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リーダーの少年の魔力で強化され、更につぎ込まれた魔力に込められた思念により、技とも魔法とも言えない、実体を持った光りの斬撃を
五郎は己の拳に、生体エネルギーとも言える気と共に、己の信念を乗せた正拳をぶつける
技と技がぶつかった瞬間、カッと閃光が発生すると僅かな拮抗が生まれる、その拮抗の中、五郎はリーダーの少年の様子を伺う
「おぉぉ」と、力むばかりで更に魔力をつぎ込むとか、技を変化させるとかそういう様子が無いことに、そして技に集中しすぎで此方を伺う事すらしてない事に、若干がっかりし、勝負を終わらせる事にする
五郎は確かに渾身の正拳を放ったが、其れは只放っただけで打ち抜いてはいなかった、そして五郎は勝負を終わらせる為、正拳突きという技を完成させる
「そんなっ馬鹿なぁぁ…」「きゃああ」「うわぁぁ」
止められたっ!と相手を押しきる為に更に剣を持つ手に力をいれたら、魔力で形成された刀身ごと自らの剣も折られ、スキルのエネルギーがドンッと爆発するように開放され、その衝撃によって技を放った本人と距離の近かった2人が吹き飛ぶ
爆発による土煙の中、闘いの興奮から覚めた五郎は気による肉体の強化を止め循環させるだけに留めると、この闘いの中で観察したスキルや魔法を参考に、今までいまいち使い方の解らなかった魔力の仕様を確かめる方向にシフトすることにする
まずは、魔力を右掌に集めると、少年たちとの闘いの最中に後から不意打ちしようと近付いていたが、爆発で足を止めてしまった集団に向う
土煙の中から急に飛び出してきた五郎に、反応出来ない集団の先頭の男に飛びかかり右掌で頭を掴み地面に仰向けに叩きつける
「爆ぜろっ」叩き付けると同時に、自身が昔みた映画でベトナム帰りの男が使う爆弾付きの弓矢でのシーンの爆発のイメージを魔力に乗せ開放する
ドォーンとすさまじい爆発が右掌を中心に起きる
「うおっ、熱っ」と五郎も数m程飛ばされるがダメージらしいダメージは右掌が少し熱かっぐらいで受けなかった
「うぅぅ…」「いてよ」「おげぇぇ」
爆発が収まったあとには、爆発により上半身が無くなった男を中心に200度ほどの範囲で数mに渡り地面がえぐれ、何人かは辛うじて息があるが五体無事な者はおらず、生き残りも死ぬのは時間の問題だろう
「概ね想像どうりか、しかし気と比べると恐ろしく燃費が悪いな」
そんな状況を作り出した当人は魔力の仕様の検証に夢中になっていた
再度、今度は左拳に先ほどより少ない魔力を纏わせ腰を落とし地面に向って斜めに突きを放つ「いまっ」突きが伸び切る前に魔力に発動を促す、ズンッと拳が地面に触れてないにも関わらず、拳の延長線上に50cmほどの穴が斜めに地面に穿たれる
今度は右足の裏に更に少ない魔力を纏わせ、イメージを固め踏み込みと同時に発動させると幅1m厚さ30cm高さが2mの石の壁が、踏み込みの50cm先に地面からせり上がる様に出来上がる
「なるほど、起こす事象が複雑なほど消費する魔力も増えると、そして現場にある物を利用すれば少ない魔力で発動できるが、利用する物の物理法則に縛られると、逆に魔力だけで発動させる場合はかなり自由度が高い…」
等と五郎が魔力について考えこんでいた時、最初の爆発の衝撃に耐え、その後の爆発音に身構え、緊張しつつも状況を把握しようと成り行きを見守っていた者たちは、土煙がはれた事で目にした現状に唖然するが
「てっ撤退、撤退だ!」「早くっ逃げろぉ」など各々に叫びながらも動ける者から町の方向に逃げ出す、五郎にもその声は聞こえていたが、戦意の無い者との闘いに興味の無い彼は、それよりも魔力だと無視する
「ふぅ、とりあえずはこのくらいで納得するか」
小1時間ほど経って、ある程度の魔力の仕様を理解した五郎は、当初の目的を思い出し町に向う事にするが
「その前に一応礼儀として」辺りを見廻し自らが殺めた者の死体を確認し、魔力の検証の結果できた穴に死体を入れていく、その時「必要無いとは思うが」と貨幣らしき物が入った小袋も回収すると魔法で穴を埋め、石碑もどきを作り、手を合わせる
五郎かその時思ったのは、哀悼でも冥福でも無く、己の糧になってくれた事へ感謝だった
残った荷物類を適当にまとめ、中身を空にした手頃なバッグに小袋を詰め質の良さそうな剣と槍を一本ずつ持ち「さて、行くか」と町に向け出発した
結果、五郎は盛大にやらかした、壁の一部を吹き飛ばし町に入ると、何らかの店らしき建物を求めて適当に移動する
逃げ帰った傭兵から報告でもあったのか、何度か少数の集団から襲撃されるが、遊ぶつもりのない彼は全ての相手を一撃で仕留めていく、そのうち遠距離からの魔法や弓矢による襲撃がメインになって来ると、そのへんの家の中のから此方を伺っていた傭兵らしき気配の者を、壁ごと破壊し引きずり出し、片足首を持って引きずって移動を始める
五郎の意図の読めない傭兵は、仲間を何とか助けようと魔法と矢で五郎を攻撃するが、五郎は其れを引きずっていた傭兵を盾にする事で防ぐ
五郎の意図に気付いた傭兵たちは、なかなか手が出せなくなる
そのうち防具屋と服屋をたした様な店を見つけた五郎は、鍵の掛かったドアを破壊しなかに入る、店主は逃げ出したのだろう店内には誰も居なかった
これ幸いと耐久性が高そうな物に着替え、大きめのバックパックの様な物に予備の着替えをつめ、カウンターに貨幣の入った小袋を幾つか置き次の店を探しに行く
そんな感じの事を繰り返しながらも、途中、領主なのか騎士であろう集団を引き連れた集団の半数をひき肉に変えた辺りから、攻撃が無くなった事で楽に物資の補給ができたと、町から出る為に一番近い壁に向い歩いていると、どうやら歓楽街っぽい場所に着いた
「そういえば酒類はまだだったな」ちらりと左右の建物を見ると窓から恐る恐る此方を伺うそういう商売を行なうであろう女が見える
「むう、何だこれは…」そういう商売女と認識した瞬間から内から衝動が沸き起こる、混乱する五郎はふと「これは…種族的な」そう自然と認識出来てしまった
「ならば仕方なしっ」
納得した五郎は、その建物に堂々と入っていった
暫く後、やりて婆ぁに見送られながら五郎は来た時と同様に壁の一部を破壊し町から出ていった
「あれからおよそ2ヶ月か、そろそろ物資も心許なくなってきたな」
五郎は近々また町に行こう決めた
その頃俺は、赤道を抜け北半球に入ってからもひたすら北上を続けていた




