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「だからっ、もっとポイントとチートな職業を寄越せよっ!」
(ん……なんだ?)
興奮した様子で何やら喚いている男の声で覚醒した拓真は、その様子を伺おうとするが
(えぇ…思考と聴覚以外全滅なんですけど……)
自身が、身体を動かす事も眼を開ける事も出来ず、思考と聴覚以外の五感さえ感じられない状態であることに気づく
❲だから、其れは出来ないと言ってるニャ❳ ❲ミー❳
「なんでだよっ、お前が俺達を無理矢理………」
取り敢えず他に出来る事も無いので、聴くことに集中することにした拓真は、聴こえてくる会話の内容から
(正面からって事はスエットか…なんか凄く回りくどい言い方だけど要するに、無理矢理拉致されてソッチの都合で行きたくもない異世界に行かせるんだからいろいろ寄こせって事だよね?)
「……わかるっ?分かったなら、俺が、今から言うスキル……………」
(うわぁ…ここぞとばかりに要求してるよ……空間魔法とかさっき全魔法とか言ってたのに……あっ、鑑定眼も鑑定と被ってるよ……でも、机を叩く様な音も聴こえるからある程度動けるのかな……)
❲はぁ…分かったニャ❳
拓真がスエットの男の要求に呆れていると、ここ迄黙っていた黒猫が喋りだす
❲お前、もう帰っていいニャよ❳ ❲ミッ❳
「はっ?」
❲誰もお前じゃニャきゃ駄目だニャンて、言ってニャいニャ❳
「え?……」
❲やれやれニャ……此処には元々そういう願望を持った奴しか呼んでないニャ、それをウジウジ、ウジウジと❳ ❲ミッ❳
「いやっ、俺は…」
「だいたいニャ、そもそもニャ吾輩はお前達にニャンの害も与えてニャいし、異世界云々もお前達は普段から強く願っていた筈ニャア」
「だから、テンプレ…」
❲そんなニャの吾輩の知った事じゃニャいニャッ、吾輩を巻くし立てた勢いを現代社会で活かして生きて行くがいいニャ!❳ ❲ミッミィ!❳
「ちょっ、ふざっ!待っ…」
(静かになった……あの猫の言う通りだとすると、あのスエットの人は元いた場所に戻されたって事なのかな…それとも今の僕みたいな状態になってるのかな?)
音しか聴く事の出来ない拓真が、二人のやり取りからあれこれ考えていると、いままで黙っていた者達が喋り出す
「そんな…消えちゃった……」
「……自業自得でしよ」
拓真の耳に、若い女の声が聴こえてくる
(あの娘達も普通に喋れると言う事は……それに、絶対騒いでそうな左右の三人が静かな事を考えると、思った通り前列と後列とで分けられてるのか…)
そんな風に拓真が考察をしている間にも会話は続いていく
「あの、さっきの男の人は…」
❲アイツかニャ?普通に自室に戻っただけで死んだりはしてないニャよ、始めに言った様に此方から何かするつもりはないニャ。
それで、お前達はどうするニャ?
ニャにを言われても条件は変わらニャいニャよ、それが飲めニャい、どうしても戻りたいニャらお前達もアイツみたいに送ってやるニャ、解ったニャらさっさと決めるニャ!❳ ❲ミーミー❳
若そうな声から、おそらく制服の男がした質問に黒猫が答えた事で、あの男が死んでない事が解り安堵したのか、はぁ、と息を吐く音が拓真の耳に聴こえてくる。
「アタシは行くっ…………自分の身体で!」
(この声は…自業自得とか言って呆れていた方かな……ん、自分の身体?それ以外があるって事?)
暫しの沈黙の後、前列に二人いた女性の内の一人が意を決したように宣言する
「「xxxxさん(ちゃん)っ!」」
❲分かったニャ、それで、二人はどうするニャ?❳
「…………僕はアバターで行くよ、xxxxさんを見殺しにはできないから………xxさんは?……」
「……わっ私も…アバターで…やっぱりちょっと怖いから、でもっ、xxくんと一緒にxxxxちゃんを出来る限りサポートするから!」
「二人とも……ごめん、やっぱりアタシもアバターに……」
「xxxxさん!僕が君を守りたいんだ…それに、すっ好きな人の望みは叶えてあげたいしねっ」
「xxくん……でも…」
「だっ、大丈夫だよ気にしないで、どうせ私は怖くてアバターしか選べないし、其れならxxxxちゃんも守れて、俺ツエェ出来る方が私は嬉しいし……ねっ」
「xxさん……二人共…本当にいいの?」
「もちろんっ、その……代わりと言ったらアレだけど、帰ったら僕にいろいろ付き合ってくれたら嬉しい…かな」
「あっ、ずるい
あの……じゃあ私もお願いしていい?」
「ありがとう……もちろん、その時は全力で協力するわ」
(なんなのこの茶番は……それにしても何で名前の部分だけ聴き取れない様になってるんだろ?あっ、でも、馬場たちが僕の名前を言った時は普通に聞こえた様な……)
❲ん〜…もう、いいかニャ?❳ ❲ミィ〜❳
耳でもほじりながら聴いていたのか、黒猫がどうでも良さそうに三人に問いかけると、❲フッ❳と何かに息を吹きかける音が聴こえる
❲じゃあ、ムッツリ委員長とあざとオッパイちゃんは、そこの画面でアバターのタイプと特性を選ぶニャ、あと厨二病クールちゃんの方は所持ポイントを使って職業の取得、スキルの強化諸々を同じ様に画面でやってくニャ、説明した様にアバターに比べて生身の身体は弱いからニャ良く考ることニャ❳
(アバターに生身の身体……なんか今迄のやり取りだと生身の方がメリットありそうな感じだけど……駄目だね、まだ情報が足りないよ………)
「ムッ…ムッツリ……」「フフッ、気にしないで、それよりxxくんは……」❲後がつかえてるニャから、早くするニャ❳「やっぱり斥っ…………え…………うぅ…」
拓真が、限られた情報から出来る考察を深めている間にも事態は着々と進み、どうやら準備の終わったらしい二人が声を挙げる
「良し、出来た…」
「あっ、私も終わったよ」
❲ふ〜ん……わかったニャ、シロお願いニャ❳ ❲フミ〜…ミャッ!❳
「「うわっ」」
❲ソレに触れれば二人の準備は完了ニャ❳
「なんかマネキンみたいだね、わぁ、スベスベプニプニィ……」
「xxxちゃん!大丈……夫って…えぇっ!」
「ん、xxxくん?……えっ…なんで私が抱えられて…えっえっ…………きゃあ!」
❲ニャア?ニャ、装備を忘れてたニャ、シロちゃん❳ ❲ミッ❳
「あ……ちっ……xxくん、もう目開けても大丈夫だよ………」
「ホントに?……ハァ…あっ、いや、xxさんホントにごめん………」
「………なるほど…被ったスキルは……」
「「ほっ…」」
❲ほらっ、ムッツリもさっさとするニャ!❳
「あっ、はい!………えっ…と、どう…かな?」
「うんうん、なんか聖騎士とか勇者みたいで…その…格好いい…かも」
「あ、ありがとう、xxさんもその…聖女…みたいで…良く似合ってるよ」
「ホントに!?良かったぁ、ねぇ!xxxxちゃん、どうかな?」
「なに?……へぇ…それが………髪の色とかは変えられてもベースは本人なのね…二人とも良く似合ってるわ素敵よ」
❲ニャ、二人は準備出来たみたいニャね、クールちゃんはどうかニャ?❳
「えぇ…出来たわ…」
❲なら三人にはコレを渡しておくニャ…………ソレは所謂アイテムボックス的なやつニャ、一応ニャ使用者制限してるニャから他人には使え無い感じにニャってるニャ、クールちゃんの装備も入れてるから向こうに着いたら直ぐに装備する事をおすすめするニャ、其れから、ソレに入れて持って帰った物も、物によっては報酬にブラス査定されるニャから忘れないようにニャ!後、仕様の違いで転送時間に多少の誤差がでるからそのつもりでいるニャ、シロちゃんどうかニャ……❲ミッ❳フゥ…やれやれニャ…ではっ、またニャ〜とっつぁぁぁん❳
「「「えっ!」」」




