忘れられた男 1
「…何だ此処……」
目が覚めると、知らない場所に、と言うか変なところに俺は居た
奥行のある教室のような場所で、学校の様に座席が並んでいる
俺は気がつけばこの変な場所の、何列もある座席の一番前の列の左端の席に座っていた
そして、この空間を一番よく分からなくさせているのが、この教室の様な場所の後ろの空間が、壁の中心に向って吸い込まれているように見えることだ
「何だよいったい…」
呆然していた俺は、とりあえず現状を整理することにし、直近のことを思い直す
離婚のことや、子供のこと、商売やお金のことなど、諸々を片づけやっと目処がたったところで、自分の事は棚に上げ、こちらを悪者にして文句だけ言ってるあの女を見て、まともに対応するのが阿呆らしくなった俺は、店を閉め家を売った金で当分の間引き篭もるつもりだった…
「さぁ、これから引きこもろうって時に、はぁ…」
まぁ此処まではいい、しかし俺自身には、死んだ記憶も寝たような記憶も無い、なのに何故こんな場所いるのか……
「うんっ、さっぱり分からん!」
暫く考え込んでそういう結論に達した俺は、思考を切り変える
「とっ、なると…」
辺りを見回し、自分が居る机を見ると、左上にスイッチがついているのが分かる、そして其れは今はOFFになっている
確認のため、自分の周りの他の席を見て廻るが、どの席も全てスイッチはOFFになっている、この感じだと他も同じだろう
「たぶん三十分ぐらい経つけど、何もおきないし誰も来ないな、教卓もあるのに」
この空間を、最も教室たらしめる要因である教卓も沈黙し、其れに対する人物的なものも現れない
「・・・しゃあない…押すか…」
何らかのリアクションが欲しかった俺は、仕方なくスイッチをONにする
“ブンッ”
眼の前に半透明のディスプレイらしきものが浮き上るが…
「…なんも映らんのかいっ」
五分ほど待って何も表示されず、ただ浮かんでいるだけだった…
「このパターンは普通ポイント使ってスキル取ったり、ステータス弄ったりするやつじゃろ!」
まったく解ってないと憤慨していると、ふと教卓が目に入る
「まさか…」
俺は席を離れ教卓まで行き様子を確認する、案の定、教卓にもスイッチはあった、もちろんOFF状態で…である
「これオンにしたら、とりあえず何かおきるか…」
この空間が教室と同じ意味を持つなら、他の席をいじるより何か起る可能性は高いはず
“ブンッ”
頼む何か起きてくれと、スイッチをオンにすると、同じ様にディスプレイが浮かび上がる、上がるが……
「この…ざっけんな!」
教卓という他の席とは違う存在に、期待していた俺は、自分で思っていたよりもストレスを感じていた様だ
暫く待っても何も写し出されることのない画面に、思わず殴りつけてしまうが、拳はそのまま止まる事なく画面の中に突っ込んでしまう
[認証シマシタ、コレヨリ起動シマス]
画面にきえた拳を引き抜こうとした所で、画面が明るくなりログが流れる
「えぇ…」
どういう事だ…と思っていると
[キャラクタークリエイトルーム version α1.00]
新たなログが出た瞬間
「いっがぁぁ…」
突然、全身に今まで受けたことのない痛みを感じ、我慢できず気を失った…
「いってぇ…」
目を覚ますとまだ全身に傷みが残っている、どのくらい気を失っていたのかは分からないが、俺は教卓に突っ伏す様な姿勢で気を失っていたらしい
体を起こし何か変化があるか画面を確認する
[リソース不足デス]
[構築サレテイル空間カラ必要分回収シマス]
[回収完了]
[キャラクタークリエイトルーム version α1.00起動シマシタ]
[メニューヲオシテネ]
画面に残るログを見る限り、どうやらシステムが起動したらしい
「えっ、なんでぇ?」
そこで気付いた、教室が狭くなってる、幅が半分程と奥行は30メートルぼどあったのが今は10メートル無い感じがする、相変わらず、壁の中心に吸い込まれている様に見えるのは変わらない
「なるぼど、リソースか」
狭くなり、座席も少なくとも50以上有ったものが、いまは5席しかない、消えた質量的なものがリソースとして回収されたのだろう
状況を確認して、このままでじっとしていても仕様がないのでメニューを押す
「管理者メニューか?」
そこには、スキル(作成・追加・削除)、種族(追加・削除)などの明らかに選ぶ側じゃない、選ばせる側のメニューと、クリエトポイントのこり1500000cpと表示されていた
ただ、ここでは自分のステータスやスキルの確認、スキルの取得や種族の変更等はできないみたいだ
「ここでスキルとか作ったとして俺はどうやって獲得するんな?」
そこで、最初に座っていた席に戻ってみたが、画面にはなにも表示さてなかった、なので教卓のときと同じ様に手を突っ込んでみる
[確認シマシタ]
name 左門
age 345
種族 ?