Week 0.2 〜天使たん登場〜
『聖書を超える聖書』を開くと、それは真っ白だった。
なんだただのノートか。やっぱりインチキだ。
そう思った瞬間、ページ全体が黄金に輝き始め、あたりは柑橘系の甘い香りに包まれた。
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『イッキ』
目をゆっくり開けると、そこには絶世の美女がふかふかのビーンバッグに座りこちらを見下ろしていた。
見下ろしていた?
俺はいつの間にか横になっていたようだ。
その美女に横に座るように合図をされ、大人しく従う。
この世の人間とは思えないほどの超絶美女だった。
透き通る頬に、真っ赤な唇。
長細くすっと伸びた手足に、優しそうな笑み。
この方が天使か。付き合いたい。じゃなかった。まずはこの状況が全く飲めない。そしてなんで俺の名前を知っているんだ。
『世界の真理を知る心構えは出来たか』
透き通る声でそう天使様が言った。
「世界の真理?」
『知ればこの世の全てを救うことができるようになる。だが、同時のこの世の全ての痛みと闇をその両肩に背負いことにもなる』
「いやいきなりそんなこと言われても」
『嫌なのか。我の望みを聞けぬのか』
かわいい。でもそんなこと言われても困る。
そう思った途端、天使たんに急に手を握られた。
『頼む。この通りだ』
やはりものすごく可愛い。そして近い。
そのすっとした体に合わないやわからそうで大きなおっぱいの間には、これでもかというほどの魅力的な谷間があった。
そして俺の右半身には、天使たんの温もりがほんのりと伝わってくる。くっついてきているから。
結婚したい。じゃなかった。この状況をどうしたものか。
「えーと、まず、名前を教えてください」
よし、まずはここからだ。そこからどうやってLINE、じゃなくて、状況を聞き出すか。
『アリスだ』
「じゃあえっと、アリスちゃん。天使の方ですか」
『そんなところだ』
「なんで突然また俺なんですか。あの聖書のなんとかってやつ開いた人たくさんいたんじゃないですか」
『たくさんいたよ。でもどいつもこいつも不適正だった』
「不適性?」
『そうだ。世界の重みを担うものだ。そんじょそこらに適正な人間はいない』
「じゃあなんでまた俺が」
『自惚れるな。ただ可能性があるかも知れないと思っただけだ』
天使たん、あらためアリスたんに気に入られたのかと思ったが、はやとちりだったようだ。
「それで、俺に素質はありそうですか」
『それはお前次第だ。そのための心構えがあるのであれば、これから試練を与える』
「しれん、ですか」
『そうだ。試練を乗り越えられれば、この世の全てを知るための資格が与えられる。失敗すれば死ぬ』
「死ぬって」
『なんだ怖くなったか』
「まさか」
とは言ったが、誰だって死にたくはない。怖いとかそんなことよりも、まだ状況がさっぱりだった。
だが俺も男だ。こんな絶世の美女の前で恥をかくわけにはいかない。
「試練でもなんでもやってやりますよ」