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(クソっ、此処にもおらんとは…何処でなにをしてるのだ、あの小娘は……まったく手間の掛かる…)
貴族の娘が伯爵に報復してから一年、今は廃墟になった街の、領主だった者が使用していた城にある謁見の広間で、領主の椅子に腰を掛けた吸血鬼の男が苛立ち独り言ちる…
(まぁ、此方の世界の人間どもに関しては放置でもいいだろう、あの貴族の娘ら程度に苦戦しておるぐらいだからな、吾輩が出張るほど…)
欲望の儘やり過ぎた貴族の娘のせいで、早々に近隣の領主達に異変を察知され、あわよくば領地拡大と、討伐の為の軍やら傭兵やらの勢力を派遣され、貴族の娘側は広範囲をバラバラに守っている為、各個撃破の憂き目にある事を、ただ個体の能力だけしか考慮していない男には想像出来ていなかった…
(ん?、おやぁ〜)
「あっ」
もういっそ、貞子の事は切り捨てるか…等と考えていた男が何かに気づき、それを視界に捉える
開いたままの広間の入り口から、顔を覗かせてなかを伺うなにかの姿を認めた男の様に、慌てて顔を引っ込める幼女が居たのだ
“タッタッタ”幼女が走り去っているであろう軽い足音を聞きながら男は
(まだ、生き残りがいたとはな…フム、吾輩が留守の間に入り込んだのかね?…しかしあの容姿…いい…実にいい……ハァハァ…滾るねぇ…)
雰囲気を一変させ、下衆な笑みを浮かべてそう言うと立ち上がり、どのように己の欲望を満たすのか想像しながら、幼女の跡を追い始めた……
(お嬢ちゃぁぁん…ほらっ、オジサンとあ〜そび〜ましょ〜)
「いやぁ~」
男が、マントの下の×××した××××を惜しげもなくさらけ出して、必死に逃げる幼女を追い立ている
(フゥ~、フゥ~、…まだまだ…じっくり愉しまねば…ウッ…勿体無いからなぁ〜)
幼女に追いついた男は、わざと捕まえような事はせず、性癖全開で弄びながら幼女の後を追いかける
(フッハッハッ…ウッ…フゥ…何処、ウッ…へ…行こうとっ…いうのかね)
「ひっぐっ…こないでっ!」
“バタンッ”開いていた扉に逃げ込み、幼女は勢いよく扉を締めた
(ハァ~、いかんいかん、夢中になり過ぎたわ…そろそろ血を補充せねばいかんな……仕方ない)
男はそう言い、幼児の締めた扉を開け中に入る
(グヘへ…さぁお嬢ちゃん、遊びは…ん?)
(え〜、もうおしまいなの〜)
(僕らと遊ぼうよ〜)
(ん、遊ぶ)
気付くと男の身体中に幼子が群がっていて、それぞれに男に懇願し始める
(クッ、ハァ~…うむっ、遊ぼう…ではっない!いつの間に吾輩に取り付いたのだっ!)
(くっふぅ〜)と、自身を滾らせながらも鋼の意思で、幼い子たちを、引き剥がそうとするが…
(ぐっがががっ、なっなんだ、こ奴らの力はっ)
(キャー、手を離したら負けだよ〜)
(負けないもん!)
男がいくら引き剥がそうとしても、遊びと勘違いした子供達にとても子供とは思えない膂力でしがみつかれ、引き剥がす事が出来ない
(ぐあっ、糞っ確なる上は……っ!何故だ!何故、変化できん!)
男にしがみつく子供らの力が更に増し、男の身体に子供らの指が食い込み始めた事で男は悲鳴を上げる
男はなんとか子供らの拘束から抜け出そうと、吸血鬼の特性を活かし複数のこコウモリに変化しようとするが、幾ら試しても何故か変化するとこが叶わない
(うふふ、逃さないよ)
そんな声に、男がふと前を見ると、先程まで自身が追いかけていた幼女が、幼女らしからぬ笑みを浮かべて立っていた
(ギャッ)
痛みに耐えられず膝をついた男に幼女は近づくと、男の頭を優しく抱きしめる
(ねぇ…お姉ちゃん)
すると今まで普通の床だったものが、血溜まりの様に変化し、壁や天井に無数の爬虫類の様な目が現れる
(スゥ〜、ハッ、なんだっこれは⁉)
思わず幼女の匂いを堪能してしまった男も、床の血溜まりの中から幼子の手が無数に現れるという変化にただならぬものを感じる
(っ!なっ、吾輩のコレクション共が何故…)
男は視界の端に、血溜まりの中から手に続いて這い出てくる幼女たちが、各地で欲望を満たした後、眷族などにして保管しておいた者達だと気づく
(さぁ、みんな、残さず頂きましょうね)
男の頭上から、今度は聞き覚えのある女性の声がする
((((は〜い))))
生気のない声で子供たちが女性に答えると、口が化け物の様に裂け一斉に男に男に群がり始め、既に取り憑いている者は男に噛み付き始める
(ぎゃあああ)
(その粗末な物は倫理的にアレなので、先に処理しますね)
男の、何処とは言わないが、露出していた部分が、一瞬で潰れ更に黒い炎で焼き尽くされる
(おのれぇ〜、ギョウガァァァ…)
痛み耐えながら男は、此処で素早く女性…キョウカから逃れれば、まだ自身を回復出来る筈と考え
(喰らえぇい!ブラッデーニードルゥゥ)
全身から血で出来た鉄串の様な物をまき散らす…
(フハハハ、一溜りもある…ま…ぎゃあああ…何故だぁ!)
己の放った渾身の一撃を、何事もなかったかの様にスルーされ、新たに取り憑いた幼女からも齧じられ、痛みに混乱をきたす男に
(フフフ…本当に馬鹿なんですね…今更ただの血による物理攻撃なんて…まぁでも、余計な概念を込めない分、物理攻撃としてはそこそこの威力でしたよ)
そう言うとキョウカは、自身を貫くことが出来ずにいる血の串達を、手を軽く振る事で霧散させる
己の性癖の為、偏った知識しかなかった男は、吸血鬼である自身の能力もレトロなものしかイメージ出来ず、スキルも限定されていた、その分、普通よりも能力は強力だったりするのだが…
ハイロの素材や此処に至る迄に回収した子供達の魂等で、進化したキョウカには通用しなかった
(エナジードレインとか魔法とか魅了などなど特殊攻撃に特化されたら面倒くさい事この上なかったですね、元々そういう知識のない人で助かりましたね…)
等と呟き、更に男を追い込む為に
(ついでに言えば、既に城自体が私のテリトリーなので、貴方程度なら幾らでも能力を制限出来ますよ、こんな風に…)
そう、キョウカは言うと、能力の発動の為に閉じている眼を開ける
すると、壁や天井の目が怪しく発光し始める
(あぁあああ…力が……グギャアア…ヒィ、食べないでぇぇぇ!)
キョウカの能力に因って力を制限されるだけでなく、痛覚などを強化された事で、痛みに絶望した男の心は、キョウカの目論見通りポッキリと折れた
(あらっ、意気地がない……こらっ、みんな良く噛んで食べましょうね〜)
(やっ、やめてく………………)
その後、キョウカの言う通り、子供たちにしっかりと咀嚼されながら男の魂は消滅した




