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「・・・え〜❲何を言ってやがるんですかこの小娘は、なんですか?あの程度の隠蔽を見破ったぐらいで有能アピールですか?、おこがましいにも程がありますねっ、だいたい貴方なんか私達には❳…採用っ!」
いきなり何を言い出すのかと、紅子に訳を聞こうとして、またしても何時もと違うシキの様子に、俺はどういう理由だとしても断るつもりの予定を覆し、ついそんな事を言ってしまった
❲…本気ですかっ!❳
俺の言葉に、信じられないとばかりに、俺に向けてそんな事をを言うシキを見て、この女がいればこのように悔しがるシキの様子をまた見れる、そう思うと其れだけで紅子の要求を呑んでもいい気がしてくる
俺は、シキの方を見てニヤリ笑い
「別にいいんじゃないかぁ、とりあえずこの船をどうにかするまでお前の助手って事でいいだろ、どうせ地球に帰すか、何処か適当な星に降ろすまで、ある程度の面倒は見るつもりだったんだから」
その時、この娘が地球に帰るにしろ帰らないにしろ、俺達が無理なら最終的には、無理矢理にでも辞めさせればいいだけだろ
❲そういう事ならば、貴方の助手でいいのでは?、私に助手など必要ありますせんから❳
「なに言ってんの、それこそ船を何とかするのは基本的にシキがすんだから、お前の方に人手があった方がいいだろ、俺なんか方針決めたらお前に任せたら、後はこの船をぶらぶら探索するぐらいだし」
俺は、シキの反論にそう返し、いまだ懇願する様な姿勢の紅子をチラリと見やり
「それに、そのほうがお前の趣味も捗るんじゃないか?」
そうシキに言う
こいつが趣味でいろいろ作っている物には、運用試験が出来ずに、開発が滞っている物がそこそこ有るらしいのは、其れを面倒だからと断っている俺は知っている、それをあの紅子に代用させれば、シキの趣味は捗り、俺は面倒なテスターを回避できる
❲……いいでしょう、今回は私が折れましょう、仕方なくですが…❳
シキの中で趣味が上回ったのだろう、小声で俺に言うと、紅子に向って
❲いいでしょう、貴方を私の雑用兼、モルモット…もとい助手として採用しましょう❳
そんな事を言ったシキに対して、紅子は
「ホントですかっ!、しゃッ!」
と、満面の笑みで喜び、男の様に拳を引きガッツポーズをする、モルモットって言われたのに…
その様子にシキは「えっえぇ…」と肯定しつつ引いていたが、「私はシキです…」等とお互い自己紹介をする
「それで何で俺達に、その、仕えようなんて発想になったわけ?」
自己紹介が終わるのを待って、紅子に気になっていた動機について聞いてみると
一言で言うなら、彼女はオタクだった、しかも行動力のあるだ
父親と兄の影響らしいが、とにかく男性向けのアニメや漫画やゲームなどを、物心がつく前から見たりやったりしていたら、いつの間にかがっつり嵌っていたらしい
そのうち拗らせた彼女は、誰しもが通る様に、自分もあんな風やこんな風になりたいと、いろいろやり始める
普通の人は、遅かれ早かれいつかは現実を知り、諦めるのだが、幸か不幸か、彼女はそのスペックが示す通り、他の人が出来ないことでも苦なく出来てしまった事で、更に拗らせる結果になり、そのまま今に至るらしい
「なので、あのロボットをファンネルが撃ち落とすのを観てからは、居ても立っても居られないって感じだったんです!」
そう興奮しながら話す紅子は
「それにっ、お二人を見たときに絶対に同類だと思ったんです!シキさんなんか、そのままフィギュアで欲しいくらいです!」
そう言われ、なんか恥ずかしくなってきた俺と違い、シキは
❲なかなか見どころがありますね❳
そう言いながら、四本の苦無の様な物と、直径2ミリ位の黒い球体のピアスとイヤリングを、収納魔法で取り出すあれは随分前にシキが、試作品としてテストしてくれと言ってきた奴だ、その時は「ピアスとかイヤリングとか嫌いだから無理」と断ったが
「採用に際して私からの支給品です、受け取りなさい」
「いいんですか?有難うございます!」と紅子は、シキの説明を受けながら、嬉しそうに受け取っている
所謂、遠隔操作できる武器で、ピアスかイヤリングから脳波と魔力を届ける事で、苦無を自由に操る事ができる
シキが言うには、ピアスの方が脳波の伝達速度と魔力の供給の効率がイヤリングよりも少し高いらしい
どうやら彼女はピアスの方を選んだようだ「ンッ」と何の躊躇もなく耳にピアスを刺している
そんな彼女に、もう一つ聞き忘れていた事を聞く
「ところで、後の一人は?」
自身とピアスのリンクが済んだのか、苦無を構えていた紅子は、少し名残惜しそうにしつつも、姿勢を正し
「ユウちゃんですか?、置いてきました」
と簡潔に答えると、もういいですかとばかりに、持っている苦無をカチャカチャと動かし感触を確かめている
まぁ、新しい装備を早く試したいのは分かるが…
「うん、もう少し詳しく言ってくんない?」
あまりにも簡潔な答えに、状況がまったく掴め無い
「詳しくてすか…、そう言っても私もあの後、会える事に嬉しくてそわそわしてて、あと、十分を数えながらもしもの為に此処の位置を予測してぇ、それで十分たっても来ないし、直ぐに会いに行かないと駄目だって直感的に思ったんで……一応、ユウちゃんもと思ったけど、なんか凄い疑ってる感じだったから、置いて来ちゃいました」
「以上ですっ、もういいですよねっ?」と言うと紅子は「う〜ん…こうかな?」と苦無を一本ずつ自分の周りに浮かべていく
・・いかんいかん、シキを苛つかせる為に雇ったのに、俺が苛ついたら本末転倒だろっと、煙草を取り出し一服して心を落ち着ける
ということは、何にせよユウと言う女と一度は会わないといけないか……面倒だな
俺は、楽しそうにこの短時間で四本の苦無を、同時にコントロールしてみせ、そのまま今度は、自分の格闘っぽい動きに合わせて苦無を動かし始める紅子を見て決める
俺は、紅子が操る苦無の位置を把握すると、魔力で強引に操作権を奪うと、そのまま苦無を紅子の首すじを囲う様にして止める
「ッ!」いきなりの事で動けずにいる紅子に
「お愉しみのところ悪いが、紅子君、最初の任務だ、ユウという女と合流して、もう一度、今度は多少詳しく説明し、彼女の意志を確認して来てくれ給えっ、尚、君に拒否権は無いのであしからず」
多少、芝居がかった物言いで俺は告げると、さすがに不味いと思ったのか
「すっ、すいません!つい夢中に…」と謝罪し
「あの〜他は大丈夫なんですがぁ、説明っていうのは…」
そう聞いてくるので、「あぁ」と年齢の事とか、地球の日時とか、五郎にした説明より詳しく言い、あとは俺達の事は簡単に説明した、紅子は
「なるほど、それでいきなり無重力でも…」とか言い、納得したあと
「だいたい解りました、あのぉ〜それでこれはぁ〜」
今だ首すじに当てられたままの苦無を目でアピールするので
「あぁ」と必要ないが様式美として、指をパチンッと鳴らし、同時に奪っていた操作権を放棄する、すると首すじから苦無が離れ、落下が始まる、が
「ほえ〜」と目を輝かせて、呆けている割には直ぐに苦無を掌握して、落下を止めて見せて、フフンとドヤる紅子に
大丈夫かコイツ?目的おぼえてるよな?と、思いながらも「早く行けよ…」としか言えなかった




