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「イージスっ!」
夕の指示に従い、彼女の周りを浮遊するシールドの内の一枚が十数枚の小型のシールドに分裂すると、多方向からこちらへ迫るビームを各個に防ぐ。
「見えているぞ、ハアっ!」
ビームの光跡を死角に迫る小型の飛翔体を、自身の槍を振るい切断すると
「そこだっ、貫けっアルテミス!」
戦場を俯瞰するように複数展開している兵装アルテミスの子機からの情報により、密かに死角に入り込もうとする敵、シグルドの展開する英霊ユニットの一つを確認した夕が、瞬時に背部に展開するアルテミスの本体へ撃墜の指示を出す
[ク……トリスタンマデモ…]
アルテミスの放ったレーザーの様な一撃により、英霊ユニットを撃ち落とされた事で、夕から一旦距離を取ったシグルドが新たな動きをみせる
[…敵性個体ノ脅威度ヲ修正、現行戦力デノ目的ノ達成ハ不可能ト断定……上位個体フレイアカラノ許可ニヨリ決戦モードヘ移行ハ可能ト判断、コレヨリ機装ヴァルキリー001個体名シグルドハ決戦モードへ移行シマス…ツイン魂魄ドライブリミット解除…]
ブツブツと機械的に呟くシグルドから"ラ……ラ……"と歌声のような駆動音が響き始めると、半透明だった二対四枚の翼がその形を大きく伸ばして光そのものを凝縮したような輝く翼として実体化する。続いて13基の内、夕に撃ち落とされず残った9基の英霊ユニットを3基毎の3つの集団として自身の周囲へ集合させる
[魔力のオーバーフローに因るコアユニットの順次消失に伴いエーテルの生成に成功…光の翼…顕現します…続いて英霊ユニットをガラティーン、アロンダイト、エクスカリバーの各霊装へ……]
シグルドが集めた英霊ユニットへエーテルを注ぐと、各3基毎のユニットが1つに合わさると、それぞれに形を白と黒の砲塔と淡く光る大剣へ変えていく
その大剣を手に取るシグルドは、機体の両肩にマウントされている可動シールドの開口部へ白黒各砲塔を装着すると、「くっ…アロンダイトが被るとは…」そう悔しそうに言って浮遊する一本の剣を見る夕に照準を合わせ呟く
[消失する部分をエーテルで補っても、決戦モードで戦えるのは20分程度……アレが健在な内はマスターも…それにフレイアは必ず勝ちます、なら!]
エーテルの影響か、生物としての特性を得たシグルドは随分と人間らしい思考になっていた、そのおかげて流暢になった言葉と共に夕に向けて白と黒の砲塔から攻撃を撃ち出した
先ず白の砲塔から撃ち出されたレーザーの様な攻撃が夕を襲うが、単発の直線的な攻撃な事もあってスライドすることで余裕で夕はレーザーを回避すると、遅れて自分を追尾するように飛んでくる黒いエネルギー弾を数枚のイージスで防ぐ
「フン…中々の威力のようだが、当てられなけれ…!チッ、イージス!」
イージスと拮抗する黒いエネルギー弾を見て鼻で笑う夕へ向けて、避けた筈のレーザーが薙ぎ払らわれる。油断していた為避けられないと判断した夕は残りのイージスを使いレーザーを防ごうとするが
「なにっ?!アッぎっ!ぎぎぎ……」
予想外に僅かな抵抗の後纏めて切断されたイージスに、慌て左腕を盾にして横薙ぎのレーザーを受けると篭手を焼き切られ直接腕でレーザーを受ける事になった
夕は一瞬の熱の後に感じた痛みに、急いで腕の強化を高めなんとかレーザーが消える迄耐きり腕の切断を免れる
「や…やるではないか、貴様…だがッなあッ?!」
ヘルムの中の額に脂汗をかきながら腕の痛みを痩せ我慢して、シグルド何かを言い返そうとしていた夕に、今度はイージスを押し潰す様に破壊したエネルギー弾が迫った
「グウウ……ッ!なんとオォぉぉ!」
なんとか抱き止める様にエネルギー弾を受け止めた夕だったが、攻撃を反らそうとして自分の力が徐々に抜けていく感覚を覚え、反対に肥大化していくこのエネルギー弾を見て力を吸収されている事に気づくと、直感で吸われる力が魔力だという事に気づき即座に魔力を上回る気を纏うとエネルギー弾を抱き潰す
「どうだっ……消え…」
抱き止める際、投げ捨ててしまった短槍の代わりに、手近に浮遊していた大剣型の兵装を手に取りシグルドへ向け切っ先を向けるが其処にシグルドは既にいなかった
「…っ、上か!?」
[沈めぇぇぇ!]
上空から霊装アロンダイトを叩き付ける様に振り降ろしてくるシグルドに対し、夕は偶然手取った大剣型の兵装アロンダイトを寝かせて迎え撃つが、降下の勢いを夕が持つ物より一回り大きな大剣へ乗せて振り降ろされた一撃は、受け流しを狙った夕の予測を超えた物であった為、もろに攻撃を受け止める事になる
「ぐっ…この程度の攻撃で…」
[ハァァ……まだ…です!エクスカリバー!]
攻撃を受け止めた衝撃で、夕を中心に地面に小さなクレーターが出来ている中、プラスで気を纏った事で先程より余裕の有る夕に対し、打ち付けた大剣へ力を込め続けるシグルドが有線兵器の様にパージした盾ごと白の砲塔を夕の後方へ回り込ませると、レーザーを撃ち出した
「フン…既に対策済みだ、アイギス!」
エクスカリバーがレーザーを撃ち出すのに合わせて、夕が射線上へ残っていたもう一枚の盾を割り込ませると同時に発射されたレーザーは、アイギスと呼ばれた盾に反射されてしまう
[なっ…クッ、ガラッ?!]
エクスカリバーを簡単に防がれた事で焦ってしまったシグルドは、エクスカリバーの攻撃の隙に使うつもりでいた、砲塔型から剣型へ密かに変形させていたガラティーンを夕へ射出しようとするが、其れよりも早くアルテミスと夕が呼んだ兵装から撃ち出された矢の様な形のエネルギー弾が、刀身の中程を破壊した事でガラティーンは2つに折れてしまう
「エーテル…だったか…?その特性に特化させ過ぎた結果だな」
[ならば!このまま押し潰すまで!]
夕の言った言葉に気にすべきところがあったとしても、自身に残されている時間でマスターであるゼウスを救う為、止まる事の出来ないシグルドは、身体がエーテルに変換される速度が上がるのも構わずドライブの出力を更に上げアロンダイトを押し込む
「くっ?!ここに来て更に力が……!貴様ッ…その身体は……」
シグルドからの圧力が増した事に驚く夕だったが、シグルドのその身体が光を伴い徐々に消失する様を目の当たりにすると何かを察する
「…そうか…貴様が其処まで覚悟しているのなら…」
そうヘルムの中で呟いた夕の身体から、高度に練り挙げられた気が漏れ始めると、ググッと大剣を押し返しだす
「私も、今出せる全力で持って…相手をしてやろう!」
漏れ出た気が薄っすら発光すると同時に「ハァァっ!」と、一気に自身のアロンダイトを振り上げてシグルドを振り払うと、シグルドの覚悟に応える為、己の奥義の1つ発動する
「ハァァ、見るがいい!気力を用いた一つの到達点をッ!」
[クッ…何を馬鹿な…こ…]
夕は、己が扱える気力の限界を超える気力を強引に引き出すと、無理矢理にもソレを圧縮して身に纏ってしまう
「…フゥ…またやってしまった……皆から超サ×ヤ人2みたいって言われるからやりたく無かったのに……というか超×イヤ人って何種もあるの?」
限界を超えた気力の影響か、性格が元に戻った夕の武装は全てが薄っすら金色を纏い、超高密度の気力が放電の様な現象を伴い、彼女が言った様にさながら某スーパーなサイヤ人の第2形態のように夕を取り巻いていた……




