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[ホアチャ]
三節棍を持つリッチが武器を振るう度、音声ソフトの様に気の抜けた音声を発する
”ボンッ“「ぎゃあああ」”ボンッ“「へぶっ」
リッチの懐に入った聖騎士が、強引に振るわれた三節棍の二節目を腕で受けると仕込まれた魔法が発動して小さな爆発が起きて腕が破壊され、二節目を起点に三節目が後頭部に直撃した後爆発する
[ホ〜アチャ]
”ドンッ“
今度は後ろに引いた三節棍を思い切り上から振り降ろし地面に叩き付けると、前方向に扇状に大きな爆発が起きる
そうやって倒れ伏して動けない聖騎士に対して、容赦無くとどめを刺していくリッチ
乱戦の始まりからわずか2・30分の間のリッチーズとの戦闘で数百人いた聖騎士の中に五体満足な者は居らず、既に立っている者も聖騎士長ただ一人になっていた
[イヤヤヤ、イヤ、イ、イ、イヤヤ、イヤヤヤヤ]
薙刀を振るう度に聞こえる間の抜けた掛け声と共に薙刀から斬撃が飛び聖騎士長を襲う
「ぐあっ…クソッ…化け物め……」
最後に放った広範囲の横薙ぎが斬撃では無く衝撃波だった為、躱しきれずにくらってしまう
既で気づいた聖騎士長は、なんとか盾を割り込ませる事で直撃を回避するが、盾越しとはいえまともに受けた事で、全身にそれなりのダメージを受けてしまう
「……ふぅ……このままでは祝福を削りきられて負ける…か……」
祝福の効果で、各々に注がれた神力が切れる迄、身体強化と共に強力な自動回復も付与されていた聖騎士長は、ダメージを受ける度消費される神力から、このままではそう遠くない未来に皆と同じ運命を辿ると理解する
「ならば!」
聖騎士長は盾を捨て両手で長剣を掲げると、サウドの為、少しでも敵を減らそうと、残った祝福と己の生命力の全てを使い長剣を基に長大な光の剣を精製し始める
「オオオオオ……」
そんな中、聖騎士長に相対するリッチが、ガシャガシャと4つの腕から武器を放棄すると、背中にマウントされていた2つ折のビームランチャーをガチャンと外套から取り出し腰だめに聖騎士長に向けて構える
ピピピッと電子音が鳴り、フリーな腕2本が変形して自身を支える様に背後の地面に刺さるとランチャーの先に光が集まりだす
「オオオ…」
目や耳や鼻やらから血を流しながらも騎士団長が精製する光の剣は、既に10m程度の大きさに至っており、後は振るうだけという状態だった
「我が…渾身一撃っ……くらっ[てー]…え?」
準備の終えた聖騎士長が光の剣を振るおうする前に、気の抜けた音声と同時にランチャー発射されたビームに因って“ジュッ”と一瞬で蒸発させられる
『つ!くっ……おおおっ!』
「ほう…耐えましたか…」
聖騎士長を蒸発させたビームは、そのままシキによってその射線上に誘導されていたサウドを襲い、その身体に少なくないダメージを与え霧散する
『ふざけるなよ……なんでっ!お前の攻撃が効いて、俺のが効かないっ……おかしいだろっ!』
サウドのサークレットがひときわ輝くと、ビームに因って受けたダメージが逆再生するように復元し、シキを巻き込む様に巨大な竜巻を起こす
『はぁ…はぁ……フハハハ…どうだ!神の御業はっ、ハハハ……ハッ?』
「気圧や大気を操るでも無く…こんな力だけで再現したものは、相手がより大きな力を持っていれば簡単に対処されてしまいますよ……こんな風に」
竜巻の中から平然と歩いて出てきたシキが手を振ると、背後にあった竜巻が忽然と消える
「…にしても、貴方程度の能力では神力を使うには足りないと思っていたのですが……なるほど、どうやらその額の物が足りない部分を補助しているみたいですねぇ」
サウドのサークレットを見て「後学の為に少し貸して貰えますか」と、ニヤリと笑い距離を詰めるシキに
『ふざけるなっ!コレは俺の物だ誰にも渡さん!』
そう言うと額のサークレットを抑え『クソッ、クソッ、クソッ、クソッ……』杖の先から白い炎弾を高速で放っていく
『ゼハァ……ど…どう…ッ!ぐあっ』
サウドが、サークレットから一度で引き出せる神力を限界まで使い、数十発の炎弾を放ち終えるが、打ち終わりを待っていたかの様に、爆煙の奥から黒いレーザーをシキが放ちサウドの四肢を貫く
『くっ…糞…回ふっ!……なんだ…この…うああああ……憎い…憎い…憎い、憎い、憎い………』
四肢を破壊されて地面に伏したサウドの雰囲気が替わり、憎しみの籠もった眼でシキが居るであろう爆煙の奥を睨む
「ふぅ…やっと墜ち始めましたか、ですが念の為もう一押しときますか…」
はやりというか、無傷のシキが爆煙からスーツを叩きながら現れ何やら呟くと
「無様ですねぇ、この程度の攻撃にも対処出来ないとは…はぁ…それで良く神とか名乗れましたね、恥ずかしく無いのですか?まぁ…その額の物は私が貰ってあげますから、有り難く思って下さい」
未だに『憎い』やらなんやら喚いているサウドを煽りながらゆっくりと近付いていく
『憎……いッイイイイイイイイイイイイ……』
突如としてサウドが激しく叫びだすと、額のサークレットを掴みそのまま胸に突き入れた、するとブロンドだった髪が灰色に替わり首元や破損して肌があらわになった部分に模様が現れ始める
「……あのそこはかとなく見覚えのある模様に髪色……まさか…」
『アアアア……』
上半身が一回り肥大化し、装備などが剥がれ背中に黒い翼が生えるとサウドは眼を開ける
『こっ…この模様は!?』
赤く変色した眼で自身の身体を確認したサウドが、身体にある模様を見て
『おおぉ…力がみなぎる…これで俺はあの方の様に…』
そう、暫く歓喜に震えるていたが、おもむろにシキを見ると手を向ける
『ダークフレイム』
魔法名と共にシキの足もとから黒い炎柱が立ち上がる
『ハハッ、どうした、今迄の様に無効化してみろ!』
「クッ、やりますね」
今迄は躱そうともしていなかったサウドの攻撃を、障壁まで張って防いでもダメージを受けている様子のシキに、ご満悦な様子のサウド
『フハハハ、感謝するぞ、お前のお陰であの方と同じ身体に成れたのだからなっ』
「痛……あの方?誰ですか……」
『知りたいか?』
「えぇ…興味はあります…ねっ」
更にあがる円柱をシキがギリギリで躱す
『チッ、ちょこまかと…まあいい…教えてやろう、貴様が生きている間は……なぁ!』
そして、墜ちて邪神?になったサウドとシキの戦いが始まるのだった




