異世界に行った男1
「ふむ、体の調子は悪く無い、寧ろ今までよりもずっとよく動くな」
そう呟いたその男は、自らの進化した体への理解を深める為に殲滅した、100匹近いオークと呼ばれる魔物の集落の中に佇んでいる
「身体能力は人間であった頃のおよそ8割といったところか、だが今のほうが気はよく練る事が出来るし、それ以外の力も使えるな、同じ様な力を魔物の中でも強い奴は纏っていたから魔物特有のものなのかもしれないな、……まったく朝までは遂に寿命かとなかば諦め掛けていたが、運よく進化するとは…」
その男の周りには、今しがた自らが屠った数十匹のオークの亡骸が転がっている、どの亡骸にもたいした外傷はないが目や耳や口からは血が流れている
「進化が終わると同時に思考も素に戻った、思えばあの訳のわからない場所で、ゴブリンを選んでから思考が単純になって、それからはひたすら闘いの日々…いや、あれはあれで充実してはいたな」
そう回想しながら笑み作るその男、伊藤五郎は日本では資産家であったが、子供の時始めた古武術から武術にはまり、わずかな仕事時間以外は趣味である鍛練に充てていた、天賦の才があったのかは不明だが男は自分でも気づかぬうちに強く成りすぎた
己を鍛える事が趣味のため組手や試合を一切しなかった事も気づかなかった一因だろう、三十代の頃友人が家に遊びに来た時だった、普段はニュースぐらいしか見ないテレビで友人が見たいと言った格闘技の試合を見たときその実力の低さに驚き、気のせいかもしれないと他にもいろいろと強いと言われる者の試合を見漁ったが逆に確信を得てしまう事になる、その時男は「私は強かったんだな、漫画の中の人はもっと強いから勘違いしていた」と寂しそうに呟いたらしい
そう、男は格闘技漫画も好きだった、その中でも劇中にいろいろな解説が入る系の奴が特に好みだった、そんな
漫画が基準だった男の認識がズレているのは仕方のないことだった、それでも男は鍛練を辞めなかった、趣味だから
「ハハッ、いいなとても良いなっ思考もクリアだ!それに、どうやら此処は地球では無いらしい、其れに私よりも強い奴も沢山いるみたいだな、なにより私も魔物なのだから相手を殺してしまっても何の問題もないだろう、なんなら殺す事で薄っすらだが己が強化されている感じかする」
実は部屋から転送できるこの世界は地球を含め同じ最上級の神が創造した銀河団のもので其の銀河団の中で銀河規模で領域化しているのが上級の神で、さらに其の中の恒星系の規模が中級さらに惑星規模が下級の神のだいたいの領域の規模だ、勿論個々の力の差があるので(特に中級以下は)同じ下級でも数個の惑星から1つの大陸までと様々だ
上位の神ほど自らの領域が発するエネルギーやリソースに関して詳細に内容を決められる様になっている
五郎のいる(アレス)は上級の神の領域でも中級や下級の神が居らず運用は亜神(古龍など)に任すが直接リソースなどの割り振り等した星である、特長は最上級の神と自らに割り当てたエネルギー以外を割とぎりぎりまで生物の強化にリソースを振っているため生物全般が相手を殺した時に得られるリソースが他の星よりも多いので人含め生物は強すぎるが、反面、食料や資源に割くリソースが低いために慢性的な食料不足による、戦争や略奪、魔物の侵攻など割と頻発するため殺伐としている、ついでにエルフや獣人といったいわゆる亜人は存在しない、総じて生物の繁殖力が高い為に今まで絶滅した種はいない
そんな星にいる五郎は戦い殺す事で、己が強くなることに既に気付いていた、ちなみに五郎はリソースを吸収しても殆どポイントに変換され自身への強化はこの星の元々の吸収率からいえば10分の1ぐらいだったりする
「それでは行こうか、私より強い者に会いに!」
進化した事で感じられる様になった強者の気配に向い歩き出すのだった
同じ頃、五郎氏のいる場所から惑星の反対側に、左門(竜騎士ver)が転送を終えていた
「マジかぁ…惑星規模じゃ探せねぇよ……」
俺は転送直前にシモンから(アレス)が星の名前と聞かされた為にちょっと早とちりしたと後悔していた、が
「おぉ…これが異世界……」
だってやっぱり地球じゃ見ないまるっきり鬼な生き物の集団が、何メートルとか何匹とかよくわからない太さが直径30センチぐらい有りそうなミミズっぽい物と戦闘?してたり、上空から恐らくハーピィの類いなのだろうがいわゆるダークなファンタジーな感じのデザインにいそうな姿のそれがこれまた集団で、おそらくオーガとおそらくワーム両方に襲いかかるという光景に
「感動せんわっ!」
何せ見た目が醜悪過ぎるし、そんな集団が手足を千切られ、腹を食い破られ臓物を撒き散らかして戦っているのを見れば、異世界に来た感動など覚えないだろう
「来てすぐこの光景とは…せめてもう少しデザイン的にライトな感じのほうが…いや、しかし其れはそれで此方から攻撃する時し難いのか…」
そんなことを考えながら、割と離れた場所から戦いを見学しているとピッピッという機械音と共に視界の中の化物の集団に次々に赤いマーカーが表示される
「はあ、なんだこれ、まるで❲発射❳ロック…」
突然聞こえたシキの声と共に頭上から複数の火球の様なものが、直線的では無く無駄に格好良い動きでマーカーの付いた化物に次々と命中すると突然、上空ついで地上で結構な規模の爆発か起こる
❲過剰な威力でしたね、まぁ武装のテストとしては上々です❳
爆発に依る衝撃波を受けながら頭上を見ると、生物と機械の中間の様な見た目の小型のドラゴンが降りてきて肩辺りに浮いている
「今度はバ×ムートか、もうやりたい放題だな…」
一応ホバリングする様な態勢で、浮き続けるコレは何作目か忘れたがどう見てもバハ×ートだろう、ただ近くで観ると割とメカっぽい事とカラーリングが白ベースで赤や黒でラインやらアクセントがされている所がバ×ムートっぽさを抑えていると言えば言える
❲s.kシリーズ a.ab 005-6 R.E.D です❳
なんの躊躇もなく言い切るシキ、まぁLじゃなくRだからなんだろうが其れならレッドでいいと思うんだが
「………やっぱ素が俺だから自分でデザインするのは苦手なのか?」
そうじゃないのかとは何となく思っていたのたが、俺も昔から想像やら妄想は細かく出来るのだが、其れを明確なイメージにするのは苦手だった
❲能力値的には可能ですよ、其れも、しかし其れをしたとしても結局どこかが何かに似ているという結論に達したので、そちらに労力を注ぐよりも一番適したものを参考にしたほうが良いと…❳
「割とあっさり認めたな」
❲そんなことより、これからどうされるのですか?❳
話題を変えてシキが尋ねてくるのを無視し辺りを見回す、正面側はシキの攻撃によりちょっとしたクレーターが出来ていて塵も残って無さそうで、左右を見ても荒野が広がり確認出来る範囲には草木一本見当たらない、ならばと後ろに向いてみると何百メートルか有りそうな岩山が見える
「山登り面倒だな、シキちょっと上から町か何か探してきてくれ」
いつの間にあんな竜もどきを用意したのかとか、そもそもシキは本体といるのではないのかとか、視界のマーカーとか聞きたい事はいろいろあるが、とりあえず情報収集だろ、山登りたくないし
❲其れなら先ほど攻撃前に上空から確認したのですが、前方およそ100kmに防壁らしきものが辛うじて確認できましたが…❳
「100kmは…流石に遠いな他には何か無かったのか」
100kmくらいなら、この竜騎士verなら数時間で移動できるのは分かっているんだが
❲西側の山を越えた先およそ20kmに海がありますね、あとは魔物やら森やら山が点在してますよ❳
「ゴブリンっぽいのって見えるか?」
町に行かずに五郎氏を探すなら、種族的にゴブリンも調べないとな
❲この星のゴブリンがどのような姿をしているかに依りますが、見える範囲には居なさそうです❳
其れだけの範囲に居ないのなら
「良し、海に行こうか、たぶんこの大陸だか島には居ないだろう」
実際はどうか解らないがイメージ的に何処にでも居そうなんだが、ぶっちゃけこの範囲で見あたらないなら、もし居たとしても探すの面倒くさ過ぎる、それならゴブリンが適度に居る大陸に行けば良いと思う
「そういえば俺まだ一歩も動いてなかったな」
せっかく異世界に来たのに首ぐらいしか動かしてなかった事に、「何やってんだ俺ぇ」と呟きながら海に向う為に歩き出しだ




