第12話 彼女と重ねる日々の始まり
メールアドレスを交換したおかけで彼女との距離が縮まった。
僕が彼女に恋をしているのは確かだ。
『僕の休みの日に海へ出かけませんか?家まで迎えに行きますのでお母さんにも伝えて下さい』
返事は『海? 何年行ってないかしら。海に行きたいです。母にも伝えました』というものだった。
約束の朝が来た。
彼女いや雪さんは待っていてくれた…僕が大好きな笑顔で。
そしてピクニックバスケットがその手にあった。
僕が『持つよ』と言うように手を伸ばすと雪さんは『ありがとう』とコクリと頭を下げた。
電車で5つ目の駅で降りれば、海に近い駅に着く。
しばらく歩くと海岸へ下りる階段がある。
僕は自然に雪さんの手をとっていた。
砂浜へ下りると雪さんは裸足になり『早く行こう』と手招きをした。
僕もズックと靴下を脱ぐと走り寄った。
波打ち際で貝殻を拾っている雪さんは少女のようだった。
僕も雪さんの様子を見ながら、貝殻をいくつか拾った。
貝殻を拾いながら時間が過ぎた。
雪さんはピクニックバスケットからシートとお弁当を取り出した。
メモ帳に伝えられた言葉は『私が作ったの、美味しいかわからないけれど』
サンドイッチと冷たい紅茶はとても美味しかった。
海を見ながら静かな時間を過ごす。
寄せては返す波の音が聞こえないと思うと彼女が愛しいと思った。
でも拾った貝殻をうれしそうにハンカチに包んでいる雪さんは幸せそうだった。
帰りの電車に乗って雪さんの家に着いた。
今日は病院から呼び出しの電話がなかった事に僕はホッとした。
玄関のチャイムを鳴らすとお母さんが出てきてくれた。
心配をしていたかもしれないが、雪さんの表情を見てそれが吹き飛んだようだった。
夏が終わろうとしていた。




