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詩乃が取り出したセキトーが残した派手な光跡のせいで紅子の隠蔽が解け姿を晒す事になった三人は、案の定、相手のダンジョンマスターの男に発見されていた
「さすがにアレは隠蔽も解けるよ……ん?」
羞恥心から暴走した結果、やらかした詩乃をジト目で見つめながら呟く紅子に、シロからの解析結果が届く
「へぇ、有りがちと言えば有りがちだけどね」
詩乃が奉先クンを使った事で、ソレを囮にして潜入する事に変更した三人はヘルメット等の装備を外していた為、アイテムボックスを兼ねた腕輪の端末へとシロの報告が送られていた
腕輪から浮き上がった画面を見た紅子が、画面から目を離し相手の男の近くに居るエルフっぽい幼女を視界に捉えていると
「あの娘がコア…なんですよね」 ❲ミミッ❳
「みたいだね……さて、どうするか「アハハ…こうなれば…二人の記憶を……無理だぁ…返り討ちに……」…な」
シロからの報告で、此方を睨む様に見つめる他の二人と違い男の後ろに静かに佇むエルフの幼女がダンジョンのコアだと解った紅子が、両手をついて項垂れている詩乃を視界の端に捉えながらこのあとの事を考えていると
[マスター…乱入シタ機体ニヨリ標的ヘノ有効打ガ与エラレマセン……ソノセイデ標的ノエネルギーガ回復シツツアアリマス……要請シマス…状況ノ打破ノ為サラナル武装解除ノ許可ヲ…マスター]
そう、自身の攻撃が乱入してきたセキトーに依って防がれ、あろう事か奉先クンのダメージの回復まで確認した、シグルドと男に呼ばれていた少女が、攻撃の手を止める事無く淡々とした声で現状を打破するための要請を男にもとめるのを耳にする
「あっ?!……チッ糞がッ!許可する、撃ちまくれっシグルド!」
[マスターノ受諾ヲ確認……浮遊開始…各英霊ユニットヲ射撃モードデ展開…砲撃戦モードヘノ移行…完了シマシタ……斉射開始…]
シグルドからの要請に、紅子達の様子を伺っていた男がチラリと奉先クンの方へと視線を移すと、セキトーがシグルドからの攻撃を障壁で巧みに反らしているのがみえる、その事実に男は忌々しそうに舌打ちすると要請への許可だす
その許可を得たシグルドは、機体を浮遊させると背部に羽の放射状に浮遊させていた複数の剣の様なユニットと両肩部にあるシールドの先端部にエネルギーを集約させると、奉先クンに向け展開し照準を付けると即座に発射する
様々な色の複数のビーム状の攻撃が一斉に奉先クンを襲うが、其処にセキトーが今度は障壁だけでは無く両翼を2枚のシールドと8基のビットへ分解展開させ割り込むと、シグルドのシールドからの大型のビームを展開した浮遊するシールドで弾き、残りの攻撃を障壁とビットからのビームに拠って迎撃していく
[シールド展開……高機動霊装展開……起動準備中ニ対象Bノ脅威度ヲ再計算……]
セキトーのビットからの攻撃を、ピンポイントバリアの様な障壁で防いぐシグルドは、攻撃を継続しながらも予測を上回る性能を見せるセキトーへ対応する為、背部と脚部に装着する機動ユニットを伸ばして展開していく
「クソッ、何だよアイツはファンネルかよ…「させませっ!」っ!うわっ」
“ギャンッ”
セキトーがビットを展開してシグルドに対応している様子を見た男が、忌々しそうにしている処にいきなり飛んで来た苦無をエルフの幼女が割り込んで防ぐが、苦無とは思えない程の攻撃の重さに攻撃をいなし切れず、男を巻き込む形で吹き飛ばされる
「主!」「ご主人!」
「ありゃ?防がれちゃった、結構本気で投げたのに……ちょっとショックかも」
男を心配して駆け寄る女達を見ながら、苦無を投げた紅子は攻撃を防がれた事に少なからずショックを受けていた
「それ、ホントですか?軽くでは無くて?」
隣で様子を見ていた夕が紅子の言葉に反応する
「うん、もちろん全開じゃ無いけど、装備は戦闘用じゃ無いけど身体強化はそこそこしたし、それに魔力は通して無いけど一応あの苦無も日本で造った特製の奴だしねぇ」
「それを素の状態で…ですか」
「この後どれくらい強くなるか解んないけど……どうやら私達も装備を戦闘用に替えといた方が良さそうだね」
「そう……ですよねぇ……ハァ…あわよくば此の儘…って思ってたの…にっ!」
「っ…コレに反応しますか…しかしっ」
“ガッ”いつの間にか間合いを詰めてたエルフの幼女が、地を這う様な姿勢のから夕の下腹部へ向けて魔力を込めた拳を放とうとするが、拳の出掛けを夕が踵で受ける事で止められてしまう
「なにっ!くっ」
万が一、攻撃が防がれても拳に込められた魔力に拠って相手の内部を破壊するつもりだった幼女は、夕のなんの変化も起さない足と唇を歪ませ拳を振り下ろそうとする様を見て慌て距離をとる
「紅子さんっ、凄いズーンときましたよ!」
「何を…ぐぅぅ…コノッ!」
「おっと…フッフッフ捻糸棍…なんちゃって」
夕から距離をとった幼女の死角へと移動していた紅子が、アイテムボックスから取り出した金属製の黒い棍で、どこぞの修行僧宜しく幼女の脇腹へと回転する突きを放つ、完全に隙をつかれ少々の装甲なら穴を穿つ程の突きをまともに受けた幼女だったが、突きに押され距離は開いたが突き自体には耐えてみせ其の上でエネルギー波の様なもので紅子に反撃までしてみせる
「ソレがその技の名前ですか?ナルホドその棒を高速で回転さ「ストォォプ!ちょょっと待とうか」」
脇腹を押さえ、コチラの攻撃を安々と躱してみせた紅子を睨みながら、紅子の放った攻撃について話だした幼女を慌て止める紅子は
「説明とか辞めてくれるかな?恥ずかしから……そんな事より…………もしかして…誰も知らない…とか?……しまった、古すぎたんだぁ」
周りを見渡し、誰も自身が放った技の事を知らない事に頭を抱えてショックを受ける
「この女は何を言っているのですか……しかし…ふざけてはいますが、この二人が私の予想以上に手強いのは事実……」
チラリと幼女は、奴隷二人に心配されている男を見てから、起動ユニットを煌めかせて今に飛び出しそうなシグルドへと声を掛ける
「シグルド、あの敵はアナタに任せますが…敵はコチラの予想を超えて手強いです……なので魂魄ドライブの使用を私が許可します、全力でやりなさい……私は…この二人の相手をしますので…」
[……フレイアノ名デ魂魄ドライブノ解放ヲ確認…他シークエンスヲ実行中ノ為…起動マデオヨソ300秒……分かりました…お任せ下さいフレイア]
そう言うシグルドは、自分に指示を出した幼女がその姿を少女へと成長させ、白かった髪をプラチナブロンドへ変えるのを確認すると、機動ユニットの出力を上げ背中に薄っすら現れた翼と共に飛び立つ
「あっ主、フレイアちゃんが大きくなったよっ!」
「へぇ…アンタそんな事も出来たのかい」
「魂魄ドライブ?……あっ、おいっ、シグルドっ…フレイア!なに勝手な…」
右手を掲げ、その手に白く輝く短槍を召喚する、少女へと成長したフレイアは紅子と夕…オマケで詩乃を視界に入れたまま騒ぐ三人へ告げる
「いいですカ……私がこの二人と戦っている間、貴方たち二人はマスターと共に其処で項垂れている女の相手をお願いします、おそらく……そう…手強い筈…なので貴方たちも気を抜かないように…」
項垂れる背中に乗る白猫に、ポンポンと慰められている詩乃の姿に「警戒し過ぎでしょうか?」と気が緩みそうになるのを引き留めるフレイアは最後にパートナーたる男に声を掛ける
「そういう事なので、二人の事は任せますよ」
「ちっ…勝手に決めやがって……分かったよ…その代わり、終わったらきっちり奉仕してもらうからな…」
「えぇ、どちらの状態でもお好きな方で…それはしっかりと……さあ、始めますよっ、ゼウス!」
「フンッ、任せろフレイア……オイッ、やるぞっお前ら!」
「おー!」
「あいよっ!」




