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[クリア…]
紅子の被るヘルメットに内蔵されたヘッドセットから詩乃の声が響く
「あの〜、詩乃チャン?側に居る間はヘッドセット通さなくても普通に聞こえるし、私の隠蔽で音も漏れないから口の部分くらいはあけといたら?」
暗闇の中、漆黒の装備と紅子の魔法で隠蔽までしているにも関わらず、どこぞの特殊部隊宜しくダンジョンを進んでいく詩乃に紅子が何度目かの苦言を呈する
[オーガ発見…数3…距離…50、殲滅する]
紅子の苦言を無視して進む詩乃が立ち止まると、軽く手を挙げ魔物の発見を紅子らに告げる。そのまま膝立ちになった詩乃が小銃を構えるとトリガーを引く
発射音やマズルフラッシュも無く発射された闇属性の攻撃に因って頭を撃ち抜かれオーガが倒れる間に、詩乃は立て続けに二回トリガーを引く
[クリア……やっぱ、なんか音か、せめて反動ぐらい欲しい…]
魔物を殲滅した後、自らの持つ小銃に物足りなさを感じたのか、銃を見ながらそうぼやく詩乃を見て「駄目だこりゃ」と、紅子は苦笑いを浮かべている
「フフッ……で、シロさんどうですか?」
❲ミッ❳
その二人の様子を微笑ましく見ていた夕は、自分の肩の上でダンジョンの解析をしていたシロに解析の進捗を尋ねる
シロが夕の問い掛けに答える様に前脚を挙げると、ヘルメット内のモニターにダンジョン全体と思われるマップ、更にはそのマップ上に味方と魔物と思わしき2種類の光点とコアらしきオブジェクトが解析結果として表示される
[ファッ!なんコレっ……ぐぬぬ…進攻の愉しみが…あっ…魔物の情報まで見れるし……ぬわっ、しかもこれっ…コアの情報…ですやん……シロちゃんチートやん……ま、まぁあ、このリスト通りならウチのほうが強いの創れるしぃ!]
それは勿論夕のモニターだけでは無く、詩乃や紅子のモニターにも表示される訳で…それを確認したのか「ちくしょー」と言いながらヘルメットを脱ぎ捨てる詩乃を(こういう情報を元に動くのも、其れはそれで、特殊部隊っぽいと思うんだけどなぁ…やっぱり違う装備渡した方が良かったかな?)と紅子は生暖かく見守っていた
「そんなに楽しかったんだ………まっ、いっか…そう言えばシロちゃん、肝心の吸収のシステムの方はどうなの?」
座り込んでいじけてしまった詩乃を放置した紅子は、シロに振り返り問い掛ける
❲ミ…❳ [神の掛けたプロテクトが固くて手間取ってるミ……]
すると鳴き声と共にモニターにシロの答えが文章に処って表示される
「神ですか…出てきますかね?」
神と表示された事で、夕はこのダンジョンの攻略中に神が直接顕現することを危惧する
「どうだろうね?あの人達は出て来ないと見てるみたいだけど」
「そうなんですね、私もシキさんが言うならそうなんだと思いますけど、何でそう言えるんですかね?」
「なんかね、神様って偉く成れば成る程、なんかこーシステム?みたいな感じで合理的?って感じに成って行くらしいんだよ。話によると。
だから私達が相手の神にとってリスクを犯してでも対応が必要と思わせない…例えば星を破壊するとか?…みたいな余っ程のことをしない限り神が自ら出てくる事は無いらしいよ、あっでも、コレはある程度上位の神の話らしいけど
でも実際、他の神が私達の時みたいに地球でいろいろやっても、あの人達いわく地球?の神の方が他の神より上位なのに、地球の神は放置してるしね……あの程度なら問題の無いレベルの事なんだろうね…」
「でもアカ姉ぇ、あのキザ眼が…うっ…シキさんにボコボコにされてた奴みたいな神は出て来るかもしれんのじゃろ?………クぅ…コレはヤツを使う時なのでは……」
いじけから復活した詩乃が二人の話に割り込むが、途中シキを捩ろうとして夕から威圧を受け言い直す
「ハハ……、ん〜どうだろ?地球に干渉してダンジョンを繋げてる時点でそこそこに上位の神らしいから、本人は出て来ないと思うし…その神が召喚したダンジョンマスターが居るダンジョンに更にその上の存在がいるのかなぁ?……」
詩乃に尋ねられた紅子は、そう自分の考えを話ながら頭の中で、
(まぁ正直、あのレベルぐらいの奴が出てきても、神で無いなら私と夕ちゃんなら何とでもなるし…多分詩乃ちゃんでも行ける筈…真面目にやれば…
ただ…神だった場合、面倒くさいんだよね~、消滅させるなら堕天させなきゃだし…せっかく堕天させても能力は強化されるみたいだし…神力使わないと有効打でないし…装備フルで使えば………うん、その場合はもう、手っ取り早く弱らせたら封印しちゃおう!)
等と、いろいろと考えを巡らせていた
「ちょっと詩乃ちゃん、そんな物出してどうするの?」
「ムッ!?」
思考が脳内へと移っていた紅子が、夕の言葉で戻ってくると詩乃の前に人型の物体が在るのが目にはいる
「ちょっと待って……よし、あった…コイツで…」
少し悩んでアイテムボックスから拳大の球体を取り出した詩乃は、其れを人型の一つに突っ込むと魔力を注ぎ始める
「いいねいいね、ん〜…でも顔が…、実物はこんなもんなんじゃね……微妙…どうせなら体も、もうちょいデカくして…顔も……お〜ちょっと鱗っぽい所もあるけど無双っぽい感じになったんじゃね?……装備の方も……それっぽくていいね……後は……」
「あ〜…うん…夜な夜なやたらアチコチを彷徨いていると思ってたら……この為だったんだ…」
詩乃が魔力を注いだ人型が、球体に融合した霊魂を基にした姿に形を変えて行く
たが、実物を見た詩乃が違和感を持った事により、彼女自身の持つ某ゲームのイメージに従って更にその姿を変貌させていく
「えっと…何かのキャラクターですか?」
全容の明らかになった其れを見た夕がそう紅子に尋ねる
「そっか…夕ちゃんはあんまりゲームやらないんだったね……三国志は分かる?アレは、その中に出て来た呂布って人だね、さすがに呂布は知ってるよね?」
「リョフ…ですか?すいません、三国志だと劉備とか曹操ぐらいしか…」
「そうなんだ……まぁ興味無いと知らないよね…」
等と、詩乃がごそごそと作業している間、二人が呂布について話していると
(ヌ…此処ハ何処ダ……)
「フッフッフ……ドラゴニュート奉先クン 死霊バージョン、かんせー!」
触覚の様な羽根飾り迄合わせると3m近くになる体躯で辺りをギョロリと見渡す男を見上げながら、詩乃は満足気に言い放つとアイテムBOXから武器を取り出し奉先クンに渡す
「よいしょっと……ほいっ方天画戟っぽい奴、これ持って」
(グッ…身体ガ…カッテニ……小娘ェ貴様ァ!)
自分を見上げる詩乃の言葉に逆らえない身体が勝手に武器を受け取る様に、苛立ちをぶつける奉先クンだったが、続く「うっさい、いいから眼ぇ見て」との言葉に睨み付ける様に詩乃の眼を見る
(ヌゥ…グアッ!……ナニヲ……)
自分の知らぬ情報が頭に刻み込まれる感覚に、武器を持っていない方の手で頭を押さえ蹲る奉先クンは、暫くその感覚に耐えていたが、詩乃に因って植え付けられた情報を理解させられると頭を上げ
(ナルホド!……ヨカロウ…主ヨ…此処ニアノ…憎キ…劉備ト曹操ガ居ルト言ウノナラ……我ガ…コノ戟デ血祭ニシテクレヨウ!)
そう言って立ち上がる奉先クンは、(フンッ!)と武器を振るうと植え付けられた知識に従いダンジョンの奥へと足を踏み出す
(フハハハ、マッテイルガイイ…我ガ行クノヲナァ!)
数歩進んで詩乃から距離を取った奉先クンは、前を睨んで叫ぶと鎧の背部を展開させ其処から、コウモリの様な翼を出すと魔力に依って推進力を発生させると「行ってらぁ」という詩乃の見送りを背後に叫びながら飛んで行く
(オオオオオオ!我ハ呂布奉先ナリィィィィィ!)




