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「シャアっ、オラァ!」
爆発の只中、自身の貫手で貫いたシグルドの背部装甲その飛行ユニットから、中央に内蔵されていた魂魄ドライブを無理矢理引き抜いた夕が、掴んだドライブを掲げて思わず雄叫びをあげる
「フゥ、おっと…はしたない…」
ドライブを引き抜いた事により、エーテルの供給が途切れたことで収まった爆発の中から、胴体とエクスカリバーの一部が残るのみとなったシグルドの残骸を左手にぶら下げた夕の姿が露わになる
どこぞの聖闘士の激闘後の様になった自らの見た目を気にした夕は、装備を「フンッ」とパージすると紅子と同じ様なボディスーツ姿になった
「修復は…まだ暫く掛かる…か…まぁ、破損自体は大した事無いし、大事な所はちゃんと隠れているからいいか」
自分の状態を確認した夕は、自身の破損したスーツが徐々に修復している様を見てそう判断すると、手に持つシグルドの残骸を眺めて暫く悩んだ末「……まぁ…一応ね…」と呟くと、魂魄ドライブと共に自身のアイテムボックスへ収納した
「さて…と…、詩乃ちゃんはシロさんが付いてるから問題無いとして………うわぁ…紅子さん霊気使ってる……あのフレイアって人も可哀想に…」
自身について一段落ついた夕は、他の二人の状況を確認しようと辺りを見回し、仰向けに倒れている詩乃の上で毛づくろいをするシロを見つけ一息つくと、膝をつき頭を振って周囲を警戒するフレイアの近くを悠然と歩く紅子を見つけ、その様子から紅子が仙霊術(霊気)を使っていると踏んだ夕は、この後のフレイアを思い心の中で合掌したのだった…
・・・・・・・・・
「馬鹿な…へミスト様、直々に力をを与えられたこの私が…そんな事…あり得るはずが…」
残っていた翼に加え、短槍ごと右腕を失ったフレイアは、近くに居るであろう紅子を警戒しつつも、己の現状を鑑みて敗北という現実が避けようのないものだと認識しながらも、主たる神から直接力を賜った己よりも上位の存在を認める事が出来ずにいた
「へミスト…それが貴方達に力を与えた神の名ですか…?」
「っ!…加護が?!…何故ですかッ、へミスト様…」そう言って膝をつき虚空を見上げるフレイアの前に、霞が晴れる様に紅子が姿を現しフレイアに問いかけると、フレイアは憎悪の念の篭った目で紅子を睨みつける
「("掌握完了ミ、後はコアの処理を頼むミッ"…か…了解)…だんまり…ですか、まぁ…そんな事どうでもいいんですけとね」
「ヒッ、な、なんだよ!、いきなり現れやがっ…おっおい…その構えはまさか…」
睨みつけるだけで、何も言わないフレイアに紅子がどうでも良さそうに話し掛けていると、ゼウスの怯えた様な悲鳴が上がる
ゼウスは、死にそうな奴隷二人をなんとか助けようとあらゆる回復手段を試していたのだが、魂魄ドライブを使用中に抜き取られた影響か通常の回復手段では回復させる事が叶わなかった為、最上位の回復魔法を掛け続ける事でなんとか二人を保たせて、フレイアとシグルドが来るのを待っていたのだったが、その頼みの二人が敗北するという現実に放心状態に陥っていた。其処にシグルドを片付けた夕が、シロからの要請でゼウスの前に現れた為、ゼウスは思わず悲鳴を上げたのだった
「クッ…シグルド、しくじったのですか」
さすがにフレイアもゼウスの事は気になるのか、紅子が目の前にいるにも係わらずゼウスに向い振り返ると、男の子なら一回は試した事があるであろう某仙人の必殺技の構えを取った夕と、今迄維持してきた回復魔法も中断して後ずさるゼウスが目に入る
「同時に消滅させられない限り、ダンジョン内であればリソースを使い任意の場所で復活できる…ですか」
「なっ?!何故…」
「詩乃ちゃんが目を回してくれたお陰で、二度手間に為らずに済みそうですね。まぁ…結果オーライですけど…❲紅子さん、いきます!❳えぇ、合わせます」
フレイアは、コアと同化した自分とゼウスにとっての最大の秘密が、紅子の口から語られた事に驚愕するが、相手の意図を察し、すぐさま少しでもタイミングをずらそうと行動しようとするが、思考を含め全てが融けるように崩壊し始めていて動く事もできなかった
「無駄ですよ、霊気…崩拳、その右腕を失った時から既に貴方の崩壊は始まっていたのですから」
「ア…リ……」
「さようならです…ハッ」
紅子によって、更に強められた崩拳の霊気が技の効果が加速する。
そして、バラバラと崩壊する意識の中、フレイアが最後に聞いたのは「俺は帰りたかっただけなんだ!だからッ「波ァー!」ぎゃあああ!」という、己の半身とも言えるゼウスが放った断末魔だった…




