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おじさん視点

 会社を退職したのはソリが合わなかったからだ。俺の主張を「もっと具体的な企画書にしてほしい」と言ってと投げ捨てる。そんな会社と俺はソリが合わず、地元に帰ってきた。


 二ヶ月ほど前に親父が亡くなったということもあり、お袋は俺の帰郷を喜んでくれた。ずっと地元にいた従兄弟は驚いていた。あの大企業を俺が辞めて地元に帰ってきたことが信じられないんだな。


 しかし、大学からを都会ですごして地元には友人と呼べる人物はいなかった。


 優秀で地元にほとんどいなかった自分にとってはこんなものかと思ったが、ある日散歩をして、昔からある和菓子屋がリニューアルされているのに気づいた。


 昔からあるところで、中学時代の同級生である女性の実家だということはすぐにわかった。こうやって店舗をリニューアルしこれからに備えているのだとも思った。

 

 そして、その和菓子やの大きな窓から中学時代の同級生の女性が働いているのが見えた。実家で働いているのだろう。この年で実家で働いているなんて結婚はしていないんだな。独り身なんて可哀想だ。ここは俺が会って話さなくては!


 そう思って店に入ったものの、彼女は配送の仕事に出ており今は不在にしているとのことだった。そうか、だったら待っていよう。と思ったのに従業員は「お知り合いですか?」と聞いてきた。知り合いじゃなかったら訪ねてこないだろう、なんて思ったが「ええ、まあ」とちゃんと答えておいた。


 だが従業員はその答えに納得していないのか「どのようなお知り合いなんでしょうか」と詮索するようなことを聞いてきた。久しぶりに中学の同級生に会うことになんでそんなことを他人に話さなくてはいけないのか。面倒臭く感じたがどんどん疑ってくるような従業員に仕方ないかと思って話した。


「中学の同級生なんです」


「はあ」


 従業員はそんな気の抜けた返事をした。ちゃんと答えてやったんだから奥に案内してお茶のひとつでも出してくれればいいのに。


「今、配送の仕事に出てしまっていて」


 それはさっき聞いた。


「何時に戻るのか正確な時間はわからないんです」


 だから、座れるようなとこで待たせてくれてもいいのに。気が利かない。


「どんなご用事なのでしょうか?伝言があればこちらからお伝えします」


 全く、これだからパートは気が利かない!


「いえ、またきます」


 なんて失礼なパートなんだ!!






 翌日に同級生の実家の店に行くことにした。そしてあの失礼な態度のパートに憤慨しつつも寛大な俺はその態度を許してやろうと思った。


 あの独り身で寂しい女に話しかけようという俺にもっと感謝をしていいんじゃないかと思ったが、会えていない状況ではあっちもすぐに俺に感謝しようとは思わないのだろう。


 今日会って話ができればあっちもすぐに昨日の非礼を詫びてくるだろう。


 そう考え、開店の30分後に店を訪れた。


 すると昨日のパートが出てきた。


「いらっしゃいませ、何になさいますか?」


 なんて声をかけてきた!

 信じられない。昨日、この和菓子屋の娘の中学の同級生だって言ったのにまるで俺を客のように扱うなんて!!


「まさこさんはいますか?」


 独り身の寂しい女に会いにきてやったのになんていう態度なんだ!!もっと感謝してもいいだろう!!

 

「昌子は私の妻ですが、何かご用事でしょうか」


 そう言ったのは奥から出てきた男だった。妻?妻!?なんだよあの女!独身だって騙したのか!?


「申し訳ありません、私は入婿でして。私の妻に何かご用事でしたか?」


「いや、別に……」


 なんで結婚してんだ!仲良くしてやろうと思ったのに!!腹立たしくなってすぐにその和菓子屋をでた。二度とくるか!!



ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

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