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「ククっ…あそこは、一緒に死ねばお前の無念は晴れるのか(キリッ)って言わないと…」
紅子が肩を震わせ笑いを堪えている向こうでは、フレイアが「ならば…私も……」と、高密度なエーテルを全身に纏い出す
それを視界の端に捉えた紅子が「ククク……おっと、更にあがりますか」と呆れがちに呟いた時、詩乃が戦っている辺りから"カッ"と光が発生したことに気づく
「ん〜…っ!?あの光は…まさか……マーカーはッ?…ほっ、取り敢えずは無事っぽいね」
光を確認した紅子が何かに気づき、若干焦り気味に視界の中に表示されている、詩乃の(一応ついでに夕の)生体マーカーに変化がみられないか確認する、結果、取り敢えず命に別状は無いと一息つくと、今の光についての考察を始める
「今の光……もしかしなくても、ちょっと神力漏れてたよねぇ…でも…スキルのお陰で霊気自体は練れるとしても、ソレを高レベルで扱うのは詩乃ちゃんの頭じゃ…まず無理だし…」
尋常ならざる量の3つの力を、超超高密度な演算に依って同量混ぜ合わる事でしか発生させられない神力が微量とはいえ発生し、尚且つ、それを為したのがおそらく詩乃だという事実に衝撃を受ける紅子だったが
「いったいどうやって…」
準備が整ったのか、そう言って考え込む紅子へ、武装をデザインはこれまでを踏襲したものに近いが、よりゴツく機械的な感じに変化し、色も先程迄の白をベースにした物と違い鉛色の武骨な物に変化したフレイアが、「これならっ」と、新たに召喚したランス型の投槍を投擲する
「ミサイル?!」
フレイアから投擲されたランス自身が、ミサイルの様に噴煙を上げ加速し迫るのに対し、思わず突っ込んでしまって対応の遅れた紅子だったが、「爆発する前にたたっ斬る!」とランスに向け空中で斜めに踏み込むと、その横っ面へ居合っぽく小太刀を振り抜いた
"ギンっ"
「硬ッ!ってか重ッ!」
切断に至らず、斜め後方へ弾かれたランスを後眼に(爆発はしないんだ…)と見送ると、紅子は自らの手に残る感触に苦虫を噛みフレイアを見る
「どうやら正解の様ですね……ミスリル等と違い魔力の保有も親和性もない筈の、多少魔法の効きにくいだけの合金と思っていたものが……」
そう言うフレイアが、手に新たなランスを出現させエーテルを流し込む
「こうして、見合った量の力を注げば神鋼に優るとも劣らい物に変わるとは…マスターのお遊びも役に立ちました…ねっ!」
そうして鉛色だったランスが、本当に薄っすらと光を纏うと、再度、フレイアはソレを紅子へ投擲する
フレイアの手から離れたソレは、先程の物と同じ様に自ら加速し紅子へ迫るが、「今度こそは叩き斬ってやるっ」と、小太刀を正眼に構え意気込む紅子が得物を振りかぶった時、ランスが発光すると小太刀が接触すると同時に爆発した
「あっぶなぁ…念の為に張っておいた障壁抜けてくるなんて…」
「チッ、ですが…これはどうですか!」
爆発の中から抜け出した紅子のアーマーには、爆発したランスの破片につけられた傷がいたるところへ付いていたが、紅子自体には大したダメージが無いのを見て軽く舌打ちをしたフレイアだが、今度は、今の爆発のうちに準備していた10本のランスを同時に撃ち出した
「ゲェ…」
撃ち出された10本のランスが、これまでの直線と違い複数の航跡を描きこちらに迫る様を見て、ヘルムの中の顔を引き攣らせた紅子が、真っ直ぐこちらに迫る1本を大きく距離を取るように避ける
「やっぱり……ハァァ…」
紅子は、射線から大きく逸れた筈の自分を追尾するランス達を見て、自らの予測通りの結果だったとひとつ大きなため息つくと、アイテムボックスから同じ様な小太刀を取り出し装備すると二刀でもってランスへ突撃する
"ギィンッ" "キンッ"
これまでの小太刀でランスを弾き足を止めた紅子は、新たに取り出した斬ることに特化させた小太刀でランスを切断すると、「てッ!」とビットを使い遅れてやってくるランスを撃つ
「くぅぅ、信管式じゃないのかい!」
ビットの攻撃を受けても、多少進路を妨害されただけで、軌道修正してこちらに迫るランス群を見て、思惑が外れたと思い自らに突っ込みを入れるが
「そもそも無かったて…うわっ」
最後の一本になる迄の間、爆発するランスが無かった為、元々10本の中にはそのランス自体無かったのではと考え最後のランスを斬ろうとした瞬間、そのランスが爆発する
「ぐ…味な真似をするね……って…やっぱりそうなりますよねぇ…」
左腕を押えながら爆発から現れた紅子が、腕に刺さったランスの破片を抜きながらフレイアをみると、腹部に紅子が意趣返しとして隠蔽を付与して放った小太刀を生やしたまま「この程度…」と、口の端に血を流しなから其れでも本数を増やしたランスを維持し続けるフレイアが目に入る
「…まだまだぁ!」
そう叫んだフレイアが腕を振り降ろすと、紅子へ向け十数本のランスが撃ち出されるのだった




