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とりあえずやり過ごす事に決めた五郎は、それでも万が一の為、体内で気を練り身体を強化する
準備が終わりだいぶ距離が近づいた集団(何故か全員が武器を構え警戒している)に話しかける
「どうも『魔物だぁ!』あの…」
ヒュン、ヒュンとこちらの言葉の途中で、幾人かいる弓持ちの傭兵からいきなり断続的に矢が放たれる「うわっ」とか「ひえっ」など言いながら今だに穏便に済ませようと大袈裟に矢を避けながらなおも話かける
「人がっ、挨拶してるのにっ、いきなりなにをするのですか!」
矢を必死に躱している振りをしながら、五郎は会話を試みるが、剣や斧などの近接武器を持った傭兵十数人が距離を詰めてき、まず女であろう斥候風の者が投擲用のナイフを五郎に向けスキルを用いて投げる、今だスキルの存在を知らない五郎は、その以外な勢いのナイフを思わず掴んでしまう
「「あっ」」と、斥候と五郎は同時に声を出す、まさか掴まれるとは思わなかった斥候と、ついナイフに細工があるのではと興味本位でうっかり掴んでしまった五郎、これで一般人と言い張るのは無理かと思っていると
そこに「そんな色の肌の人間が居るわけねぇだろがぁ!」と2m超のゴツい男が両手持ちの戦斧を振り下ろしてくる
その時にはすでに五郎は鋭く踏み込んでおり、間合いを詰めると溝尾辺りに右拳を添える、戦斧の振り下ろしよりも速く右拳を撃ち抜く、ドッという音の後、男の戦斧が手から抜け落ち、前のめりに倒れぴくりとも動かなくなる
戦闘になった事で抑えていた怒りや恨みがこみ上げて来たことに加えて、先ほどの言葉で人として町入る事は不可能だろう判断した五郎は、「でわ、魔物らしく行くか」と動き出す
戦斧の男が倒れた事で動きが止まっていた集団に対し、上半身をゆっくり左右に揺らしながら近づく五郎は体内の気を更に練り上げその密度を増す
「おいっ!」と、集団の中でもいち早く我に帰った者の声に、五郎から一番近くにいた男は、すでに目の前にまで来ていた五郎に対し「こっこの!」と、持っていた片手剣を振り上げるが
「遅いっ」と、五郎は踏み込むと男の心臓辺りに掌打を打ち込む「ぐぅ」という男の呻き声と同時に更に掌を押し込み「ハッ」と気を放つ「ぅぼあぁ」と口から血を吐きながら後方にいた数人を巻き込み、くの字に吹き飛ぶ
五郎は、男が吹き飛ぶ事で出来たスペースから、20mほど後方の弓持ちがいる集団に向け走りだす
「曲射二式ダブル!」「パァワァァショットォォ!」「影矢」
準備していたのだろう、五郎の姿が現れたと同時にスキルを用いた弓矢の攻撃が襲う
長弓から放たれた矢がゴォと質量に反した風切り音をさせながら迫る、五郎は足を止めることなく左足の踏み込みから胴体を狙った矢の鏃の側面に左の掌を添えほんの少し軌道を後の集団に向けて変え自身は半身なって矢を躱す
体を正面に向け更に踏み出そうとしたとき、頭を狙った矢が来たので左に頭を傾け躱そうとした時に、躱そうとしていた矢の後に突然心臓付近を狙った矢が現れたので、咄嗟に踏み出そうとしていた右足を左足の後に引く事で、体を回転させ2本の矢を避ける
回転する視界の中に更に左右から飛んで来る矢を確認し「やるなっ」と左右の手でそれぞれ回転に巻込む様に矢を掴むと、そのまま回転の力を上乗せして前後の集団に向け矢を投げ返す「アッ…」「カヘッ」「ぐあぁ」投げ返した2本の矢と最初の矢がそれぞれ別の目標の目、喉、肩に命中する
「良いぞっ!やはり魔物と戦うのとは違うな」
体制を整え気の循環を始める、気が循環する事で肉体以外の視覚、聴覚などの五感や反射神経など知覚能力が飛躍的に上昇する
準備の整った五郎は「いくぞ」と、笑みを浮かべ走りだす
「くらえっ!ロックジャベリン」と、今度はベテランらしい見た目の軽装の傭兵が、肩上に生成された長さ2m位で太さが20cm位の尖端が尖った岩の塊を、投擲するように放ってくる
「魔法というやつか?」10m以下の近距離で放たれたにしてはスピードが異様に速い其れに対して「一応用心して」と、踏み込みで魔法の射線からずれ後ろ回し蹴りを繰り出す、バカンッという音と共に踵の当たった部分は粉砕され、残った後部はボトッと地面に落ちる
「嘘だろ…」と魔法を放ったベテラン含む全員の動きが止まる
「これなら甲や拳でも平気そうだな」
踵に当たった感触からそう判断した五郎は更に距離を詰める
「この化物が、シールドバァッシュゥゥ!」
集団に対して乱戦に持ち込めそうな距離まであと少しという所で、大きめの盾を構えた全身鎧の男が、横合から突進してくる、それに対し五郎は一瞬の急制動から男を中心に回転しつつ回り込む事でまるですりねける様に盾を躱す
その時、強化された知覚で、男が盾を中心に魔力を纏っているのを確認した五郎は、「技を叫ぶと強化されるのか?」と、回り込んだ男に向け踏み込むと
「通×拳っ」
技を叫びつつ掌打を背中に放つ
掌打を受けた男は「ぐっ」と声を発し倒れると動かなくなる
技の感触から別段強化されたようには感じられ無いことから、もう少し観察して見るかと
「おい、お前たち私に技を打ってこい」と手でもこいこいと挑発する
「化物だぁ」「に、逃げろぉ!」その魔物の異様さに荷運びの者や一部の傭兵は、町の方に逃げ出すが戦意の無い者には興味の無いとばかりに無視し、武器を構えたまま動けずにいる者たちに「さあ!」と、両手を広げ更に挑発すると、集団から五郎に向け何人かが出てくる
おそらくパーティーであろうまだ若い男女5人の中心にいる金髪碧眼のリーダーらしき少年が
「みっ皆やるぞっ」と着ていた外套を脱ぎ捨て、半身で盾を構え剣を抜く
それに続くように残りの4人も外套を取りおのおの武器を構え、リーダーの少年からの指示を聞いている
五郎は、指示を聞きながらも一応こちらを意識している少年たちを観ながら
『今のやり取りの時間で全員を殺れるが、やはり子供を殺すのは忍びないな、それに…』
等と考えながら少年たちのやり取りが終わるのを待つ事にする
やり取りが終わったのかこれまた金髪碧眼の少女が何ごとかぶつぶつ呟くと、少女が持つ杖に魔力が集まり
「プロテクション!」
少女がそう発すると、パーティー全員に杖に集まっていた魔力がなんらかの変化をし、一人一人に分かれ薄い魔力の膜を作るように五郎には感じられた『言葉から察するに守る為の魔法ということか』、リーダーの少年を中心に右に緑髪の槍持ちの少年、左に栗毛の片手剣にナックルガードの着いた大型のナイフを逆手に持つという二刀持ちの少女が、じりじりと五郎との距離を詰め始める
そんなことにはまったく意に介さず、弓持ちの黒髪の少年の影に魔力が集まる様子に集中する、金髪碧眼の少女と同じ様に何事か呟いたのち魔力が役割を与えられたかのように変化し少女の影に混ざる?様に見えた時
「影縛りっ」
その言葉と共に黒髪の少年の影から、数本の細い影が地を這い五郎の影へ迫る、念の為右足を引き腰を落とし左手を前に右手を腰にすえ、両手とも軽く拳を握り構えると、自身の影へと辿り着いた少年の影が、五郎の影から現れ足や胴や腕に巻き付き動きを阻害しようとする
「今だっ!」
リーダーの少年の声と同時に「槍技、貫通ぅ!」と魔力で尖端が強化された緑髪の少年の槍が五郎の左足を狙い、「ヒートエッジ…ヒートォスラァシュ!」スピードを上げ回り込んでいた赤髪の少女は、片手剣にナイフを沿わせ刀身を擦るようにスライドさせると、片手剣の刀身が赤く変化し魔力による熱を纏う、そのまま緑髪に合わせ五郎の背中へ斬りかかるが
「なんで!」「嘘でしょっ」
槍はふくらはぎ辺りに命中したが穂先が2cmほど刺さっただけて止まっているし、そのまま押し込む事も抜く事も出来ない、背中への斬撃は五郎が着ていた魔物の皮に穴を開け被り腰を紐で縛った貫頭衣の様な物は斬っているが、背中は薄皮一枚を斬るにとどまっており、貫頭衣は切口に沿って焦げているのに対し背中は薄っすら赤くなっているだけだった
「離れろっ!」
その結果に2人が愕然としていると、リーダーの少年の準備が終わったのだろう、2人に離れるように言う
その言葉に我に戻った2人が慌ててはなれると
「うおぉぉぉ、シャャイニングゥゥ」
今まで観た魔法や技のなかでも一番大量の魔力を纏っている剣を、最上段に構え更に魔力を増やすと、剣が輝きだし刀身の上に更に倍する光の刀身を形作ると
「スラァァァシュゥゥ!」
刀身を一気に振り下ろす
五郎は、刀身が振り下ろされる直前に「フンッ」と構えと共に硬気功に回していた気を開放し影の拘束を払うとそのまま開放した気を右の拳に覆う様に纏うと、ニタァと笑みを浮かべ、「ハッ」と、光りの斬撃に対し渾身の正拳を放った




