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❲ヌハハハ、オヌシらも頑張った様だが、いま少し我を倒すには至らなかったなぁ❳
このダンジョンの最終階層である地下50階にあるボス部屋の中に響き渡る、ダンジョンマスターでもある黒い竜の満足気な声
死闘だったのか、黒竜の前には多数の者…いや、アンデットが倒れている…
其れを成した黒竜自身も、既に満身創痍と言ってもいい状態で、今もダンジョンのコアに依る自動回復で辛うじて立って居られた…
黒竜は眼前にうつむき気味に佇む、趣味の悪い仮面を着けた魔術師然とした格好をした女であろう者に、鋭く伸びた爪を振るう準備をしながら、そう告げた
❲使役するアンデットも既に無いっ、術者であるオヌシにはこの爪は耐えられまいっ!❳
「…っざっけんなよ…みんな強化すんのにどんだけ苦労したと思っとんな…素材とか素材とか素材ぃぃ…」
黒竜が爪を振り下ろそうとした時、女の雰囲気が変わり、黒竜は思わず攻撃を止めてしまう
この時、そのまま攻撃しておけばと、後に黒竜は後悔することになる
「あぁっもうっ!……分かった…殺ってやんよ…」
❲ヌウッ❳
その女…詩乃がそう言うと、闇魔法で質量を持った分身を創り出すと、同じく闇魔法の収納から二振りの禍々しい太刀を取り出して一刀を分身に預ける
「楽する為に頑張ったのに…結局こうやってウチが殺る羽目になるって……笑えんだろがぁぁ!」
身も蓋もないないことを叫びながらも、瞬時に各種バフを自身と分身に掛けると、詩乃と分身は黒竜に向い飛び出す
❲グッ、舐めるなよ、おんなぁ!❳
詩乃が動いた事で我に返った黒竜は、振り上げたままだった爪を振り下ろす
❲なっ…に…グワッ!❳
ギィィン 振り下ろした爪は、アッサリと分身の持つ太刀に止められ、懐に入った詩乃の太刀に片脚を切断される
「耐えきったら天位をやろう、なんっつてなぁ!」
❲お、おの、ギャ!❳
片脚を失った事で、バランスを崩された黒竜が、翼を使いなんとか立て直そうとした瞬間、詩乃に片翼を、分身には振り下ろした方の腕を切断される
❲いっ、いかん、回復が間に合わぬっ、ギャアアア!❳
コアに依る回復など、なんの意味も無いとばかりに、翼、四肢、尻尾と次々と詩乃と分身に斬られていく
❲これまでか……んっ、どうしたのだ?❳
視界を閉じ、己の消滅を覚悟した黒竜は、突然攻撃が止んだことに戸惑いながら目を開けると、下卑た笑みを浮かべ此方を見る女と目が合う
「フヒっ…自分…ほっとけば回復すんだよね?…其れって無くなったとこも復活すんの?…なぁ…」
黒竜は女の言ってる事を理解すると、辺り見回し切断されたはずの己の身体が消えている事に気付く
「これまでも、殺す前に回収した素材はそのまま残ったからさぁ……………」
黒竜は、そう言う女の顔を見て全てを諦めるのだった…
・・・・・・・・
「わおっ……あ〜封印かぁ」
(おっ、お嬢どうしたんで?)
「のわっ、びくったぁ〜…頭だけで来んなし…」
ウチがいつの間にか上がってた並列思考で、監視してた裏切り者…まぁ放置してたけど…の一人、貞子がそりゃもう手も足も出ず殺られたの確認してると、黒竜の素材(初期の方の素材は強すぎて霊魂が耐えられない為まだ詩乃自身の装備以外には使えない)の後期バージョン(黒竜が精神的に燃え尽きたのか黒から灰色に変化した)なんかで強化したら、会話が可能になったんで、言う通りにデュラハンっぽく改造してやったエーさん(本名はエイイチらしい)が、コッソリと頭だけで近づいて話し掛けられてウチはびっくりした
(おぉ、こりゃすんません、この念動ってのが楽しくてついね、それよりどうしたんで?)
「あぁ、あの貞子っていたやろ?此処出てった奴、10日前、アレがさぁ殺られちゃったんだけど…」
(へぇ、そりゃあ手間が省けて良かったじゃねえですか、お嬢
それからエイイチ、おめぇ身体ぁどうした?)
(あ“ぁん、てめぇが言うのが、グレードアップされた俺のイカすガンメタなボディっつうなら、いま此方に来てる最中だぜっ)
(ちっ、何つったか…おめぇ身体を…あぁ召喚だったか?それ出来るっつてただろうが…なら、さっさとそれ使って呼び寄せりゃあいいじゃねぇか)
(くっ、それすると俺…そうじゃねぇ、頭の方が身体の方に召喚されんだよ…見るのも考えんのも此方だってんのによぉ…所で、ヤスは何しにきたんだ?)
「エーさんの召喚場所が、身体の場所の方に為るのは核が身体(胸部)に在るんだからどうしようも無いんだけねぇ」
流石、ドラゴン(曰く古竜らしいけど…古竜って何?)の素材って感じなのか、みんな凄く強くなっていろんなスキルも覚えたらしい…エーさんなんかは、結構いろいろ覚えたらしくって、ウチはよく知らんけど(俺のボディ凄いよー)なんて叫びながら身体をバラバラにして遊んでたけど、次の日には(これじゃあせいぜいバ×ーじゃねえか…俺のタ×ンX計画が……)と項垂れてたけど…
(そういうことかよっ!)なんて言ってるエーさんを無視してヤーさんが
(そういやぁそうだったな……お嬢、ハイロの爺さんが、お嬢と再戦させろってぇ五月蠅んでさぁ…なんとかしてくれやせんか?皆の迷惑にもなりやすんで)
うんざりって感じでヤーさんが尋ねてくる、その横で(うへぇ、そりゃ鬱陶しいわ)とエーさんも頭だけで頷いている
ハイロ爺ってのは、ウチが使役したボスだった元黒竜で、まぁ、ひと月に因る再生と解体で黑から灰色になったけど…その素材で竜人?っぽいの作って、黒竜の核を突っ込んで霊魂も突っ込んだ奴なんだけど、こっちが引くぐらい人型になった事を喜んでて、子供みたいにはしゃいで、みんなハイロ爺を相手をすると凄く疲れるらしい精神的に
「えっ、面倒いからやだけど?そんなことより…」
そんな面倒くさい事よりもと、言いかけてふとウチは考える…どうすれば一番ウチが楽できるかを…
「弱体化しとるけどウチがバフもりもりにすれば…あっちはキョウカさんに任せて…場所は…せっかくイジったのに壊されるのはムカつくから……ヒヒッ…この際だしついでに……」
(おい…お嬢のありゃ大丈夫なのか?)
(あぁ…ありゃあ絶ってぇよからぬことを考えてる顔だわな…)
「よしっ、これで行こ!」
方針を決めたウチは、それを二人に告げる
(そんで、なんだぁ…勇者っつたか?其れに扇動された奴等、何千人かが攻めてくるから途中で迎え撃つっつう事ですかい?)
「そう!」
(しかも、あの貞子を余裕でボコったつう勇者ってのを、俺ら4体とハイロの爺で殺さず倒せと)
「うん!」
(更に俺は、あの貴族のジャリんとこ以外の周辺から、割りを食ってそうな貴族を生死問わず攫ってこいと?)
「イエース!」
((…ざっけんな!))
(お前も働け!)など、その後さんざん言われたけど、ウチが誠心誠意、説明(強制)することで納得(無理矢理)して貰った二人には…
「いや〜、これからは足向けて寝れないっすわっ、二人には…テヘッ」
((…………うぜぇ))
…まぁ、あんま時間もないしね、準備だけはしときますかぁ




