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「もうっ、鬱陶しいですねっ!」
”アァィィィィィィ…“と、悲鳴とも喘ぎとも取れる叫びを発し、おそらく怨霊の類と思わしき異形の者が消滅する
「うぅ…造形もそうだけどリアクションもリアルだと、SAN値がぁぁ…」
その怨霊を強制的に成仏させた紅子が、うんざりした顔をして愚痴を吐く
「しかし、此方側に来るのは石を拾って以来だから…30年以上ぶりか…それにしても、変わりすぎだろ…」
俺はこの神社には、ほぼ毎年訪れていたのだが…
今回は神社の裏、境内の奥に用があるので、境内を抜けて目的の横穴に向かった、のだが、
当時の俺の記憶だと、裏山に向けて林を4、5分も歩けば横穴に着いた筈なのだが…既に10分以上歩いているが、目的の横穴には辿り着いていない
しかも、途中からは林の雰囲気もおどろおどろしく変わり先程の様な怨霊が出現しだした
まぁ、神力を使った戦闘に慣れろと、怨霊は全て紅子に任せて、俺は歩いているだけなのだがなっ
「ぐぬぬ、待ってるがいい…鉄槌をくれてやりますよっ!メイドな紅子の名のもとに…」
「……」
いつの間にかメガネを掛け、髪型が三つ編みになり、見覚えのある日傘まで持った紅子を無視して、怨霊を駆除しつつ(紅子が)更に20分ほど進んだ俺たちは、ようやく目的地である横穴に到着したのだが…
「うぇぇ、なんかめっちゃ集ってるな…」
「うひぃ、気持ち悪っ!」
そこには、今までよりひときわ異形の怨霊の集団が、横穴から溢れ出る光景があった
「何か出て来ますよ!」
紅子がそう言うと同時に、怨霊共が左右に分かれその間を
「なんだか、卑弥呼さま〜とか言いそうな格好ですよね、頭ないけどっ」
縄文だか弥生だかの時代に着てそうな、衣装を着た首無しの男だろう身体が、こちらに向い歩いて出てくる
そのまま俺たちから20メートルほどの位置まで近寄った首無しの男が、立ち止まり両手を広げ胸を反らすと、オォォ……と、叫び声のように周囲の大気が震えだす
バンッ、と首無しの男が唐突に四つん這いになると、震える大気に加え、集まっていた怨霊達も各々に怨嗟の叫びを上げ始める…
「これは…なんて言うか…」
四つん這いになった体が、首があれば叫んだであろう動きをすると、周囲の怨霊達が、体に纏わりつき始め、徐々に醜悪に巨大化していく…
「シキさんが使ったアレみたいです、形は、某祟り神みたいですけど…ッ!」
紅子が、怨霊を纏い巨大化したソレの感想を言った瞬間、全ての怨霊を纏い終わったソレが、紅子に向け体に複数ある眼球からレーザーの様な攻撃を発する
バッと、攻撃を察知した紅子は、神力を纏わせていた日傘を開きレーザーを日傘の傾斜を利用し逸らす様に受ける
「くっ、うのぉ〜!」
ドンッ、さすがの紅子も全ての攻撃を逸らす事は出来なかったらしく、まともに受けたものにより後方に飛ばされるが、タダではやられん!とばかりに、飛ばされる瞬間に日傘の柄に集めた神力を銃の様に撃ち出した
ボンッと、盛りあがったソレの背中に、紅子の放った神力の弾が命中し爆散すると、肉片の様に飛び散った怨霊が、オッ、オオオンとかハァァァァンとか、何とも言えない断末魔を上げ消える
『ギョョョ…』
思わぬ反撃に背中を削られたソレは、体表にある複数の口から悲鳴を上げ、動きを止める
「っし、これでイケるはず」
あることを思いつき、此処までその為の準備をしていた俺は、ソレの動きが止まったのをチャンスと行動を開始する
「まずはっ!」と俺は、魔力に怨霊が浄化されないぐらいの聖の概念を乗せ魔法を発動する
『ギョオ!』ソレの本体に当たりをつけ、本体の四肢を貫く様に地面から魔力で出来た鎖が体表に現れると、四本の鎖がソレの背中で合体し、地面にソレを拘束するとソレが纏っている怨霊が離れないように、鎖から聖属性の魔力が網の様に発生してソレに絡める
「ほんでもって次はっ」
今度は、神力を練り、出力に注意しながら拘束されたソレを上下に挟む様に魔法陣を展開する
『ギィヤァャ』
下側の魔法陣がまず発動すると、円柱状に上下の魔法陣を繋ぐ様に神力の膜を張りソレを外部と隔離すると、分解と還元の概念を乗せた神力がソレを外側から削る様に侵食していく
「…んっじゃあ…最後っ!」
少しすると今度は、上側の魔法陣が発動し、更にそのすぐ上にも魔法陣が現れる、隔離された中に満ち始めた怨霊を分解して、全てを魂力とでもいう感じのものに還元したものを、創造の概念で擬似的な魂に再構築して、最後の魔法陣に込めた転送でその擬似的な魂をある所に送る事で締めくくる
「これはっ…なかなか、きっつい…なっ」
工程の多さと、魔法陣に注ぐ神力にも神経を使う為か、精神的な負担が高くて俺は「欲をかいたか?」と少し後悔した
「……」
『ギャャャャ…』今だ苦痛に満ちた叫びを上げ続けるソレを、戻ってきた紅子が見て、その絵面に「ひぃ」と、怯え、無言で、俺にジト目を向けてきた
その様子を俺は、視界の端で見ていたが、努めて無視して、ようやく纏っていた怨霊の全てを削れそうなソレの処理に集中する…
「さて、直ぐにでも分解してやりたいが、先に溜まった魂力の処理をするか…」
処理スピードの差で、擬似的な魂の創造が追いつかず、隔離空間に魂力が溜まり過ぎた為、怨霊が剥がれ四肢から鎖で拘束された状態で、ジタバタ動く首無しの男を見ながら俺は呟く
(はぁ、どっかの処理なり行程なりを❲私❳にやらせば楽で早いんじゃけどな…)
遅々とする作業にそんな事を思っていた時だ、ようやく再構築の作業が終わると気を抜いた隙をつかれる
「あっ……フヒッ、かわいい…」
拘束する鎖を含めた全体の制御が、気を抜いた事でおざなりになった瞬間、拘束されていた首無しの男が光ったと思ったら次の瞬間、男の姿が尻尾が五本ある黒い狐に変わる、ついでにポケットに入れた石が重くなった気がするが、今は無視して緩んだ制御を締め直しす
『おのれ…、我から逃れるとは忌々しい…』
狐が何か言っているが、コイツは状況が解っているのだろうか?
『フッ、人間にしてはやるようだが、我に掛かればこのような物など、ハァァァ!……このような…ぬおぉ…フンッ…ば…馬鹿な…』
こちらに向いなにやら上から目線で言っていた狐が、身体やら各尻尾から力を開放するが、どうやっても自分を拘束する鎖から抜け出せない事に驚愕している
「もうええ?じゃあ…死ね」
俺は停止していた下側の魔法陣に神力を注いでいく
『まっ、待てっ!ギャャャ』
「うっわぁ…」少しずつ分解されていく狐のさまを見て、紅子は若干ひいていた
最後の方は『後悔するぞ貴様ら!絶対に呪ってや……なにっ!きっさまぁ…そんな事が……やめろっ、やめてくれ〜……』そんな感じで狐は分解されて行った
ちなみに紅子は、『あっそういえばぁ、その陣は魂までぇ、分解されるからぁ、呪うとかぁ、無理ですよ〜、ザマァw』とか狐を煽っていた
「どうだ?……マジかっ!……旨いな…」
再構築した全ての擬似的な魂を、魔法陣に組み込んだ転送によって部屋に送り終わった俺は、シモンのハッキング等により有効距離の伸びた念話でシキに思いついた事の結果を聞いていた
❲…えぇ…わかりました…、お待たせしました、今回の擬似魂を全てcpに変換した結果、役300万cpに為りました、内訳は…❳
というシキな報告に、思わず前述の様な反応してしまう
実は密かに問題となっていた部屋のcp不足を、一時的に回避出来た事にほっとして、俺はポケットに手を突っ込み、おそらく今回、此処に来たいちばんの要因である、石を取り出そうと掴んだ時
「おぉぉ、吸われる!」
石に、俺の神力が吸われ始める、急いで石を取り出してみると、黒く変色していた石が元の藍色に戻り、更に今も神力を吸い続け、石は、さらなる変化を起こそうとしていた




