貸し倉庫
数日前、自宅で私は友人と話しをした。
「やはり金があると、色々な物がほしくなる。私のような大会社の社長は特にだ」
と私が言うと、友人が不機嫌そうに言った。
「なんだ、悩みがあると言うから、相談に来てやったのに。自慢話をするのなら、他をあたってくれ」
椅子から立ち、玄関へ向かおうとする友人に、私はあわてて言った。
「いや、すまない! 裕福な生活をしていると、つい見栄を張ってしまう。しかし悩みというのは、その事なんだ」
私の真剣な顔に、友人はしぶしぶ椅子に座った。
「君も知ってのとおり、私は大金持ちだ。だがそのせいで困った事になってしまった」
「なにがだ。君は、ほしいものをすべて買うことができるし、この家は物にあふれている」
友人はまだ怒っているようだったが、私は続けた。
「それなんだよ! 私は今まで、ほしい物はすべて手に入れてきた。そして、気がついたら私が買った物は、ものすごい量になっていたんだ」
すると、友人は急に笑顔になり、少し笑って言った。
「なるほど。だから貸し倉庫の会社に働いている俺に、連絡してきたのか」
「ああ、そうなんだ」
「それで、どのくらいの広さの倉庫がいい?」
そう言って友人は胸ポケットから手帳とペンを取り出した。
「まってくれ、実はある問題があるんだ」
「なんだ?俺は会社でも結構上の位だから、多少の問題なら話がつくぞ」
私は目をそらして言った。
「それでは言うが、月くらいの広さの倉庫なんて……」
私が友人の方へ目をやると、友人は唖然としていた。それを見た私は、不安になり言った。
「やはり、そんな倉庫は無いか……」
しかし、友人の反応は意外なものだった。
「なんだそんなことか」
その、あまりにもあっさりとした言葉に、私は息をのんだで言った。
「あるのか?」
そして今日。私は友人に教えてもらった、ある店に訪れた。
その店は、ある都会の小さなビルの六階にあり、店というよりは事務所に近いものだった。
私はとりあえず、入り口にいる受付の女性に声をかけた。
「すいません、ここはA社でしょうか?」
「はい、そうですが。」
「あの、私はとても広い倉庫が必要なんです」
「すいません。当社は一般のお客様には、貸し出しを行っていません」
受付の女性の答えを聞いて、友人に書いてもらった紹介状を差し出した。
「R社とお知り合いの方ですか!すいません!」
友人の会社はどうやらこの会社と親しいらしい。
「では奥の方へ」
女性に案内され、いくつもある部屋のひとつに入った。
そこには誠実そうな青年がいて、机をはさんで置いてある椅子の片方に座っていた。
私はもう片方の椅子に座り言った。
「あの、月ぐらいの広さの倉庫なんてありますか?」
友人を疑ったわけではないが、やはり心配だった。しかし、またも不安はすぐに消えた。
「はい。当社の倉庫は広さも、多さも、世界一です」
私はうそで無いと分かり、今まで思っていたことを聞いてみた。
「もしかして倉庫は地下に?」
「いいえ。地下になどには、ありませんよ」
青年のきっぱりとした言葉を聞いて、少しショックだった。なぜなら、結構自信があったからだ。しかし、まだ考えてきている。
「分かった!海の中だ!」
「いいえ」
「では、きっと、空にあるんだ!」
「いいえ、でも少し惜しいですね」
青年は苦笑いしながら言った。
「宇宙です。この宇宙にある惑星のどれかを一つだけ借りることができます」
私はとても驚いた。いや、驚くという言葉では表せないくらい。
まさか、そんな場所を借りることができるなんて!
「そ、それは、本当ですか!?」
「はい。こちらも商売ですから。うそはつきません」
「どうやって物を遠くの惑星に?」
「それは企業秘密ですから。答えられません。ただ物は絶対壊れませんし、特定の物だけを引き取ることも可能です」
まさか、自分が知らないところで、ここまで科学が進歩しているとは……
それに、なんとすばらしい会社なのだろう。この会社の技術者を数人もらいたいぐらいだ。
そんなことを考えていると、青年が言った。
「それでは、お好きな惑星を選び、契約を――」
次の朝、私は新聞を見て、目を見開いた。そこには、新たな惑星の発見についてと、そこへ向かう調査船の完成について。
「この惑星は……」
初投稿です!最後まで読んでいただき、ありがとうございました。小説を書くのがとても苦手ですが、これからもよろしくお願いします。