の女性は白衣にナース帽をつけた看護師が普通だったからだろう。
一時間あまり治療にバタバタしていたが、ようやく落ち着いて寝た様子に少し胸を撫で下ろす。
救急病棟では一般の病室とは違い、ナースセンターと患者さんの仕切りがない。
何かあれば直ぐに対応できる。
患者さんが息をするための装置をつけた音だけしかない病棟で僕はナースセンターのパソコンに向かい、患者さんの様々な処方や状態について記入しなければならない。
静寂の中でパチパチとパソコンを打つ音だけが響いている。
ようやく次の出番のナースに引き継ぐと僕は「男性ですか?女性ですか?」と尋ねた患者さんの言葉を思い出し苦笑して家へと向かった。
闘っているのは患者さんだが、看護師である自分も出来ることをし共に闘っている。
そんな僕はこれから起きる事を予想だにしていなかった。