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「よっと」
コンテナの様な物が、所狭しと立ち並ぶ場所の一角に、黒髪ロングヘアを後で束ねた二十代の女性が、そう言って軽やかに着地する
「あっユウちゃん、お帰り〜」
そう声を掛けたのは、ユウと呼ばれた女性の少し前で、胡座の状態で逆さに宙に浮き、瞑想らしき事をしていた、クラシックなメイド服を着た女性だった
「紅子さん、何してるんですか?」
そう尋ねながらユウは、このひと月ほど前に、偶然知り合った同郷の女性を観る、若干低めの身長に、少し栗毛かかったくせっ毛の髪(今はメドューサの様になっているが)、クリっとした大きめな目が印象的な童顔、そして自分とは比べ物にならない大きな胸部装甲、十代後半に見えるその容姿で実は自分より2歳も年上と聞いた時は、思わずふざけるなと言ってしまった
「あ〜、身体の各部の確認と、後は気と、魔力の操作の鍛練ですね〜」
それに、こんな事を言うこの紅子という女性は、自分よりも圧倒的に強かったりもする
「はぁ〜、そうですか、あと逆さですよっ」
「へっ、あ〜」そう言われて自分の状態に気づいたのか、「ふっ」と前に回り音も無く着地する、あと何故か髪と服もまるで重力があるかの様にスッと収まった
「それにしても最初の頃の様に喋ってくれて良いんだよ?ユウちゃん」
「いやっそれは、最初はまさか年上だとは思わなくて、でも先輩と知ったからには失礼にあたりますから」
夕はずっとやっていた部活のせいで若干、体育会系よりだったので年上には自然と敬語になってしまう、あと敬語で話してないと、周りから見て絶対に自分の方が紅子より年上に見られると思った事も、喋り方を変えない理由でもある
「もうっ、まぁいいよ、それでどうだったの?」
今回は諦めます!、とでも言うように紅子は言い、話題を変える
「えっと、やはりというか、外に出られそうな場所やドアは見つかりませんね、はぁ〜」
二人がこの貨物室の様な場所に囚われて?から、およそひと月の時間が流れていた、その間、二人はこの空間からどうにかして抜け出そうといろいろ試行錯誤していた
「やっぱりかぁ」と言いながら紅子は「食料もそうだけど、トイレとシャワーみたいなのが在って助かったよ〜、メイドが不潔とか有りえないからね」とこのひと月を振り返っていた
「やっぱり、あの搬入用かなんかの大きなドアを何とかするしかないんじゃないですか?」
紅子がこれまでの事を、思い返していると、外に出る方法を考えていると勘違いしたのか、夕が自分の考えを述べる
「えっ、あ〜、うんっ、そうかもねぇ〜、ははっ…」
まったく違う事を考えていた紅子は、適当に相づちを打って誤魔化すも
「紅子さ〜ん」
ジト目でこちらを見る夕に、まったく誤魔化せてない事を察した紅子は、さて、どう言い訳するかと思っていると
「しっ」と何かを察した紅子は、素早い動きで夕の口を塞ぐと、耳をすます
“ガン、ガン”と、遠くから物がぶつかる音響いてくる、紅子は瞬時にその音が、搬入口近くの自分達が居る場所とは反対側、おそらく数百メートルは離れている場所からだと判断する
「ん〜っ、ん〜」
どうするかと、考えている紅子に、そう苦しそうに夕が藻掻く、ユウの口を塞いだままだった事に気づいた紅子は、慌てて手を離す
夕は、「はぁ〜」助かったと息を吸い、真剣な雰囲気で
「何の音ですかね」
と息を潜めて紅子に問う
「さぁ、壁かコンテナを殴りつけた様な音に感じたけど…ユウ、念の為、気配は消しておいて」
雰囲気の変わった紅子に、夕は少しビビリつつも
「了解です」
と返し、気配を消す為に意識を集中する、一方、紅子は
「さてさて、何が起こるのかなぁ、ちょっと楽しみ」
と口もとに笑みを浮かべていた…
「んっ、着いたか?…ってか暗っ!」
転送そうそう暗闇とは…
「そうか!これがあの、石の中に❲何言ってるんですか❳…」
そう言ってシキは、俺のセリフを遮ると視界に干渉し暗視モードに切り替える
「クソっ邪魔しやがって…」
思ったより言い切れ無かった事に、未練を感じていると
❲どうやらコンテナか何かの中みたいですね…ふむ、重力は無し、大気は生命活動に支障が無い程度には満ちてますね❳
視界の端に、シキが解析した大気の各数値が表示される、気持ちを切り替え、数値的に問題無さそうなので、俺は義体を操作し確認の為カ·インの兜を収納する
「ふぅ、大丈夫そうだな、しかし、鉱石かこれ」
暗視モードで確認出来る様になった、コンテナの中の左右にワイヤーか何かで固定された、何らかの鉱石をコンコンと叩いてみる
❲おそらくアダマンタイトの鉱石ですね、召喚に結構な魔力を要求されますから、これだけあれば…❳
そう言いつつシキは、❲では❳とコンテナ内の鉱石を全て収納すると
❲まぁ、出るのに邪魔ですからね、行き掛けの駄賃です、さぁ出ましょう❳
まぁいいかと、シキの言い分を無視し
「アレを使うか…」どうやら内側からはロックを開けられない様なので、作ったけど趣味じゃない、こんな時にでも無理矢理にでもないと使わないだろう装備をアイテムボックスから取り出すと、右腕の篭手の外側に装着する
「こう流れの中で、使えない武器ってあんまり好きじゃ無いんだよなぁ」
そう言って右腕につけた其の射出口を、コンテナのドアに押し付けると其れに魔力を通す
キィーンと甲高い音がして、其の装備の筒状の部分に、何重もの魔法陣が展開すると準備が整う
「貫通から衝撃にモード切り替えっと、じゃあ射出」
・・ドンッ、少しのタイムラグの後、衝撃がまずコンテナのドアに当たる、しかし威力が強すぎたのだろう、本来ならドアの周囲で拡散が終わるはずの衝撃が、バキャ、ベキィとコンテナ全体に伝わり弾け飛ぶ
ガンッ、ガンッとコンテナの残骸が他のコンテナにぶつかる音を聞きながら、武器を放った状態のままの俺は
「ハハッ以外に柔らかいコンテナなのか…アダマンタイトなんか入ってるから、てっきり物凄く硬いのかと…っ」
誰に対してか解らない言い訳をしていると、視界のマップに赤いマーカーが複数現れたので、手頃なコンテナの影へ移動し隠密モードを起動する
「へ〜、ああゆう感じのロボなのか」
暫く隠れて様子を伺っていると、胴体に四本の長いマニピュレーターを備えた十体ほどのロボが飛んて来た、そのうち二体は武器らしき物を各腕に装備している
「さてと、そろそろ動き…」
そこまで言ったときに、シキの子機によるオールレンジ攻撃が、十体のロボに一斉に襲いかかる、細いレーザーの様な攻撃に続き、魔力で生成した刃を展開した子機が、辛うじてレーザーを防いだ武器持ちの二体に襲いかかる
子機も幾らかロボからの反撃を食らうが、危なげ無く無力化し機能停止に追い込んだ
❲わざと攻撃を受けてみましたが、アレなら魔力で強化してない鎧でも充分受け切れますね❳
完全に出遅れた俺は、❲大した事ないですね❳と言いながら、嬉々としてロボを回収しているシキに
「新手が来たら面倒だから、さっさと移動するか」
と言いつつ、このコンテナなどが並んでいる空間を見渡す
「しかし宇宙船って事だから解ってたつもりだけど、広いな…」
実際、この中だけしか見てなかったら、とても此処が船内とは思えないだろうと、考えていると
❲回収完了しました、ついでに子機で調べた結果、半径100mの範囲に生体反応はありません、なので二人を探しに移動するならあちら側ですね❳
シキは、俺達が今居る場所とは反対側に小さく見える、ゲートの様なものを見ながらそう言った
「了解、んじゃ、ちゃちゃっと行きますか」
シキの言に、気持ちを入れ替え、二人を探す為に移動を始めた




