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「ヌンッ」
ダンジョンの表向きの最下層に在るボス部屋で、五郎は漆黒のスケルトンと対峙していた
(ヌルい…)
己の突き出した拳を、スケルトンは意に介することもなく自身と交差するようにすり抜ける
「くっ…やはり…」
すり抜けざまにでも斬られたのか、突き出した五郎の腕には肘から二の腕に掛けて斬られている
スケルトンが纏う外套から覗く、黒刀に手を添えて(カッカッ)と笑う
「まさかこんな所で、そんな姿の貴方に会うとは……」
(カッ、ようやっと気付きおったか、この親不孝もんがっ)
そう言うやいなやスケルトン…刀夜は、五郎との間を詰め抜刀する
「っ!そんなっ、形でっ…くっ、気づくかっ!」
抜刀からの切り上げ、からの切り下ろし、更にタイミングをずらした突きを五郎は辛うじて躱す
(ホウ……ッ!)
自身の攻撃を五郎が躱しきった事に感心していると、右肋骨近くの何も無い空間からいきなり拳が突き出てくるが、刀夜は今迄と同じ様に特殊な脚運びで間一髪すり抜ける
(妖面な…ぐっ、なんじゃこれは……)
不意の攻撃に対処する為、己の能力を一段回上げようとした刀夜は、力が上手く練れ無い事に気付き右の肋骨の一部が白く変色している事に気づく…
「ちっ、此れを初見で躱すか…」
その声に、刀夜が五郎を見ると、薄いが密度の高そうな闘気の様なものを纏い拳を突き出した状態の姿が見て取れた
「だがっ!この生気を強化した魔気は、死人には流石に堪えるようだな……ならばっ、どんどん行くぞ!」
(くっ)
“クルっ”そう思った刀夜は縮地を使い五郎の後ろを取るが
(もらっ、ナニっ!)
背後からがら空きの首を刎ねようとして気付いた時には、眼の前の空間から揺らぎと共に拳が突き出ていた
「ちぃ!」
辛うじて刀を引く事で、拳を防ぐ事に成功すると、いったん距離を取り連続して縮地を使う事で五郎を撹乱しようとする
(どうなっておる……感か……ぐうぅ…なに…がっ⁉)
五郎を中心に不規則に縮地で移動し続け、五郎の攻撃の絡繰りを見抜こうとしていた刀夜は、身体への唐突なダメージに動きを止めてしまい、其処に追撃を受けるが自ら跳ぶ事でなんとか威力を殺し刀で防ぐ
(カカッ、好き嫌いを言ぅておる場合…ではないかっ!)
自身のダメージなど気にする様子もなく、嬉しそうに刀夜は上段から黒刀を振り下す
「なっ!」
さらなる追撃を行なうとしていた五郎は、振り下ろされた黒刀から黒い斬撃が己に迫るのを見ると、追撃を止め魔気を纏った拳で斬撃を迎え撃った
やはり死霊には効果的なのか、魔気を纏った五郎の拳は拮抗することも斬られる事もなく黒い斬撃を打ち破る
「フンっ…この程っ!」
(ほれほれ、次々いくぞ)
打ち破られる事など最初から織り込み済みとばかりに、刀夜は縦横斜めと次々に斬撃を飛ばす
「ちっ、鬱陶しいっ」
五郎は自身に魔気を纏う時、同時にこのボス部屋の大半を己の魔気を薄く広げる事に因って把握していた
其のおかげで、刀夜の事の起こりからある程度の未来予測まで出来ていたので、続く斬撃を危なげなく躱していく
只、途切れる事なく続く斬撃と、振りと合わない斬撃のスピードに、なかなか反撃に移る事が出来なかった
(ふむ、成程のぉ…だいたい解ったわい)
そう言いながらも、途切れる事なく斬撃を放ち続ける刀夜が(さて…どうするかのぉ…)と攻め手を考えていると
「ハアァァァ!」と、五郎が纏う魔気の量を増やすと、身体を覆う魔気に因って斬撃が無効化される
準備の整った五郎が“ニヤァ”と刀夜の方に笑みを浮かべた後、斬撃を無視しつつ構えを取り刀夜に向けて踏み込んだ
(甘いわっ!)
五郎が踏み込んだ瞬間、刀夜は振り返りると同時に黒刀を振り下ろした
(なっ…ニィィィ!)
其処には、いわゆる鉄山靠の姿勢に入った状態の五郎が転移していた、刀夜は構わず黒刀を振り下ろすとが、五郎の纏う魔気に刀を止められそのまま技を喰らい吹き飛ばされる
(……ぐ……カッカッカ…どうやらその力…儂には相当…相性が悪いらしいの…)
刀を支えに倒れるのを堪えていた刀夜がフラリと立ち上がる、外套を含めた身体の半分程が煙の様に黒い霊力をあげ白っぽく変色している
(勝てぬ…か…)
「ほう…事実とはいえ貴方がそんな事を言うとはな……」
刀夜の言葉を諦めと取った五郎は
「…ならば、そんな姿になった親へのせめてもの手向けに、子である私が引導を渡そう…」
そう言って、とどめを刺す為、さらなる魔気を練ろうとする
(カカッ、阿呆が、誰が勝負を諦めたと言うたっ!)
そんな五郎を刀夜は一喝すると、黒刀を天に掲げる
(相性が悪いのであれば、其れをどうにかすれば良いだけの事であろう…ヌゥゥン!)
刀夜から黒いオーラ上がると外套が拡がり、刀夜を繭の様に包む…
(人化…)
外套の内側から刀夜の声が漏れると、外套を中心にひと際大きな黒い波動が起きる
「むぅ…その姿…」
波動が収まり、様子を伺っていた五郎の眼には、多少(金色で瞳孔が爬虫類っぽい眼だったり、所々に鱗が有ったり)の違和感はあるが若かりし頃の父親の姿が写る
「その反応……やはり生前に引き摺られるか……我ながら未練がましい事だ……」
外套を着流しの様に纏った人の姿を取った刀夜はそう呟くと、五郎と同じ様なオーラを纏いだす
只、そのオーラは五郎よりも濃く暗く澱んでいた
「更に…」
そう言うと刀夜は、ゆっくりと黒刀を納刀しながら、自身を中心に半径3メートル程のドーム状に、五郎の展開しているものよりも濃くオーラを展開する
「これで……お主の鬱陶しい攻撃への対処も出来た…」
五郎に対し居合の構えを取りながら刀夜が言う
「…フフ…面白い!ならば私も使おう!」
五郎は、懐から何かの結晶の様な物を取り出すと其れを握り潰す、すると粉々になった結晶が光ながら五郎を覆っていき変化する
「これは…フフ……さぁ…仕切り直しといこうか」
光が収まると、ボロボロの道着の様な格好だった五郎が、ライダースーツの上に手足に聖闘士な装備を装着した格好に変化していた
「…カカッ…行くぞっ…五郎!」
いつの間にか背中に黒い翼を生やしていた刀夜が、鯉口を握り柄に手をかけて翼を使い五郎に向かう
「来いっ!今日こそ超えさせてもらうっ!」
腰を落とし、拳を軽く握り、半身に構えて五郎は刀夜を迎え撃つ
「「ハァァァ!」」
白いオーラを纏った手甲と、黒きオーラを纏った黒刀が、己の意地を掛けて今まさに衝突しようとしていた……




