親戚の高校生目線
親戚のおじさんが帰ってきた。
都会の大企業で働いていたというおじさんが帰ってきた。
なぜ帰ってきたのか。それは大人の都合というやつだ。
俺も18歳の高校生だ。なんとなくわかる。
だが、大人ぶって言わないでおこう。
この時はそう思っていたが、このおじさんには俺の『大人ぶる』というような気遣いに分類されるようなことは必要なかったんじゃないかと思うようになった。
なぜそう思ったのかはこれからの話で察してほしい。
なぜ、俺は都会からこの地元に帰ってきたおじさんの話をしようと思ったのか。
それはおじさんから、中学の同級生に会いに行った、という話を聞いたからだった。
その話を最初に聞いた時は『へえ、そうなんだ』そういう感想しか出てこなかった。
だがこの話を聞いていくと、ところどころ『それはどうなんだろうか』疑問に思う点が出てきた。
まず同級生に会い行った、というのを俺は『何かしらの手段で連絡をとって約束して会いに行った』と思ったのだ。だってそう思うだろう?中学の同級生っていうことはおじさんの歳からして30年ぶりくらいのことだろうから。今も中学の時と同じところに住んでいるかどうかもわからないし何かで連絡を取って、待ち合わせてあったんだろうと思ったのだ。
「家に行ったのに、会えなかったんだ」
ん、いえ?
「ああ、彼女は家が和菓子屋さんでね。ほら、翔太くんもわかるでしょ?あの大きな道路にある大きいお菓子屋さん。あそこが彼女の家なんだよ」
確かに大きい道路沿いに和菓子屋さんがある。確かに建物は大きいがその和菓子屋さんが住居も備えられているものかどうかはわからなかった。
けれど、家に直接行ったのに会えなかった?アポなし?家ならいつでもいるだろ?みたいな?
「僕の名前も伝えて中学の同級生だっていうことも言ったんだけど、不在ですって言われちゃって。お茶も出されなかったんだよ」
うん、突然アポなしでやってきた知らない人間にお茶を出してもてなすのはかなり勇気がいる。俺ならできないし、しない。そして、気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「その人とは仲がよかったの?」
もしかして、元カノぐらいの親密な関係だったんだろうか。ちょっと待て、約30年前の元カレがアポなしでやってくる。想像してみた、想像しただけで相当怖い。そう思って聞いた。
「話したことはなかったけど同じ中学だったから話がしたいなって思って」
あてが外れた。
「連絡も年賀状のやり取りもしていなかったけど、僕も地元に帰ってきたしそういった付き合いをしていきたいと思ったんだ」
それはまごうとなきアポなし突撃。やられた側は警戒するんじゃないだろうか。そしてそれだけ交流がない相手だったら、相手はおじさんが同級生だということもわからなかったんじゃないだろうか。そしておじさんがしていることはふ、なんて思ったけどおじさんはどこか希望で満ち溢れており、俺は何も言わない方がいいと思った。
俺が何を言ってもおじさんは聞かないだろうし。
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