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「なんかさぁ町が騒がしくないか」
町に近づくにつれ、遠くから破壊音が聞こえだし、更に近づくと薄っすら悲鳴も混ざりだした
俺は辺りを見回し、腰をかけるのに良さそうな石に向い座ると煙草を取り出し一服する
「ふぅ、今から町に入ると面倒くさそうだから、今日はここで待機ってことで」
その間も町からいろいろな音が聞こえてくる
❲まぁそれで良いんじゃないですか❳
子機で町の様子を伺っているはずのシキも賛同する
「それで?」次の煙草に火を点けながらシキに問う
❲あぁ、映像に出しますね❳と俺の視界に町の中の様子が映し出される
映し出された映像の中央に、五郎氏だと思われる小柄な亜人風な人物が10人ほどの集団と対峙しているのが確認できる
「顔色悪っ、でも思ったより人っぽいな、もう一回進化でもしたら顔色も良くなるんかねぇ」
なんて言ってると五郎氏が動く
「うぇ今っ、消えたよな、一瞬」
五郎氏が構えた瞬間、確かに一瞬消え、次の瞬間には対峙するむさい男達の中に現れ、回し蹴りを放つと男達の上半身と下半身はお別れする
❲上手い使い方ですね❳
映像の中では今だ五郎氏の無双が続いている
「解るのか、流石シキ、で?」
多分やろうと思えば俺も魔力のゴリ押しでやれるだろうが、どうも五郎氏のあれは、それとは違う様だ
❲おそらくですが、あの五郎氏は気と、魔気とでもいいますか気と魔力を混ぜたものの、少なくとも2つ以上の力を纏って使い分けている様です❳
シキがそう言うと映像に映る五郎氏に変化が現れる、シキが解りやすく纏っているであろう力をオーラの様に可視化した
❲濃度というか密度の薄いドームの様に、自身を中心に展開している物と、濃く五郎氏自身が纏っている物が魔気で、視えませんが体内には気を巡らせてる筈です❳
「ほおほお、こんな感じか?」
試しに自分でも真似てみるが
「結構ムズいな、これ」
下げているとはいえ結構なステの俺でも制御に気を取られるのに、相手が弱いとはいえこの状態で戦闘できる五郎氏に驚愕する
❲神力を行使する事で、スキルが無くても同等以上の事が出来る様に、単純に魔力や気だけよりも魔気の方が、使用者の念を現象化する力が強い事に加え、2種類の魔気を上手く使う事で、能力的に不可能な事まで可能にしてますね、あの瞬間移動みたいに❳
❲なかなかやりますね❳とシキは感心している
映像の五郎氏であろう亜人は、殲滅が終わり移動を始めた
「まぁ、俺は戦うのが目的じゃ無ぇから、待機で」
そう言いながら映像を観ながら煙草をふかした
ドンッと町を囲う壁の一部が弾ける音で、作業を止める
❲やっと出てきましたよ❳シキが報告してくる
追加で作った、異世界でも違和感ない煙草を懐に収め、町の方を観ると、壊れた壁から結構な荷物を持った五郎氏が出てくる所だった
「もう少し町から離れた場所で接触しよう」
誰かに見られでもしたら面倒なので、俺たちは五郎氏を先回りするように移動する
移動先で待っていると
「先程から観ていた様だが、私に何か用かね」
そう言いながら五郎氏がやって来たので、俺は立ち上がり
「えぇと、始めまして左門と言います、貴方は五郎さんで間違いないですか」
なるべく丁寧に問いかける
「ふむ、此方に来てからは、誰にも名乗った事は無いはずなのだが……そういう事か」
と1人で何かに納得した五郎氏は、荷物を置き構えをとる
「いやいや、なんで構えるのよ、だから五郎さんであってます?」
いきなり構えとった五郎氏に困惑しつつ再度問いかけると、五郎氏の姿が消える
❲後ですよ❳、五郎氏が消える瞬間きたシキの忠告と同時に背中側に障壁を展開する
「なんとぉぉ」
ガンッと障壁が背後からの攻撃を防いだと思ったら、何故か目の前にまさに正拳を繰り出した状態の五郎氏が現れ、胸部を突かれ吹き飛ぶ
殴られる直前、なんとか障壁を割り込ませたが、僅かな拮抗のすえ破られる、しかしその僅かな時間で、なんとか義体の動力を魔力バッテリーから自身の魔力に切り替える事に成功する
「くっ、おぉぉ」吹き飛びながらも、突かれた場所から体内に侵食してくる攻撃に対し、自身の魔力を使用する事で制限の無くなった魔力を使い、攻撃で破壊された箇所を魔力のごり押しで上書きするように修復していく
さすがの修復スピードに、五郎氏の攻撃も体内に浸透すること叶わず霧散する
10mほど飛ばされたが、体制を整え着地する
「焦ったぁ、さっきのは何よ、ってか話きけよ」
此方に対し構えをとっている五郎氏を視界に収めたまま一人つぶやく
五郎氏の真似をするわけではないが、此方も魔力を自身を中心に2、3mの範囲に展開すると、五郎氏が此方に突っ込んで来た
彼我の距離が5mほどになった時、頭上の空間に何かが干渉しようとした感覚が魔力をとうして伝わってきたが、どうやら此方の制御を上回れず発動に失敗したみたいだ
「クッ、ならばっ」と、一瞬だが驚愕した表情を浮かべた五郎氏は、素早く此方との間合いを詰めると、上段に回し蹴りを放って来る、一応、新たに全身に障壁を展開しているが、腕を上げ蹴りに対し防御する
ドンッと蹴りによる衝撃が発生するが、相手の攻撃を理解した上で展開している障壁が破壊される訳がなく、浸透する衝撃波も、ダメージを負う端から修復していく此方の回復力を上回ることもなく意味をなさないのだが
「なんか、中段にも似たような攻撃受けたんじゃけどっ」
と、びっくりしていると
「ハァァァ!」
五郎氏による連続攻撃が始まる、やはり見えている攻撃とは別の攻撃も繰り出している様で、からくりの気になった俺は、障壁を更に強固にし受けに徹して観察することにする
すると徐々に五郎氏の体が攻撃体制の途中からぶれ始め、1つだった同時攻撃が2つ3つと増え始める
「なんじゃっそりゃ!」
五郎氏が回し蹴りの途中の体制になると、そこから膝から先が分裂するようにさまざまな軌道の回し蹴りを放ってくる、途中までの軌道で防御していた俺は、その他の軌道でやってくる蹴りをもろに受ける、心做しか残像?による攻撃の威力も上がっている様だ
「化物か…とでも言えばいいのか?」
❲質量を持った残像では無いですよ❳と、シキから突っ込みが入る
❲体内で練り上げた魔気による概念攻撃とでもいうものです❳
シキの解説中にも五郎氏の攻撃は続いていて、物凄いスピードで技の熟練度を上げていく
❲おそらく同じ姿勢というか状態から、自身が行使可能な攻撃を、魔気によって同時に発生させているのに加え、外から干渉を受けないよう体内の魔気を使用する工夫をしています、素晴らしいです、しかし技自体は数は増えてますが常識の範疇に…❳
先ほどから、五郎氏は何かを確かめる様に、概念攻撃を併用した左右の正拳突きを放っていたが、おもむろに距離を取ると今度は突きと共にその現象を此方に飛ばしだすと、ニヤリと笑い、一度に見える突きで複数の突きを放ったりと、いろいろ試し始めた
その間も俺は「いや、話を聞けよっ」等と問いかけていたのだが、技に夢中の五郎氏には聞こえ無いようだった
そのうち納得したのか、一旦攻撃をやめ深呼吸すると腰を深く落し、「こんな感じか?」と呟くと「ムゥゥゥン!」と魔気を練りながら某ライダー1号の変身の様に手を動かし、最終的に左の掌を大きく上に此方に向け右拳を腰に引く構えを取る
「なんかいろいろ微妙に間違ってる気がするけど、これはやはりあれだろ?、なら…ふふっ」
うろ覚えながら、既視感のある動作と構えから、繰り出す技にあたりをつけた俺は、ならばと迎え撃つ準備をする
「ゆくぞ!」と五郎氏が技を放つ
「おぉぉ…私流ぅ流星ぇ…けぇぇぇん!」
しかして放たれた其れは
「彗星拳じゃねぇか!、俺流ボルトぉぉ!」
突っ込みと共に放たれた俺のなんちゃってライトニング×ルトが、流星とは名ばかりの彗星拳を向い衝突する
「なっ!しまっ」
ズンッと拮抗もせず彗星拳を霧散させたなんちゃってボルトは、そのまま五郎氏に直撃する
「ぎぃぃぃ」
命中した衝撃と、同時に発生した電撃によってうつ伏せに倒れる五郎氏に
「やばっ殺しちゃった?」
俺は慌てて駆け寄ると様子を確認すると、プスップスッと所々焦げてはいるが「ギッ」とか「何故だ」とか言ってるので、とりあえず命に別条はないかとほっとし
「獅子座の俺の方が、技に対する思い入れが強いのさ」
そう言うと「そうか…」と言い五郎氏は気を失った




