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『黒炎槍』
「くっ…」
サウドが放った攻撃がシキを貫かんと迫るが、範囲を狭めて強化した障壁で受けて拮抗してみせる
『はぁぁぁ、我が教団と教国の本部とも言える大聖堂はな、俺がはるか昔に見つけたある物の上に建てたもので…なっ』
「ハッ……ホホウ…それで?」
サウドが更に追加した黒い槍を、シキが追加した障壁で防ぐ
『やるな……その時見つけた物が、この取り込んだサークレットと其れを身に着けていた者……すなわちあのお方…だっ!』
「ぬ…ぐぅ……それは…生きていたのですか?」
魔法を解除したサウドが、全身に黒いオーラを纏いシキに殴り掛かり、同じ様に黒いオーラを纏わせた杖でシキは辛うじて拳を防ぐ
『どうした、どうしたぁ!あぁ、あの方は生きてはいなかったな…だが、俺がサークレットを手に取った時、断片的だがあの方の記憶…意思が流れてきたのだっ!』
「つあッ………ハァハァ…そ…それで…どうしたのですか」
暫くの拮抗の後、サウドが拳を振り抜きシキを吹き飛ばす
『なかなかしぶとい奴だ、何だったか…あぁそうだ、それから俺は紆余曲折あったがあの方の血肉を己の身体に取り込む事に成功し、このサークレットを受け継ぐ事で神に至ったのだっ!……はぁぁぁ』
「取り込む…ですか……なるほど……では、最後にですがその方の身体……その大聖堂でしたか……そこに今も?」
『はぁぁぁ……んん~そんな事を知って…はぁ〜ん…なるほどぉ、お前もあの方の血肉を取り込むつもりか?だがっ!残念だったなぁ、既にあの方の身体は大聖堂には無いぞ、俺が後継者たると思われたのだろう、祈る俺を光輝き祝福すると何処かへ消えてしまわれたからな、コレを残してっ!』
青黒く濃密なオーラを纏ったサウドが、ポーチから小さな黒い玉を見せつける様に取り出す
「……ちなみに、その身体が消えたのは5年ぐらい前ですよね」
『っ!貴様…何を知って……フンッ、もうそんな事はどうでも良い
其れよりも、今なら解るぞ……ハハッ、俺はあの方と同じ…いやっ!あの方を超るのだ!』
そう言ったサウドが黒い玉を飲み込む
『グッ…ガアアアアア!』
一瞬、胸を押さえ苦しそうにした後、両手を広げて咆哮を上げると、身体の一部だった模様が全身に拡がり皮膚を覆い尽くすと額からねじ曲がった角が生えてくる
『ハァァハッハァ、素晴らしい…フム…信仰を得る力は無くなったか、しかし…この体から感じるこの力に比べればそんなものは些事にもならん、この力があればアレらが支配する大陸さえ奪えるだろう……だが、先ずは……』
「これは確定ですね…いいネタが……ん!?おおっ、これまたデビ×一八っぽい見た目でっ」
サウドが、何やら良からぬ思考を巡らせていたシキに襲い掛かると二人は格闘戦を始める
『フハハハ、そらっそらっそらっ!』
サウドの拳が大地を割り、蹴りに因って大気が裂ける
『カァッ』
吐き出された衝撃波が大地を抉る、しかしその全てをシキは躱していた
『羽虫がっ!灼き尽くせっ、“業火”』
背後に廻り込んだシキに対し、サウドが黒い翼を拡げると、自身を中心に半径20メートルに赤黒い火柱が立つ
「なるほど…魔力、気力、霊力を平均すると大体150前後ぐらいですか…バランス的には霊力が高く魔力が低いと……」
自身が放った為、攻撃の影響を受けないサウドの耳に、今も燃え盛る火柱の中からシキの声が聴こえてくる
「そうすると、堕ちる前が弱過ぎたのも納得ですが…ならどうやって神に?……サークレットの効果や血肉を取り込んだとしてもエクストラ系は兎も角、知能は足りない筈……神格……あぁ、信仰ですか…確か説明にも複数の条件とありましたね、という事は私達が物やポイントでcpを増やす様に、信仰される事でcp的な物を増やし…今迄の様子から其れを所謂MPの様に使っていた訳ですか……」
サウドの立つ場所以外が熱でマグマのように成っているにも関わらず、其れを意に介すること無く何事かを呟くシキの声に、やっと相手が自分よりも強いのではないかとサウドは思い出す
『あり得ん…あれは何だ…俺は何と戦っているんだ……』
そうこうする内に火柱も納まり、キラキラと氷の結晶が取り巻くシキの姿がサウドの前に露わになる
『そんな事があってたまるかぁぁぁぁ!』
激昂したサウドがさらなる攻撃の為、両手をシキに向けるが
「やりなさい」
いつの間にかサウドの死角に移動していた、リッチーズの1体から[シャア]と分銅が投げられサウドを絡め取る
「いや〜、貴方のお陰でなかなか有意義な考察が出来ました」
グツグツと煮える様に蠢くマグマの上で、平然としているシキが身動きの取れなくなったサウドを見て言う
『ウガァァァ、こんな鎖ごときでぇ!』
なんとか抜け出そうとするサウドだが、そもそもがコレを使う相手の想定が左門やシモンという段階で、サウドがどうこう出来るものでは無かった
「そんな貴方に、私からささやかなお礼を…」
淡々と語るシキは、ジタバタと鎖をどうにかしようと藻掻くサウドを無視して、自身の背後に巨大な収納魔法を展開する
「知ってますか?貴方が血肉を取り込んだあの方……あれが何故その大聖堂でしたか…其処で活動休止していたか」
“ゴゴゴ……”収納魔法から艦首と思わしき物が突き出てくる
『何を「知ってますか?」……伝承では、勇者に封印された魔王が邪神として復活し、2つの大陸を破壊し尽くした後、天から降り注いだ光に因って倒された…とある
俺が持つ記憶でも、勇者云々はしらんが…最後の記憶は空からの光を浴びたとこで終わっている』
言葉と共にシキが発した威圧を受けたサウドは、観念したかの様に素直に語りだす
“ガコン”艦首の先端部分のロックがはずれ、ハッチがスライドして下がると主砲の砲身がせり出しあらわになる
「そう…私から貴方へのお礼……其れはあの方とやらが受けた光っ、其れです!」
シキは、頭上にある主砲が発射準備しているのを見上げながら嬉しそうにサウドにつげる
『なっ…そうか…貴方もあいつ等と同じ様に上級の神なのか……糞っ、まんまと嵌められた訳だ…』
前方の物体から凄まじいエネルギーを感じ取ったサウドは、シキの事を他の大陸にいる自分よりも上位の神と勘違いして悔しがる
「言っときますが私は神では無いですよ、まぁ…同僚?親族?には一人いますが……おっと、時間ですね
それではご協力有難う御座いました…では」
『神じゃ無いだと!そっ』
シキの言い終わると同時に、周囲への被害を考慮して絞りに絞った砲撃が主砲から発射される、説明にあった通り聖属性を付与された砲撃が何かしら言いかけるサウドをリッチと共に一瞬の内に消滅させ辺りを削り取るとそのまま空の彼方へと消える
「ちょっと過剰過ぎましたかね……ですが、せっかく持って来たのですから、たとえ過剰であったとしても使わないという手はないですからね」
砲撃の残滓がのこる主砲を格納し始めている艦首を見ながら、満足気に独り言ちるシキであった……




