表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

子守唄

「凄い色々な店がある!」


「ラーズレイとは全く違う感じね。あの町は冒険者の為の町だから」


「あれ美味そう!食べてみよう?」


バッツはウキウキで露店に走って行く。


二人は今人間が治める国ガルドエルム首都に来ていた。

ここは人間族が治める中でも一番大きい国である。

確か一年前に国王が倒れ新しい王が治めている筈だ。


(人が多いわ。私がエルフだってバレないように気をつけなくちゃ)


ネオンはフードが外れないように縛り直す。

そこに誰か背後からぶつかってきた。


「きゃ!!」


「あっ!」


ぶつかって来た人物が倒れそうになってネオンは思わず支えようと手を出した。

その拍子にフードが外れてしまう。


「・・・・・え?エルフ?」


ザワッとあたりが騒がしくなった。

ネオンはその視線で思わず身体が硬直してしまう。


「何故こんな所に。おい!見ろよアレ!本物だ!」


「嘘だろ。俺初めて見た・・・エルフって確か捕まえて売ると一生遊んで暮らせる金額がもらえるんじゃ・・・」


「お、おい!誰か捕まえろよ!!」


ネオンの背に冷たい汗が流れた。

逃げなければいけないのに動けない。


「大人しくしろよ?おい!誰か手を貸せ!」


何故、こんな扱いを受けなければならないのか。

彼女は魔物ではない。人である。


「何してるの?」


その時。

人混みをかき分けて呑気に肉を齧りながらバッツが現れた。ネオンを捕まえようとしていた男が笑ってバッツに話しかける。


「こんな所にエルフが居たから捕まえて売って、その金を山分けするんだ。お前も仲間に入るか?」


バッツはムシャムシャと食べていた肉を咀嚼してのみ飲むと。その男にニッコリ笑った。


「うーん。でもその子、俺の冒険者仲間なんだよねぇ?」


その言葉に周りにいた者、全員の目が点になった。

バッツは笑ったまま肉を袋にしまう。

そしてその笑顔のまま爽やかに言い放った。


「その子に少しでも触ったり、傷つけたりしたら・・・殺すよ?」


その瞬間。

ネオンの足下周りにある土が鋭く近くにいた男たちの身体スレスレをいく本も突き抜けた。

あまりの出来事に皆呆然と立ち尽くしている。


「何?この町はいつから人間族以外出入り禁止になったの?それなら表に書いておいてよ。そしたら最初から来なかったのに」


ガルドエルムにそんな掟は存在しない。

この事が知れれば、罰せられるのはこの男達だ。


「覚えておくといいよ。今後もし、この子を見かけて同じことしようとしたら、次こそはその身体が全身穴だらけになるからね?」


男達は半泣き状態で震えながら頷いている。

バッツはスタスタとネオンの前に来ると取れたフードを拾い上げて土埃を払うと被せてあげる。

ネオンは固まったままでバッツを見ている。

その様子見てバッツは片腕でネオンをすくい上げる。

ネオンは慌ててバッツの肩に掴まった。


「ここは騒がしいから別の所に行こう。いいよね?」


その言葉にネオンが頷くとバッツは笑って走り出した。

凄く足が速い。

背後では誰かが何やら叫んでいたがバッツは攻撃はせずそのまま町の門を目指して走って行く。

ネオンは申し訳なく思いながらもされるがままバッツに身を任せる事にした。




****




「ごめんね。怖い思いをさせちゃったね?」


二人は今ガルドエルムの国境の森にいた。

今日はここで野宿である。


「何でバッツが謝るの?助けて貰ったのは私なのに」


ネオンは申し訳なさそうなバッツに笑ってしまう。

バッツは少し困った顔をして頬を掻いた。


「俺けっこう強いからあまり怖い思いをした事が無いんだ。だから怖いってどういうものか分からなくて・・・」


確かにあれだけ強ければそうだろうな、とネオンは納得する。


「だから、どういう時、人が怖いと思うのか理解出来ないから心配になって。ネオンはあの時怖かったよね?」


本来ならそんな事認めたくない。しかしネオンはその事を素直に認めた。


「うん。凄く怖くて動けなかった。正直言うと泣きそうだったの」


バッツが余りに率直に聞いて来たので余計な事まで言ってしまった。


「そっか。良かった間違えてなくて。俺よく間違えてレイヴァン様に怒られたから・・・」


(あ・・・・・・)


「と、所でさっき何を買っていたの?見せてくれる?」


ネオンは慌てて話を逸らした。

暫く一緒にいて気付いたのだが、バッツは時々いつかの夜の様に不安定になる事がある。

それが決まってレイヴァンの話が出た後なのだ。

きっと思い出した後、辛くなるに違いない。


「あ、これ?屋台で売ってたんだけどお肉大丈夫?」


ネオンは笑って頷くと中を見せてもらい説明を受けた。

いちいち何のお肉か聞いたらしいバッツは満面の笑みである。


(今日は何事もなく寝れるといいけど・・・・大丈夫かな?)



結論から言うと。やはり駄目だった。


「バッツ。バッツ大丈夫?」


震えているバッツに声をかけてみるが今回は返事がない。

初めてのパターンにネオンは少々困ってしまった。


(どうしよう。震えが止まらないわ。何がいけないのかしら)


頭を撫で背中をさすってあげる。

ふとバッツが寝返りをうつ。顔が凄く青い。


「バッツ。バッツ大丈夫よ。側にいるわ」


ネオンは少し考えて辺りを見渡すと自分もバッツの横に寝転がった。そしてバッツの頭を支え自分のおでことバッツのおでこをくっつけた。


(アスターシェ様すみません。緊急事態なので)


ネオンはスゥっと息を吸い込むと小さい声で歌い出した。


眠れぬ夜は輝く星を見守る者になるといい

輝く星の数の分貴方の愛があるでしょう

眠れぬ夜は囁く森の話し相手になるといい

その囁きを聞いたなら他人の愛を知るでしょう

貴方はその小さな手で私に幸せを運ぶ天使

貴方はいくつもの夜を越えて全ての愛を知るでしょう

あっという間に朝はくるさぁ目を閉じてごらん?


輝く星が見えるでしょう?

さぁ耳を澄ましてごらん?

森の囁きが聞こえるでしょう?

貴方は愛に包まれて幸せな眠りにつくでしょう

眠れ眠れ愛し子よ。私の愛に包まれて



ネオンが歌い出すとそれは美しい音色に乗ってやってきた。

森の妖精達だ。

彼等は優しい光を放ちバッツとステラの周りを囲むように集まってくる。


[わたしは光輝く星の貴方の愛を受け取ろう]


[わたしは森の囁く声で貴方に愛を伝えよう]


[[貴方はその小さな手で私を幸せにする天使]]


[[そんな貴方を私は愛するでしょう]]



これはエルフ族に伝わる子守唄だ。

しかしネオンが歌うと、ただの子守唄ではなくなる。

彼女はエルフ族の歌姫と呼ばれる特殊な存在である。

しかし・・・・・・。



(これは・・・どういうこと?)



ネオンが歌うといつもこうやって妖精達が集まって来る。

そしてその効果をより強くするのだが、普段はこんなに集まって来ないし大合唱にもならない。

驚いているネオンを他所に妖精達はバッツの頬にキスをする。そして歌い終わると皆笑いながら次々と消えていった。


(バッツはダービィディラルでは無いはず。なのに何故)


ダービィディラルとは妖精や精霊に無条件で愛される者の事だ。エルフ族にも数年に一度現れたりするが滅多に見かけないし、もしそうであればすぐわかる。

何故なら妖精が片時も離れないからである。

そんな事はダービィディラル以外あり得ない。

ネオンはバッツの寝顔を見る。

妖精達はその歌の通り、バッツに安らかな眠りを与えていった。バッツの寝顔はすっかり血色を取り戻し子供のようにスヤスヤと眠っていた。

ネオンはその顔を見て微笑んだ。


(まぁバッツには聞かれてないし、いいか。深く考えるのはよそう)


ネオンは身体を起こそうとして、バッツがまた服を掴んでる事に気がついた。


(これ、クセなのかしら?わざとでは無いわよね?)


ネオンは諦めて横になる。

いい夢を見ているのかバッツは微かに微笑んだ。


(本当可愛いな。何なんだろう、この生き物)


ネオンは男性を可愛いと思ったことが今まで一度も無い。だからバッツを可愛いと思ってしまう自分がおかしいのでは?と思ってしまう。

バッツの頬を指でつついてみる。

それでもなお、笑ったままのバッツの寝顔にネオンは満足した。


(おやすみなさい。良い夢を)


ネオンも眠い瞼を閉じた。

明日もきっと、バッツに驚かされる1日になるだろうと想像して。



「・・・・・・・・・な、何で?」


しかし朝一番に驚いていたのは、寒かったのかバッツを湯たんぽがわりに抱きついていたネオンに驚き、身動きが取れないバッツであったことにネオンは気がつかないのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ