第15話 変わりはじめていた彼女への思い
ガタンと椅子をずらして立ちあがった僕は直ぐに彼女のお父さんに言葉が出てこなかった。
「こんにちは、いらっしゃい」とお父さんの方から僕に声をかけた。
優しい瞳は雪さんによく似ていた。
「はじめまして。加藤亮です」と言うと、彼女のお母さんが「あらあら、お料理が冷めてしまうわ。あなたもお座りになって」と緊張している僕に助け舟を出してくれた。
「はっはっはっは」お父さんは明るく笑って席に座った。
「このスープは雪が作ったのかい?美味しいね」と言うと、彼女は頷いて頬を染めて微笑んだ。
落ち着いた食事だった。
ちらりと窓を見た雪さんは、すっと立ち上がるとベランダの窓を開けて空を見上げた。
お父さんが「雪は本当に雪が好きだなぁ」
「ごめんなさいね亮さん、雪はいつも初雪が降ると、雪って白くてきれいって言うのよ」とお母さんが言った。
彼女の頬にひらひらと舞い落ちる雪がそっと触れた。
雪、君の方がきれいだよ本当にきれいだ。
僕は彼女を愛していることを何故かこの時はっきりと感じたんだ。
携帯電話が鳴った、病院からだった。
インフルエンザの患者が列を作って並んでいると。中には高熱の患者もいるとの事だった。
すみません、勤務先から呼び出しがあって直ぐに行かなければいけません。
呼んで下さったタクシーに乗り込んだ。
『ごめん、ごめんよ雪さん』
僕は空を見上げて舞い落ちる雪を見ている彼女の姿を思い浮かべた。
「彼はどうしたんだい?」とお父さんが聞いた。彼女は手話を使い、僕が病院の救急病棟の看護師で病院から呼び出しがあった事を伝えると、お父さんは「ふむ」と小さく呟いた。




