第10話 頬を染めた彼女が本当に可愛いと思った
僕は病院に入る職員用の玄関先で彼女にメールを送った。
『メール届きましたか?今から仕事になるので明日の朝まで返信ができません。また明日メールで連絡しますね』と。
いったん勤務に入ると携帯電話は使えない。救急病棟では患者さんの命を預かっているので当然と言えば当然の事だ。
先ず食中毒で入院した人の記録をチェックする。
軽症だった二人の患者さんは翌日一般病棟に移されたとある。
食中毒とアナフラキーショックが同時になった患者さんは、まだ一般病棟に移れずにいる。
僕は看護記録を見て、その患者さんの様子を見に行った。
医師の処方した点滴でかなり楽になったようでホッとした。
夕食の時間になると救急病棟では少し食べられるようになった患者さんにだけ食事を運ぶが、ほとんど残す事が多い。食器の上げ下げも看護師の仕事である。
患者さんの記録をパチパチとパソコンに打ち込む音だけがする。
時間になると、痰を取らなければいけないため気が抜けない。
朝が来たらしい外の景色が見えないために時計だけが頼りだ。
血圧を計ったり点滴のチェックをしたり、溜まった尿を捨てたりとかなり忙しい。
その後、日勤の看護師に記録を渡す。
僕は着替えを済まし、外に出ると携帯電話を取り出した。
メールを見ると『メール届きました。私の名前は木村雪と言います。母に伝えました。ぜひいらして下さいと喜んでいました』とあった。
僕が歩いていると、彼女の姿が見えた。そうだね、初めて彼女と出会ったのは夜勤帰りだったから。
僕に気がつくと彼女は少し頬を染めた笑顔が本当に可愛いと思った。
『少し図書館に寄って行くね』と書いたメモを見せ、一緒に図書館へ歩いた。
図書館に付くと携帯電話を出して『僕の名前は山野亮、明日は何時に君の家に行けばいいのかな?今日の夕方メールもらえますか』と彼女にメールを送ると図書館を出て家に向かう。
セミが必死に鳴く音が図書館の木々から聞こえてきた。




