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「「「ぎゃあああ」」」
這い寄る雷…エリがそう名付けた魔法による攻撃を受けた三人が、プスプスと漫画の様に煙を上げながら倒れる
攻撃した側が「えっ…死んでないよね?」と思わず演技を忘れ固まる程のヤラレっぷりだった
「……はっ…フフフ、貴方達まだその程度なのね…」
エリは自分が素に戻っていた事に気づき、慌てそれっぽく言うが、その内容は自分に比べて成長していないかつての仲間への本心だった…
「みっ、みんな!くっ…」
猫の獣人の女は倒れた仲間を庇うように、其れをした相手…エリの前に立つと、かつての仲間だったエルフを見る
白かった肌はギャルの様に小麦色になり、ブロンドだった髪も銀髪に変化し、露出の高い衣装の上から機械的だが禍々しい感じのパワードスーツの様な物を纏っている姿は、とても同一人物に見えなかった…
「エリさん…なんでっ⁉」
「フフッ、良いんですか?そんな悠長にしていて」
猫耳の女が、仲間だった者の余りの変わり様に動きを止めていると、エルフの女…エリがスーツの持つ2メートルを超す無骨な大剣を頭上に掲げ“ギィィィン”とスーツ全体から音が響き始めると、無骨な大剣が魔力を纏い出した
「わっ、私がきっと助けるから!…っ今はごめんなさい…」
勝てない…そう思った猫耳の女は準備していた転移を発動する、そう言葉を残しながら…
「ふぅ」
転移に因って四人が撤退したのを確認したエリは、構えを解きながらスーツの発動を止め息を吐く
(おうっ、エリ、お疲れさん!)
そんなエリを労う声が、自身が纏う装備自体から聞こえてくる
「うぅ…見られちゃった…恥ずかしよぉ…」
今回、エリがあの四人と遭遇したのは完全なるイレギュラーだった…まぁ…何処ぞの魔王が裏で手を引いていたのだが…
エリとしては面識の無い現地人に、この姿を幾ら見られようと平気なのだが、同郷でよく知る相手に見られたと思うと羞恥心で押しつぶされそうだった…
(気にすんなって、その姿も、俺を纏ってる時の姿も、最高にイカしてるぜ
くう〜、アーマーバージョンの俺も格好いい!)
「そう…かな……可笑しくない?」
(…ん?おうっ、イケてる、イケてる、最高だって!
よっしゃ、じゃあ次いくか!)
「うん……フフッ、最高かぁ…」
その後、エイイチに羞恥心を上書きされた、機動褐色のエルフに因る蹂躙が暫く続くのだった…
「チョロ…」
コーさんから諸々の報告の内、エリさんの部分を聞いたウチは思わずそう零してしまった
「どうか…ドォぉう…かっ…これからはまともな…とは、言えないかもだけど、新しい恋に生きて下さい……なにとぞお願いします…」
記憶を見た時はゾッとしたよ、小学校に入るまでは普通な感じだったのにその後、ある男の子を好きになったのか学校ではずっとその男の子を見続けてて、ある時を境に視界の中心にいた男の子が、学年が進むのに合わせて段々と視界の端に移動していく
中学の頃には視界ギリギリまでになっていたから、長い恋ももう終わるだろと思ったら……
「いやっもう、ヤバイっしょ」
高校が別でも、大学が県外でも、就職後も、ずっと定期的に視界の端にその男…ウチの父親…が映ってた……
もう怖すぎて…仮面しとって良かったぁ、っと心から思ったわ
なんとなく此方に来た事で、エリさんも吹っ切れてる?的な感じもしたけど…その対象が父親となると…ウチの安寧の為にもちゃんと吹っ切って貰おうと、エーさんをイケメンな感じに受肉させて付けてやろうと思ったんだけど、エーさんに受肉を断らて…じゃったら其れでえぇわと、半ばヤケクソで、だいぶマシンっぽくなったデュラハンのままエリさんとコンビを組ませた…
「何がどう転ぶかわからんもんだねぇ…まぁ、これでもし、顔バレしても大丈夫っしょ……あっ、隔離できたっぼいね、でわでわ……」
拗らせたエルフにひと区切り付けたウチは、ダンジョンの改造に精をだすことにした…
・・・・・・・・・・・・・・・
『まったく……異世界人だと…私の大陸に何を勝手な……クソッ、やはり減っているな…』
詩乃がダンジョンの改造に精をだしている頃、ダンジョンから国を1つ挟んだこの大陸最大の大国の中央にある神殿では、大陸最大の宗教であるサウド教の教皇で現人神でもある神サウドが、苛立た気に己の信徒からの報告を聞いていた
『…まぁいい…それで大司教、その異世界人とやらはどうなった?』
ひとまずは苛立ちを抑えたサウドは、サウド教の裏を取り仕切るエルフの男に尋ねた
「あぁ、どうやら魔王シノーとか言う者の側近で、なんと言ったか……確か…漆黒の騎士だとか暗黒卿とか言われる者相手に、仲間を一人犠牲にして撤退したとかなんとか…」
ヤレヤレと、大司教と呼ばれたエルフが神に対しては不敬過ぎる態度で答える
『………それで?』
その態度を不快に思いながらもサウドは続きを促す
「それでっ?ご存じないっ?」
大司教は殊更驚いてみせて
「ハァ~、報告は来ている筈ですがね…」
ふたたびヤレヤレと、呆れてみせると
その様子に、サウドが表情を消し、真顔になり、こめかみがピクピク痙攣している事も無視して続ける
「仕方ないですねサウド様、今度はちゃんと聞いて下さいよ?…確か…最初の者とは別の勇者が…あっ、この者もどうやら異世界人みたいですね、これはご存知だと思いますが…その者の呼び掛けで、我が国を含め複数の国から魔王シノーですか…その者を討伐する為、多数の冒険者が魔王が居ると思われるダンジョンの、手前の辺境の街を拠点として奪還する為に集結している最中でしたが、どうやら奪還に成功した様でして、其れを聞いた各国の中には軍を派遣している国もあるとか…この様子なら、おそらく遅くても数ヶ月以内にはダンジョンに向けて侵攻を開始するでしょう…どうです?ちゃんときっ…ぐっ」
『……マウゾ…貴様は私が神になる前…数百年の付き合い故、多少の無礼は赦しているが…余り調子に乗らぬことだ……』
報告の最後、サウドは立ち上がり大司教…マウゾに手を向け軽く握る様な仕草をすると、マウゾは首を抑えて苦しみだす
『フンッ……それにしても魔王に勇者か…これ以上、私への信仰を犯すのは許せんな……フフッいつ振りだ?百年…いや、もっとか…』
吐き捨てるように力の行使を止めると、「グッ、ハァハァ、ハァ~、うっ」と蹲るマウゾを見下ろしながら何を決めたサウドは、「うぅぅ、うっ」とマウゾを踏み付けてから何処かへあるき出す…
「フゥゥゥ……数十年ぶりですがやはりこの程度ですか……物足りませんね……やはり偶然とはいえ神などにならなければ……」
マウゾは倒れ伏したまま、去って行ったかつてのパートナーの方を見つめ、同じ様に何かに決心するのだった…
余韻に浸りながら………




