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「ぐっ…此れにも一本だけ……やるなっブライト!」
左腕と新たに出来た右足の傷から血を流しながら、今捌いた20数本のランスの中に爆発するランスが一本だった事を、某大佐風に評価する紅子は、既に何回かのこの攻防に因って身体的にも装備的にも少なくないダメージを負っていた
そんな紅子の様子に、チャンスと見たフレイアは遂に切り札を切ることに決める
「…!(残数はぎりぎり…ダメージも予定より念入りに与えた筈、次が本命ですっ)行っ…けッ!」
「うへぇ…これはまた…ッ!」
一気にこれまでの倍近い数になったランスを並べ、それらを、今にも撃ち出そうとするのフレイアを見た紅子は、一瞬顔を引き攣らせるが、何かを察したのか顔を引き締めると、全てのビット自身の周囲に集める
「勿体ないけどッ、全機リミッター解除ッ、キツ…エネルギーの微妙に高い奴だけ……ソコぉ!」
紅子は集めたビット達のリミッターを解除させると、気を集中し無理矢理活性化させた脳で素早く演算すると、爆発するであろうランスに向けてビットから一斉に攻撃を行う
「…まだ来る!?フレイア…やるなっ!」
爆発を抜けて来たランスを見た紅子は、先行する数本のランスを右手の小太刀と左足の蹴りで弾くと、残ったランスの前に戦いの最中に散った自らの血を触媒としたシールドを出現させ爆発を相殺して見せる
「終わりです!」「…軽気…朧」
その時、死角を突いて現れたフレイアが、無骨な槍を構え紅子へ渾身の突きを放つが、穂先が身体へ当たる直前に、脳の活性化から密かに練っていた気の準備を終えた紅子が仙術を間に合わせる
「なっ?!」「つッ…」
振り返る紅子の下乳辺りから、心臓へ向けて放たれた槍が胸部の装甲を貫こうとした処、穂先が装甲へ侵入することに合わせるように紅子の身体が押し出され、フレイアが突き終わった時、その穂先は装甲の下の肌を多少傷つけた所で止まっていた
「装甲の質量と胸の慣性分、押し込まれましたか…ワタシもまだまだ未熟という事ですね…」
「化け物めッ」
そんな感想を、冷めた目で自身の胸を見て言う紅子に戦慄を受けたフレイアが、紅子の装甲へ刺さった儘の穂先からエーテルをブレード状に放出する
「仙霊術、霞…幻影です」
「ぐわぁッ」
自身の放った攻撃が紅子を貫く様に、口角を上げるフレイアだったが、耳許から突如として紅子のこえが響くと、背後に立つ紅子に片側3枚の翼を削ぎ落とされる
「グゥゥ…幻術…いつの間に」
バランスを崩し落下を始めるフレイアは、槍に感じる質量が消失し紅子の姿が霞の様に薄れていくのを見て、自分が幻術に掛けられていた事実に気づく
「かくもこの世は夢現…」
「何を言って…まぁいいです、仕切り直しと行きましょう…エーテル展…っ!」
地面へと着地したフレイアは、自分に向かい悠々と下降してくる紅子を見上げながら、再度翼を展開するためにエーテルを供給しようとして其れが出来ないことに驚愕する
「無駄ですよ…そこは既に、私が仙霊術の支配下に置きましたから…」
ふわりと着地した紅子が、何故フレイアが翼を再展開出来ないのか説明しながら全てのアーマーを解除しボディスーツ姿へ変える
「ふぅ…」と、髪をかきあげ遠くを見る様子から、彼女がフレイアから受けた傷をものともしていないのが見て取れる
「……どうやら無事?…のようですね…」
そう呟く紅子の視線の先には、正宗を持ったまま大の字に倒れて目を回している詩乃と、その詩乃のお腹の上で包み込む様に結界を張るシロが見え、その先に地面が半円状に切り取られた様な空間があるだけで、呂布だった機体も黒玉らしきものも存在していなかった
「さて…(マキシ、能力を50%まで開放して)」
❲いいよ〜❳
詩乃の無事を確認した紅子は、とあるバージョンアップの結果、自我を持つに至った自身のナノマシン(マキシと名付けた)へ能力の開放を指示して、フレイアへと向き直ると
「概念の補助的役割……そういう特性の強い魔力を能力のメインにしている貴方では、気力に霊力という、概念を持つ能力を主とする仙霊術を破る事は難しいとおもいますよ」
そうフレイアへ告げる紅子は、その存在を徐々に朧気に変化させて行くのだった




