真 帰ってきた男1
『では、行くッス!』 ❲ニャ!❳
記憶にあるだけでおよそ二十年ぶり、実際は三百年以上だが…
やっとひと区切りつく…
感慨に耽っている俺の前で、
シモンとクロが、気合を入れて宣言する
『完了ッス』 ❲ニャ〜❳
あ〜、俺、頑張った〜、そんなふう思いながら、何らかの現象が起きるのを待つつもりだったのだが…
1秒も経たずにそんな事を言うシモンと、汗を拭う様な仕草しながら鳴くクロ
「はっ?もうおわり?」
思わず口出てしまう
「なんかこう光に包まれたりとか無いの?、なんていうか…時間と労力の割にあっさりしすぎじゃね?」
❲なにを馬鹿な、問題なくあっさり終わらせる為の、時間と労力でしょう❳
呆れたようにシキが言い
『はは…この部屋を外から見ると、もしかしたら光ってたかもしれないッスね』
シモンも苦笑いしつつ言っている
「言ってる事は解るけどな…こう、なんというか……」
「はぁ、もういいよ」と言って、俺は部屋を探るが、見たところ何も変わってない…
「んっ、後ろの壁が普通の壁になっとる!、それに…あんなドアあったか?」
遂に、あの騙し絵の様になってた壁が、ただの壁になった、これで消滅の危機は完全に去った訳だが
その壁に、あの中心に吸い込まれる途中の様な時にも無かった、見慣れぬドアが存在していた
俺は、本物かどうか確かめる為、ドアに近く
『おっ、その扉に気づいたッスか、その扉こそが此処と左門氏の部屋を繋ぐ扉ッスよ』
シモンの言葉を聞きつつドアまで来た俺は、「扉ねぇ」そう言いつつドアノブを持ち開けようとするが、ドアノブは回らない
『ノブを持った状態で、神力を流してマスター登録しないと開かないッスよ〜』
先に言えよとシモンを見てから、ドアノブに神力を流すと、頭に機械的な声が響く
[マスター ノ 登録完了 シマシタ
仕様 ノ 説明 ヲ ハジメマス]
その声によると
マスターはどこででも、ドアを設置、使用できる
同時に設置できるドアは二箇所まで、一つは、俺の部屋固定だから、実質、俺が自由にできるのは一つという事になる
意図的に消すか、次を設置するまではその場に残り続ける、物理的に破壊することも一応可能
魔力、気力、霊力等で使用の登録が可能(マスターもしくは類似する者の許可必須)
無登録の者が、魔力その他を扉に流すとインターホンの様になる
だいたいこんな感じだった
「仕様は解った、ではっ、いざっ我が家へ!」
「ガチャっとな」実際には音もしないドアを開け、俺は遂に自分の部屋に帰って来た
「お〜」実際、3ヶ月ほどしか生活してなかった部屋を見渡して、意外と懐かしく感じるもんだなと、部屋の中に入る
「んっ、あっ、すんません」
部屋に入ってすぐ、何かを踏んづけたと感じた俺は、足もと見る
すると、男がうつ伏せで寝ていて、それを俺は踏んづけていたので、咄嗟に謝ってしまう
「てっ!、お前、誰だよ!、…おいっ」
居るはずのない人に、思わず突っ込むが反応が返ってこないことで、我に返った俺は、足の甲で引っ掛けて寝ている男をひっくり返す
「えっ…、ん〜…、これはまた…」
そこには、よく見覚えのある、少しくたびれた雰囲気の中年、そう、俺がいたのだ…
こういう状況になることを、まったく予想しなかった訳でも無いが、個人的にはあまり好ましく無い状況なだけに、暫く考え込んでいたがもう一人の俺は、仰向けのまま、まったく反応を示さなかった
「というか生きてんのかコレ」
好ましく無い状況とはいえ、本体かもしれない自分が野垂れ死んでるのは、其れはそれでいやなので、確認の為に首に手を当て脈を確かめる事にする
「んっ、なんだ…っ!」
本体?に触れると、俺との間に何かが繋がる感触する、すると吸われる様に意識が飛び、視界が消える
「ぐぉ」
いきなりの事でパニックに為りかけた俺に、何かが覆い被さる、その重さに思わず呻いてしまう
「な、なん、ら…」
喋ろうとして、上手く動かない口に違和感を感じ、まさかっ、と自分の状況に思いあたり、閉じているだけであろう目をあける
「ぐっ、や、やっ、はり」
顎を引く事で何とか見ると、そこには、本体に覆いかぶさるさっき迄の俺が見えた
コンッ、もう無理っと力が抜け、後頭部がフローリングにぶつかる
俺は何とか元の体に戻ろうと、先ほどの感覚を意識するが、感触を掴む事はできても、意識を飛ばすほどの感触の強さはどうしても掴む事が出来ない
暫く四苦八苦していると
❲……❳
様子を見に来たであろう、シキがやってきて此方を見ている
おそらく念話を送っているんだろうが、首を傾げ、反応の無いことを訝しんでいるようだ
「シ、シキ、し、死ぬ」
何とか声を出し、シキに伝える
❲ほぉう、なかなか愉快な状況みたいですね❳
そう言いながらシキは、俺の上に覆いかぶさった俺を横に寝かす
「てっ、手を、く、首にっ」
何とかシキそれだけ伝え、それを聞いたシキは、❲もう少し観察したいのですが❳等と言いつつ本体の手を、俺の首に持っていく
「っ!」
掴んだ!直接手が首に触れたその瞬間、それまでどうしても掴め無かった感触を掴むと意識が吸われ次の瞬間には元の体で覚醒する
「だぁ〜、死ぬかと思ったわ」
ガバッと体を起こし一息つくと、煙草を取り出し一服する
❲つまりどういう事ですか?❳
俺は一服しながら、シキにいきさつを説明した
❲なるほど…少しいいですか❳
そう言ってシキは、本体を調べ始める
あれこれやって一息ついたのか
❲まだなんとも言えませんが、この身体は左門の身体ですね❳
「いや…それは見たらわかるから」
時間を掛けた割になにを調べたんだコイツはと、見たら解る当たり前なことを言うシキに、俺はジト目を送る
❲はぁ、いいですか、この身体は神❲nano❳を除いた、今の貴方の身体と血液、細胞、遺伝子情報に及ぶまで全てまったく同一の物?情報で出来ているんです、なら貴方はクローンですか?では記憶は?古傷だってあるでしょう❳
シキにそう言われ、俺は自分が複製だと思っていたが、それは間違いなのかと思い始める
確かに、俺が気がついた時には普通に肉体が有った、魂だけ集めたのなら神が肉体を再構築して与えるとかもありそうだが、リソースの回収という、あの場所の目的を考えれば其れは有り得ないだろう、特にコストの高い地球人となれば尚更だ、其れを更に魂まで複製するなんて100%無いだろう
「なら…この身体はどうして…」
肉体ごと召喚されたのなら、此処に身体があるのはおかしいし、俺に肉体があるのも矛盾する
❲しかし、この身体にもおかしい所があります、見た目に比べ質量が足りません、そうですね、体重で言えばこの見た目なら60kg以上はなくてはおかしいのですが、実際には30kgあるかないかでしょう…❳
シキの言葉に
「そういえば足でひっくり返した時、やけに軽かった気がするな…」
そう思いあたる
❲ここからは憶測ですが…おそらく何らかの要因で、半分…中途半端に左門は召喚されてしまった、其れが原因で、遅れて…そうですね、あの場所が廃棄されてからあそこに召喚された感じですか?、そして、あのざるな設定、どうせ召喚の条件が地球人とでもなっていたのでしょう、のおかげで、その時肉体が…言わばcpで補われた?、肉体がなければ、其れも地球人の、でなければ条件を満たせ無いですからね、というところでしょうか❳
「……一応、辻褄は合うな」
シキの予測にそう言って答えるが
「待てよ…確か最初、種族は地球人じゃ無かったよな」
そうだ、確か座席のディスプレイで確認した時は…
❲神(素体)…ですか?❳
「そうだよっ、其れについてはどうなんだ?❲知りませんよ❳えっ…」
俺の問いに被せてシキが答え
❲だいたい召喚の最初の時点からイレギュラーの固まりなんですから、そんな些細な事、誤差です、誤差
それでも、気になるなら…❳
❲シモン!…『なんスか!』、知ってる者に聞けばいい…❳
そう言って、シキは知ってる奴を呼ぶ
呼ばれて来たシモンに、シキが❲……と、いうことです❳と、シモンに事情を説明すると
『ちょっと待つッスよ…』
そう言って、シモンは虚空を見つめ、少しすると
『…っと、これッスね…え〜
地球人004 エラー発生
魂 99.7% アストラル体 61%
エーテル体 42% 肉体 0.8%
……… 条件を満たす為 余剰神力を使用 魂保護 必要情報取得…成功 再構築 …… 実行』
シモンから告げられる内容に
「シキの予測通りだな、今のところ」
そう呟いている間も、シモンの報告は続く
『004の再構築 完了
身体的条件クリア
予測通り 種族 神(素体)への移行を確認
プラン通り 顕現後 最終処理 実行
これが最後ッスね
顕現確認 最終処理へ移行
メインコンソール及び神(素体)への 認識阻害 付与…成功 続いて種ぞ………創造主からの指令を受諾…全ての作業停止
システムの破棄を受諾……システムの初期化 及び メインシステムの停止に移行 実行 メインシステム停止します
此処までッス、いや〜間一髪ッスね』
俺は、実は結構ぎりぎりだった事に、冷や汗かく
「種族変更されてたら詰んでたな…」
❲まぁ、運…というより悪運のおかげですね、生き延びた四人も不運よりも悪運の方が高いみたいですから、後は直感も高いのが良かったのでしょう❳
運にそんな設定が…と、思うよりも
「とりあえず、これは俺の身体ってのは良いんだが、このまま放置でも問題ねぇの?、いや〜さすがに自分自身を杜撰に扱うのはなぁ」
言わば魂の抜けた、抜け殻の様な物だが、肉体的には生きてる訳だし、処分とか絶対に反対だ、そんな事をしようとした奴は逆に処分してやるが
❲私に任せて下さい!、いえば私達すべてのオリジンなのですから、専用の設備を造り大切に保管、もとい保護しますとも!…出来れば…少し、その、組織といいますか、細胞といいますか、一部といいますかを…もちろん再生可能な範囲ですよ!、頂ければ…❳
「却下!」
❲そんなっ❳
はやりシキはシキだった…




