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詩乃を日本に連れ帰ってから、かれこれ4年ぐらい経ったある日、4年間の間に拡張していろいろと弄ったメインルームと書かれた一室で、俺は緊張感を持って作業に挑もうとしていた
「cpよし、サポートっ❲ニ〜❳よし、私っ❲知力値…問題無し❳よしっ、それではバージョンアップを開始する」
教卓から、日本の部屋に残っていた、何かの溶液の中で佇む俺の素敵中年ボディへと姿を変えたメインシステムが
[メインシステム version up 開始します]
流暢な言葉で口ずさむと、俺の意識は次第に落ちて行った……
「んっ…………成功か?」
覚醒した俺は、眼の前で、白猫が頭にへばり付くというなんとも締まらない格好でメインシステムにアクセスしている俺を確認すると、今の自分の意識が義体へ移っているのを確かめる
「違和感は……無しか」
懐かしのカイx義体では無く、新しく俺を模した義体を今回のバージョンアップに伴いシキが用意していたので、今回は視界の変化も無いので本当に義体なのと思うほど違和感が無い
❲ナァ〜(成功しましたかニャ?)❳
「うおっ、クロか…あぁ、問題無さそうじゃな、いまんところは………」
❲ニャニャ(なっ、なんですかニャ?)❳
「…お前、普通に喋れんだろ?なんで念話なんだよ」
❲にゃ!(それはシロの先輩として猫らしい処を見せる為ニャ!)❳
「猫らしいねぇ…フッ、じゃあ試してみるか?」
❲ナアッ!(どんと来いニャ!)❳
「いくぞ……ロッッデェェ厶ッ!」
❲ハッ、お呼びですか?…………コレは…何ニャ……❳
「プッ……随分と格好えぇな黒豹…猫じゃ無いけど…ププッ」
❲くッ!?……戻れニャい……だと……何をしたのニャ!❳
「はぁ〜腹いてぇ、あぁコレ?クロを創る時にシキがネタで組み込んだのを思い出したんだよ、確か…バビルモードだったか?キーワードで強制的に発動すんだとよ、今みたいに
ちなみに、怪鳥と海神が創られたのかは知らんけど」
「勿論、作りましたよ、ただ邪魔なのでストレージ内の奥の方に仕舞ってますけどね
そんなことより……その様子だと、どうやら成功したみたいですね……其れにアチラも順調そうです」
いつの間にかやって来ていたシキが、俺とクロのやり取りに割って入ると状況を確認する
「あぁ…お陰さんで素材がいいのか、怖いぐらい馴染んでるよ…」
「まだ、根に持っているんですか?…はぁ〜、男らしく無いですね」
「そんなの、四肢切断されてダルマにされてる自分の身体見たら誰でも怒るだろが…」
「その件は貴方も納得したはずですよ……まぁ…もう少し説得が遅かったら危うく此処が消滅する処でしたが……所で、バージョンアップに掛かる時間はどのくらいですか?」
俺との会話を中断したシキが、溶液に佇むオリジンに向い問い掛ける
[ヒィッ、しゅっ、しゅ終了、よよ予定ハ…………………………バージョンアップ ニ オケル ショヨウジカン ハ チキュウジカン デ オヨソ 300 ニチ ヲ ヨテイシテイマス]
「…………おい!メインシステム…めっちゃビビってるじゃねぇか!」
「おかしいですね……システムの移植前のオリジンに自我など無い筈なのですけど……」
❲ニー(いちいち眼鏡触るよりも、吾輩に組み込んだものを消去してほしいニャ……)❳
眼鏡を押さえて考え込むシキに、猫の姿に戻ったクロが皮肉を込めて言う
「なっ……えぇ、いいですよ、まぁ…組み込んでたものが1つとは限りませんけどね……フフッ」
❲ニャッ!ニャニャ!(ニャッ!冗談は眼鏡だけにするニャ!)❳
クロに眼鏡の事を皮肉られたシキが、さらなる仕掛けを匂わせる事で意趣返しを行う
「はぁ……所で何か報告があるんじゃねぇの、まさか予定期間を聞きに来ただけって訳じゃねんだろ?」
「えっ、あぁ…主目的はそれですけど一応の報告もありますよ、太陽系内で採掘用の小惑星を複数の確保した事は……確かもういいましたか……見つけましたよ…しかも2星も、それで左門に時間のカウントを確認してもらおうと「分かった!」…」
シキの報告を聞いた俺は、只の学校の机の様だった物から、近未来のPCっぽく変わった個人用の端末を急いで起動する
「えぇと……戻って…ないな……よし!」
俺以外の机を一つに纏めた端末から、空間に投影されたディスプレイをいじり目的の人物の画面に変えると、時間の経過だけを確認してディスプレイをソッと消す、俺はけっして吸精とか絶倫なんてスキルは見ていない
「と言う事は、少なくともアレをやった神の領域で無いは確定ですね。
良かったですね、最悪、資源回収艦辺りからやり直しでしたから」
そう、今の俺たちが繋げる星は全て俺たちを拉致った神の領域にしか無く、繋げる星の数を増やすべく俺たちは、とある星からいろいろと苦労して宇宙戦艦やら何やらを掻っ攫ってくると、それをシキに解析させて、それ等の解析結果を今迄の技術に融合して造った探査船を数隻コッソリ地球から送り出して4年掛けてようやく見つけ出した今回の星が、その神の領域だった場合、この部屋以外からのアクセスという事で、地球で俺たちが認識している時間軸に矯正される筈だが、其れが無いという事でひとまず安堵する
「そうか…4年ていうとその辺か……はっ、と言う事は詩乃とかも…」
「まぁ……元通り…でしょうね、私達がそう認識していますから。
もし、そうなっていたら地球での事は、私達が関わったり作ったものはそのままで、認識外の事は無かった事になる筈です。
能力が高すぎるが故に、逆に私達には世界線とか平行世界等という曖昧なものがないので、あれこれ考え無くて済むのは有り難いですね。
確証はありませんが、おそらくアレで年齢を下げても記憶を失わなくなった辺りから、そうなのでしょう」
そう言ってシキがメインシステムの方を向く
確かに今の俺は、シキのサポート無しでもアレを使って年齢を下げても、前のように記憶も経験も失うことが無くなっている(ちなみに今は、年齢は30でキープしてる)
「まぁ…取り敢えず目的が達せられて良かったという事で、クロが此処に居るって事はシモンの方は終わったって事だろ?」
❲ニニャ、ニ〜ニ〜(そうニャ、cpが有れば何時でも行けるニャ、しかしっ!クロ達は休暇を要求するニャ!)❳
“ビシッ”と前脚を挙げて休暇を要求するクロを見ながら思う、約3年に渡りシモンと共に、とある作業をしていたのは認めるが、作業効率に余裕を持たせたコイツ等が脳内作業しながらもニートの様な生活をしていた事を俺は知っている
「では、バカンスでも行きますか?まぁ…行き先は未開の星ですから、貴方達の好きなアニメやゲーム的なものやお菓子なんかは在るか分かりませんけど…ねぇ」
バカンスと聞いて、ほくそ笑んだクロだったが行き先の話しになると顔を引き攣らせる
❲ニャッ、ニャ〜ニャ(ニャッ、嫌だニャ〜旦那〜ちょっとした冗談じゃニャいですか〜)❳
2足歩行になり揉み手でシキにゴマをすると、“ピシッ”と敬礼して❲フニャッ!(これからも粉骨砕身働かせて頂きますニャ!)❳と言うクロを見ながら
「何にせよバージョンアップの終わる迄には、諸々終わらせとかんとな…」
そう呟いて、俺はこれからの事に思いを馳せるのだった




