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「なっ、なんだってんだっ、どうなっ」
ザンッと、コックピットごと胴体を上下に切り裂かれた機体の背後に、紅子の1型改の姿が現れる
「この辺は片付いたかな、次は…んっ」
辺りの敵を殲滅し終えて、次の標的を探そうとしていた紅子の視界に、一条の光が走り、光に沿って複数の閃光が発生する
「ユウちゃんも頑張ってるみたいね…、さてっと、私も負けられないよっ」
さっそく次の標的を決めた紅子の機体は、闇を纏う様にその姿を消した…
二人が順調に敵を減らしていた時、シキ作の試作機に乗る俺は、複数の敵機に追われていた
「ちっ、調子のって突っ込むんじゃ、おわっ!」
死角からの攻撃を、シールドを使う事で何とか防ぐ
❲私❳を利用することによる能力のごり押しで、マニュアルでの機体操作を短時間で頭に叩き込んだのだが、操作自体に慣れてないのと、俺と❲私❳との能力値の差で操作のタイムラグが生じている
それでも普通に動かすぐらいは出来たのと、ロボットに乗っているという状況が俺を調子に乗らせてしまった挙句、敵の集団の中に飛び込んでしまった
「だいぶ慣れて来たけど、まだ、熟練度がたりないってかぁ!」
試作機を振り向かせつつ、後方からの敵機へ向けてビームなライフルを乱射する
それにより2機の敵機の破壊に成功するが、残りの敵が、此方を囲う様に展開しつつ攻撃を加えてくる
「っ直撃!、しょうがねぇ!」
躱しきれずに、攻撃をシールドで受けた事で一瞬動きが止まった隙きに距離を詰められた上、更なる攻撃を受ける
複数の敵からの時間差の無い攻撃に、幾つかの攻撃の直撃を予測した俺は、試作機を丸ごと囲う様に、魔法で障壁を展開する
直後、ビーム系や実弾系の攻撃が、次々と障壁に直撃する
「咄嗟に張ったけど充分みたいだな」
今だ攻撃を受け続けているが、障壁が破られる様子はない
「かぁ〜クソっ!、使わされたかぁ…まぁしゃあないか、いったん状況をリセットしよ」
俺は視界にマップを表示し、試作機のセンサーからの情報とリンクさせる
「本意では無いけど、障壁張ったついでだしな…」
マップに次々と表示される敵機にマーカーを付けると、攻撃用の魔法陣を障壁の外側に展開する
「死ね」
コックピットだけを狙いレーザーの様な魔法が一斉に放たれると、ほぼ一瞬で、俺を囲っていた敵全てが沈黙する
「はぁ、でもだいぶ慣れてきたな、次はもう少し慎重にやるか…」
魔法を使った事に忸怩たる思いもあるが、仕方ないと気持ちを入れ替えていると
❲損傷の少ないものは機体を含め回収してくださいね、私もそろそろ出ますので❳
そうシキから通信が入る、というか
「機体を含めって、マジか…」
❲アイテムボックスに、状態保存が掛かっている死体袋を何枚か入れているので、それでお願いしますね、では…❳
シキは、そう言って通信を切る
「死体袋って…」
アイテムボックスのリストを漁ると確かに入っていた、いつの間に…そう思いながらも
「しゃあねぇな、さっさと回収するかぁ、はよせんと敵が全滅しちまうからな」
遠くで発生する閃光を眺めつつ、俺は回収の為、試作機を操作する
左門との通信を終えたシキは、改装した貨物部に格納された、某公国の象徴たるMAの胴より下部を某海賊貴族の秘匿MAに置き換えて大型のMSサイズにしたような機体に、この機体専用の義体で乗り込んでいた
❲若干、ゴテゴテしていますが、思ったより良い感じですね…さて、ではまず…❳
機体の格納されている部分を、貨物部から隔離するように隔壁が閉じ、アームで固定された機体の下部の隔壁が
左右に開いていく、隔壁が開くのを確認したシキは、アームを操作し機体を船外に降ろしていくと、機体下部の4枚のバインダーのうちの前部2枚を展開する
「さぁ、行きなさいポロン達」
展開されたバインダーから、花粉が散る様に数十cmほどの物体が多数放出される
「フフッ、では、私も行くとしますか」
放出した物体が、想定の動きしている事を確認したシキは、アームから機体を開放すると機体上部のバインダーを展開し、直径5kmほどの小惑星の表面を改造したような、物資の集積地に向けて加速を始めた…
「ふぅ、粗方片づいたか?」
ビームに貫かれた機体が爆散する、相手にしていた最後の敵機体が片づいた事でひと息いれる
あの後、諸々の回収を終えた俺は、再び敵の殲滅に戻っていた
「戦闘の光も見えなくなったし、そうなると後は、拠点の制圧じゃけど…んっ」
試作機のモニターに、小惑星に向う光跡が2本見えた
「あの二人も向かってるって事は、殲滅の確認する手間が省けたな」
機体の出力を上げ、試作機を小惑星に向け移動を始める
「スペックは…やっぱりドラグーンの方が試作機より上だな、でも、素材がなぁ〜無いんだよなぁ〜」
先行する2機の光跡を見ながら
「でも、地球?太陽系?もしかしたらもっと広い範囲かもしれんけど、だと、此方の試作機に軍配が上がるんだろうけど…いや、でも…」
そんな事を考えいるうちに、だいぶ小惑星に近づいていたらしい、そこから小惑星の表面で待機している二人を見つけ合流する
「お疲れ様ですっ、おおっ、実物は更にいい感じです」
紅子は挨拶するなり試作機に見入っている
「おっお疲れ様…です、うっぷ…」
ユウの方は何やら調子が悪そうだ
「なんかあった?」
俺が紅子に問うと
「なかなかエグい事になってますよ…はいっ送りました」
紅子の答えと共に、試作機に小惑星の施設内であろう映像が送られてきた…、
暫くの間その映像を確認する
「なるほど、てっきりまんまバクって感じの物を予想してたけど、バクに掛けてってか…どっちかってとサイバイマンだろこれ…」
『やっ、やめてくれ〜!』『ギィヤァ…』おそらくリアルタイムであろう映像がいまだ流れているが、なるほど、なかなかにグロい
シキの放ったポロン?だか何だかは、ある程度は誘導されているのだろう、特定の場所まで誘導された後は、生物を感知すると目標である生物の付近に付着し、周囲のありとあらゆる物質をもちろん人体であろうが、必要量を巻き込む様に集め、ポロンを核として若干デフォルメされてはいるが、あのストロンガーもどきに変体した
どうやらストロンガーもどきは、変体時の集めた物質の性質を得るらしく、フォルムは一緒なのだが、身体を構成する物質で金属が多ければメタリックに、鉱物が多ければ岩っぽく、そして
「気持ち悪っ!どこぞのGみたいだな」
人体を多く取り込んだ奴は、肉がむき出しで蠢いていて、本来なら外骨格の部分まで肉で構成されている
それに取り込まれた人?はまだ生きているらしく体表にある眼球は、ギョロギョロ動き口から悲鳴をあげている
そんなストロンガーもどきが、次々と敵を襲い始める
たまに敵の攻撃の直撃を受けて爆散する奴もいるが、ベースがシキにも善戦した個体なので、ロボットの使えない敵に勝ち目は無くいたる所で虐殺が起きている
「たっ、たっ、食べてますよ!い〜や〜」
もどき共が、敵の死体を吸収しているのを見て、ユウが悲鳴をあげている、まさにパンデミックな光景が拡がっている
暫くの間そんな光景を観ていると
「あっ、そろそろ終わりそうですよ、でも、あの子?達は、どうなるんだろう、もしかしてそのまま?」
❲そんな訳無いでしょう❳
紅子の疑問にシキが突っ込む
それが引き金になったのかは解らないが、制圧の終わったもどき共が一斉に移動を始める、シキに指示されたであろう位置まで行くと、高熱を発し燃える様に自壊していく、すると核であるポロンと熱で精錬されたであろう素材とおそらく有機物であった灰が残り、残ったポロンはシキの乗る機体へと移動を始めた
❲使い捨てにするには勿体ない位コスト掛かってますからね、資源も回収できて再使用もでき、しかも脳波でコントロールまで出来る…❳
「…まっ、まぁ、とりあえずさっさと拠点化しようか」
「うっぷ、そ、そうしましょう…」
「ははっ…賛成」
❲……そうですね❳
長くなりそうなシキの自画自賛を含んだ説明を遮り、俺たちは無人になった施設に向かうのだった




