11
ウチ達が、そろそろこっちに来て4年を越えようかって時に、コーさんが、あの空間で癒しの魔法を掛けて助けてくれたお姉さんを連れてきた
こっちに送られた時に偶然…偶然なの?…転移先が一緒だった四人…ウチは独りだったのに…で、この4年近くナントカって国でよくある冒険者って奴をやってたらしい
それからいろいろあって一年ほど前に、これまたよくある冒険者ギルドって所の依頼で、ウチらがドンパチやってる国の内の1つにやって来たところ、勇者がなんとかで、自国の軍やらなんやらの殺る気?というか士気ってやつがダダ下がって使い物になんないから、前線で侵攻してくるアンデット達から兵士の代わりに街を防衛するっていう仕事を黙々とこなしていたみたい
「もうっ、大変だったんだから」と、実年齢49の癖にウチより幼く見えるエルフに、ほっぺたを膨らませて言われても、ウチにはオバさんなのに…としか思えんし…
状況が変わったのは半年前で、なにやらちょっと離れた国から勇者が喚ばれたって事で、はた迷惑にもウチらの周りの国をその勇者が扇動して廻ってるらしい
「なるほどね~、あんだけ心折ってやったのに、最近元気なんはそういう事かぁ…でも勇者って…笑ける…」
でも、そういう事ならみんなの言う通り前線を下げたのは良かったのかも、“ボクの考えた最強のダンジョン”にするにはまだまだ時間が掛かるし…
まぁ、エリさん達みたいな、元日本人が出たら記録をネタにコーさんに相手してもらえはオーケーっしょ…面倒くさいし…
それに、新旧勇者対決……いいネタになりそうだし…
そのエリさんだけど、目を覚ました時はみんなのを見てパニックになったり、泣きながらおしっこ漏らしたり大変じゃった…
今は、みんなとも仲良くなったみたいで、楽しそうにしてるっぽい
…ウチはなんか避けられては無いはずなんじゃけど、距離がある感じ?で、まぁ、話し掛ければ普通に喋ってくれるから、嫌われては無い…と思いたい
「できた………ヒヒッ」
メインの思考でそんな事を考えながらも、残り2つの並列思考を全開で働かせて、ウチはある物を遂に完成させた
完成させたソレ、頬骨から上を覆う仮面(いろいろ考え過ぎた結果、どこぞのハッカー集団っぽくなった)を、ウチは着ける
「よしよし…コアの分離には苦労したけど、ちゃんとコアの機能も操作できるね」
この仮面の為に、ダンジョンのコアを壊さない様に、親機と子機に分離しようと数ヶ月も四苦八苦(ダンジョンの外に石碑のようしにて閉じ込めたおじゃるにまで聞いた)して、漸くソレに成功したコアの分体ともいえる物を核にして、ウチはこの仮面を作り上げた
ARみたいに映ったコアのメニューを、思考操作できる事を確認したウチは
「クヒッ、いよいよ本番じゃね…」
準備してた、ダンジョンの魔物の核(こっちじゃ魔石って言うっぽい)から、余計な情報を消して加工して作った記録メディアに、新たな情報を書き込んだ物を、自作のピンクっぽいローブにある秘密のポケットに入れる
「フォ〜、ヒヒッ…」
ポケットにある魔法陣から仮面の額の裏にある魔法陣へと、今もウチに取り憑いてる自我の無い霊魂から、前もってウチと同じぐらいの女っぽい感じの霊魂を感で選んでした記憶のコピーが、記録メディアから魔法陣を通じてウチの視界に映しだされた…
までは良かったんじゃけど、すぐにインパクトのあるDQNな男女(親かな?)の顔がアップで出て来て
「うげっ…コレはコピーするとき、いる物だけに厳選しなきゃ……」
コピーの際、並列思考も使って全力で編纂することをウチは誓う
「でもあれじゃね、コレっておとんの部屋の漫画で見たのと似てるよね……試しに…おおっ!」
某漫画のおじさんと同じように、記憶を早送りしたり巻き戻したり出来た、これはコピーも捗ると思いながら久しぶりに、自分の顔をあげたり、噛じられたり、付け替えたりする男のアニメを見る…ちょっと涙でた……
「……う〜ん…そうそう上手くはいかないと…」
しばらくいろんな霊魂の記憶をザッと見て、魂的な力?存在?が希薄な霊魂ほど、記憶に欠損が多い事を確認したウチは
「仕方ない…ヤーさん達にも見せて貰って……」
自我のしっかりしてるみんなの記憶を見せて貰って、いろいろ検証しようと考えていたら
「ハッ、そういえば、生きてる人からは…出来る…けど精神破壊しそうじゃし…んっ!」
ウチは仮面を外してマジマジと観ると、あーでもないこーでもないと思考を巡らせ…
「いける!これなら…」
問題を解決する方法にたどり着いたウチは、娯楽のために新たな創作に入る決意をする
「出来たら、試しにコーさんとエリさんにも記憶見せて貰おう……」
私がこのダンジョンに連れて来られてから半年が過ぎました
別にこのダンジョンが嫌と言う訳ではないんです
此処で私が関わる人も…まぁ…ほぼ全員が人じゃあ無いんですが…何なら生き物でさえないですけど、元は私と同じ日本人みたいでとても良くしてくれますし…
何人かは、年も近くて共通の趣味や話題もあって、よく飲みながら遅くまで話し込む事もあります
ダンジョンも、この最下層の居住区はお世辞にも日本とまでは言えませんが、下手な国より余っ程快適な造りになってます……この人達にこれが必要なのと聞かれると首をかしげる物までありますが…
その辺の事は、おそらくこの世界にたった二人しかいない地球人の内の一人、紅一くんがゲンさん(最近、呑みたくて受肉?して、千兵衛さんみたいになった)と趣味でやっているみたいです
若い頃読んでた物語のように、魔法や精霊が存在していて、そんな中をあのエルフになって冒険出来ると思うと、この世界も最初の頃は楽しかった…
エルフとしては子供と言われる歳、相応に若い肉体になったんですが、だからといって中身が変わる訳でもなく…あっと言う間に、環境に順応していく見た目も中身も若い仲間を見て、不甲斐なく感じたり、そのあまりの順応具合にやっぱり私は染まらない様にしようと決意したり、でも…一番キツかった…今でも苦手と言うか無理です…のは、この世界の民度と言うんでしょうか、その低さに私は心が折れそうでした
発展してないから仕方くもあるんでしょうが…どうしても不衛生なこと、不快な臭い、そして人…は、馴染めませんでした…
その全てをなんとかする為に私が縋ったのが魔法で、とにかく必死に魔法を研いて行きました…おかげで、さまざまな事に魔法で対応出来る様になった私は、魔法に関しては一家言あると自負していました…此処にくるまでは……
何が言いたいのかと言うと…多少、仲間が気になりますが…そんな外よりこのダンジョンの方が余程快適なのに、不満などあろう筈が無いと言うことです
ただ1つ不安が…と言うよりも気になると言った方が合ってる気がしますけど…あるんです
それは、詩乃さんの事なんです……っ別に、嫌いとかじゃ無いんですけど、なんとなく雰囲気がアレで緊張するというかなんと言うか…話している時とかは平気なんですけど
それにこの間、記憶から映画とかドラマのDVD的な物を作るみたいな実験に協力してからは、何故か詩乃さんに避けられている気がして余計に気になって…
でも、あの実験は楽しかった…自分では忘れてたりうろ覚えだったりする記憶まで、ハッキリと映像で見る事が出来る素晴らしい物だった…昔の甘酸っぱい想い出を見返す事ができましたし
思えばあの時、最初に記憶の抜けがないかと、産まれてからその日迄の記憶をザッと確認した後
「…あ〜、うん…大丈夫そうなんで、コレを此処にこうすると…後はファイルをコピーする感じで…そうそう…じゃっ、終わったらその辺の人に伝えて…あ、あとよろしく〜」
そう言って、去って行ってから、詩乃さんは余所余所しくなった気がします…
(おっ、いたいた、エリちゃんよぉ、ワリぃけどまた頼むわ)
そう過去の事を思い返している私の所に、エイイチくんの首だけがやって来ました
「も〜、また?…まぁ…いいよっ、それにしても相変わらず首だけなんだね」
この人のコレには最近ようやく慣れてきましたけど、首(と言っても兜まで含めると、もう最近はそう云うロボットにみえる)だけで浮いてウロウロするのは如何なものかと思いますけど…そう思いながら私は、エイイチくんの首を抱き抱えます
(お〜、そうそう…ヘヘッ、しっかりなっ、いや〜能力が上がって部位だけじゃなくて、接触してる物や生きもんも一緒に召喚できる様になったかんな…相変わらず体の方にしか喚べねぇけど……よっしゃ、いくぜっ)
エイイチくんがそう言うと、私達は鍛錬の為にその場から姿を消しました
「なぁ…あの二人って、えぇ感じなん?……さぁ、って……えっ……あぁ、こっちのことじゃし……なら、無理矢理でも受肉させて……なに?……ブスイ?ってなに?……いや〜こっちとしてもまさかエリさんが…………」
その様子を覗いて、こんなやり取りをしている存在に気づくこと無く……




