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❲それで、此処に居るって事はお前たち全員、うちで働くって事でいいニャ?あっ、刀夜氏はお疲れニャ!❳
僕、浅野拓真を含む三人が並ぶ前にある机の上に、前回の猫人フォームとは違い普通の猫の姿であらわれた黒猫がそんな事を言う。
すると、何処かへ送るのだろうか、黒猫の背後に立っていた刀夜と呼ばれた老人の姿が薄れ出した
「うむ……精進する様にのぉ…」
「はひっ!」
最後に老人は、僕の隣にいる女の子とそんなやり取りをすると消えて行った
「……なに?」
「私は前もって言っていた通りに、このまま此方でお世話になろうと思います」
老人が居なくなった事で随分と気の抜けた感じになった彼女を、僕が横目で見ている事に気づいた彼女が僕を睨みつけて来る。けど、僕が何か適当な言い訳を答える前にもう一人の女性が黒猫に向けて話し出した事で口を噤んだ
❲了解ニャ、お前達もそれでいいニャ?❳
前此処で見た時は半透明の霊体だったお姉さんが、今はちょっと髪が紫がかった銀髪だったり、瞳が赤みがかってたりもするけれど、前みたいに霊体ではなく生身の姿でそこに居る。
彼女をチラリと見て(生身の彼女が其処に居るという事は……)と、僕はあの時彼女が条件の変更を頼んだ内容を思い出し(いったい何回殺したんだろう?)等と考えていると、僕を睨んでいた娘も黒猫に答えを返しだした
「アタシもそれで良い…です。その代わり…」
❲分かってるニャ、あの二人の事なら、いずれ時期を見て夜の営みも含めて音声付きで全部晒してやるニャよ❳
「そう……取り敢えずそれで我慢するわ…します」
❲気に入らないニャ?まぁ…これからの事が一通り終わったニャら好きに報復するといいニャ❳
それを聞いた彼女の右目が真紅に染まり笑みを作ると、目と同じ右の上顎に短めの牙が見え隠れする
❲最後、お前はどうするニャ?❳
彼女の変化に少なからず驚いていると黒猫が僕に問いかけてきた
「僕は、まぁ異世界とかまだ色々と興味深い事も有るし其れで良いんだけど……出来ればその…家から通い…とかじゃあ無理ですか?一応…高校ぐらい卒業しとか無いと親にも申し訳ないんで、ついでに、その…仕事に余裕が有れば大学なんかも……」
そう伺いながらも、この半年の事や異世界やらを考えると全てを隠して家族を説得するのは難しいなあ、そう僕が考えていると黒猫が思いもよらない事を言い始めた
❲別にいいニャよ「え?」だから、いいニャと言ってるニャッ、ニャ?家族にどう説明するか考えてるニャら心配ニャいニャよ、ニャんでかと言うとお前の家族には……この動画と共に既に説明済みニャ!、ついでに言えば了承も貰っているニャよ❳
❲フッフッフ…驚いたかニャ❳そう言って後ろ脚で立ち上がりドヤっている黒猫の上には、[このフィールドって、あいつ等とモンスターしか居ないのかな……はぁ、せっかくの異世界なのに…出来ればこう…ケモミミのお姉さんとか…………]僕には物凄く見覚えのある洞窟の中で、ブツブツ独り言を呟きながら肉を焼く自分が映っていた
「やっぱり撮ってたんだ…(よかった、変な事しないで…)というかっ、見せたのコレっ、家族に?!最悪だ……それに説得済みって…うちの家族……」
❲ニャ、見せたのはこの動画とは違うニャよ、お前の家族に説明したのは最初の日の夜ニャから…………これニャ![ハハッ、凄い凄いっ、本当に使えた!じゃ、じゃあ……土っ…いやっ、ロックバレット!……フゥゥゥ!……]いやぁ事前の調べで問題ニャいと分かっていたけどニャア、これのお陰で思いのほか簡単に済んでと言うより、喰い付きが良過ぎて大変だったニャア❳
その時の家族の様子が手に取る様に想像できるけど、
「最初の日って……それより早くソレ消してよっ、お願いします!」
今も動画の中で[よっし!コレもいけるぅ、なら次は…うっ…なんだこれ…もしかして魔力切れってやつかな?……うん?……思ったより平気だね、じゃあ魔力が回復するまでは……そうだ!せっかくだからグラスランナーのスキルを………]等と、はしゃいでいる自分に居た堪れなくなった僕は黒猫に動画を消して貰うよう土下座する
❲しょうが無いニャ……ついでに言うニャら、家族にはテストも兼ねて一、二週間に一度は編集版の動画をスマートフォンニャんかのデバイスを通して脳で直接見れる様にしてたニャア、ニャんで向こうでの事をお前の家族は大体把握してるニャよ❳
顔を上げると動画は直ぐに消してくれたけど、その後の言葉に暫く固まってしまった
「……はは、説明する手間が省けたと思うことにします。それよりっ、さっきの動画がデバイスを通して脳で、って方が気になるんで僕的には、どうやるんです?仕組みとか教えて貰ったり出来ますっが!?」
未知の技術に興味津々の僕は、座った儘で黒猫に詰め寄ったけど、黒猫の座す机の前で見え無い障壁にぶつかった
❲ふんニャ、そういうのは役に立ってから追々ニャ、後、一応聞いとくニャけどミワ氏とジョウ氏は帰らなくてもいいのかニャ?❳
「三輪星羅は死にました、なので帰る必要はありません、名前も適当にレイとでも呼んで下さい」
「アタシも家族には何の思い入れも無いし、死んだ事にしといた方が都合が良さそうだからこのままでいいわ、あと、アタシも今迄の名前は棄てて……そうね、ヨミって名前にするから宜しく…お願いします」
どうやら何方も複雑な家庭の様だと思い、口を挟まずに黙っていると突然、先程まで刀夜と呼ばれた老人が居た場所の奥、何も無い空間にドアが現れるとドアがスライドして奥から、インテリっぽい眼鏡を掛けたイケメンなのに胡散臭そうな男を筆頭に男が三人と女が一人の計四人が現れた
「左門からデータが送られて……たまだやってるのですかクロ」
❲シキ氏……もう終わる処だったニャ……ニャっ、丁度良いいニャ、アサノと…レイだったかニャ?お前達も一緒に見ればいいニャ……「アインですよクロさん」お…おう、頼むニャ❳
「分かりました。宜しいですか社長?」
「あぁ、そういう事ですか、ええ、良いですよ」
「なんか嫌な予感しかしないんで、僕は帰っていいですか?後から結社の方に送ってくれたらいいんで、って!やっぱり……」
「「………うっ」」
「フフフ……」
新しく現れた人達と黒猫とのやり取りの中で、アインと名乗った銀髪のエルフが無駄に髪をかきあげると、先ほどの僕の動画時よりも大きな画面が中空に現れる、画面には何処かの洋館っぽい屋敷か何かに有りそうな広い部屋が映り、対面のソファに物凄くアレな胸をした子供のエルフ?がわざとらしい笑みを浮かべて座って居て、その後方に舞台の様なものが有るのが見えた
奥の舞台の上には、よく見ると僕とおそらく僕と同じ様にレイさんに因って滅ぼされたであろう筈の一人を加えた三人が、スライ厶の様な物に覆われ頭以外が団子の様にぐちゃぐちゃに纏められていて各々が嘆きの声を上げていた…




