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ハクラと銀翼の竜【ライト版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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北海のグリーブト【3】

 


 ……………。

 ……………………。

 ………………………………ん?

 ここ、どこだ…?

 俺、どうしたんだっけか…?

 真っ白タイルの天井…宿屋?


「…ん? 目が覚めたのか? 体調はどうだ?」

「…だるい…。…俺、どうしたんだっけ…」

「雪ではしゃいで熱出したんだよ。…どうやら飯に何か盛られていたわけじゃなさそうだし…お前がバカだったっつー事だ」

「う…」


 返す言葉もねぇや…。


「…つーか、ここどこ?」

「アフォール山基地…朝着いた飛行場のあるグリーブトの軍事施設内の一室だ。今日はここに泊まらせてもらうことになった。フレディは火口に行ってるから、今はいねーよ」

「え…一人で…⁉︎」

「おいまだ起きんな」


 だ、だって一国の王子がたった一人で雪山火口に登頂とか…そんなバカな!

 ヨナに押し戻されて、枕に沈むけど頭は完全に覚醒した。


「お前、あいつが誰か忘れてねーか? 片や半神半人、片や幻獣のハーフだぞ。俺もだけど。…ましてフレディの黒炎能力は『氷』。こんな雪山むしろ庭だっつーの」

「に、にわ…?」

「水を得た魚のように生き生き「行ってきまーす」って行ったわ! 心配するだけ無駄だ無駄! グリーブトはフレディととんでもなく相性がいい地域だからな…むしろ元気になってる」


 マジか。

 俺はこんななのに…。


「ヨナは…?」

「…俺は…あんまりだな。俺は『動植物を操る』能力だから動植物の少ない地域では逆に弱る。俺がフレディに敵わねぇ最大の理由だ。…俺はともかくお前こそ大丈夫か? 熱は下がっただろ?」

「う、うん」


 気だるさはあるけど、寒気はない。

 もしかして、なにか…。


「なんか魔法使ってくれた…?」

「……よくわかったな…? 解熱の魔法だ。フレディと違って俺はどっちかっつーと回復系の方が得意なんだ」


 うっわ、意外…!


「テメェ、今「意外」とか思っただろ」

「お、思ってない思ってない…」

「…まぁいい。とにかくもう少し寝てろ。フレディが帰ってきたら起こしてやるよ」

「う、うん…」


 …まぁ、なんだかんだ優しいし、面倒見いい兄貴って感じだもんな、ヨナは。

 布団あったかいし、頭ぽんぽんしてくれるし…。


「ありがと、ヨナ…」


 お兄ちゃんかぁ。

 きっとこれがお兄ちゃんなんだよな。

 やっぱりヨナはお兄ちゃんかぁ〜。

 …うん、ヨナがいるなら…安心して寝れる。

 おやすみ………。


 ……………。



 因みに、翌朝まで俺は起きることはなく、ジョナサンの話では帰ってきたフレデリック様も即寝したらしい。

 それでも昼まで寝ているのがフレデリック様だ。

 二日ほぼ徹夜だったから、仕方ないっちゃー仕方ない。

 俺の方は熱も下がって至って元気に戻ったけどな!

 リーバル様は昨日の午後、燃料補給と整備点検が終わってから天気も晴れて早々に首都にお帰りになったそうだ。

 見送りはヨナが一人でやったらしいけど、喧嘩にならなかったのかな?

 とにかくフレデリック様が起きたら下山して麓の町、アフォールに向かう事で話はまとまってるんだってさ。

 俺の寝てる間に…まあ、仕方ないけど。


「それはそれとしてさ、龍脈はどうだったんだ?」

「フレディが予想していた通り地脈にエネルギーは通っていなかった。あとはバラバラになんのを待つばかりだな」


 りゅ、龍脈の話からなぜ大地バラバラの話に…。

 アバロン大地、バラバラ待ちって…!


「地脈がそんな状態だ、龍脈も相当に弱っているんだと。けど、中心は見つけた。国境付近だそうだ。地図を見たがこの辺りだな」

「…エルーシの町…っていうのが近くにあるな…」


 ん?

 ちょっと待った、よくよく見るとここって…。


「い、いやいや国境付近ってベルゼルトン側のグリーブト寄りじゃん⁉︎」

「ああ、火山からのエネルギーを利用できて、尚且つ龍脈を地脈へ張りめぐらせるのに最も効果的な位置だ」


 そーではなくてー!


「結局ベルゼルトンに行くのかよ⁉︎」

「? まぁ、入国料云々は仕方ねぇさ。別にそっちこっち行くわけじゃねぇ」

「そ、そうだろうけど…」

「……もしかして、お前を拐かした奴らのことか? …確かベルゼルトンの権力者だったな…? …だとしても会うかどーか分かんねーだろう? むしろ遭遇する可能性は限りなく低いしよぉ」

「そ、そうなんだけど…」

「衝撃的だったのは分かるけどな。…俺もできることなら二度と関わりたくねぇし…」

「う…うん」


 あの兄弟…。

 確かにもう会わないかもしれない。

 いや、そっちの方が可能性としては高いんだよな。

 でもなぁ…ベルゼルトンにはもうそういうイメージしかねぇよ…。

 まだグリーブトのリーバル様の方がましなイメージだよ!


「けど忘れんなよ、お前の背中にはニーバーナ王へのメッセージっぽいもんが刻まれているんだ。俺たちはニーバーナ王を回収して、一応意思確認の後可能なら連れて帰る。どっちにしてもニーバーナ王には会わなきゃならん」

「うん…」

「…んなことより、アルバニスに行ったら何するのかでも考えておけよ。多分そっちの方が楽しいんじゃねぇの?」

「! …アルバニスで何をするか、か…」


 確かに!

 そっちの方が面白そう…!


「………それにしても、我が兄ながらホンットに寝汚ぇ…」

「すや、すや…」

「あはは〜…」


 そうそう、場所はフレデリック様にあてがわれた部屋だ。

 軍事施設だからシンプルな作りで無駄なものは全然ない。

 多分気を遣われて、俺とヨナの部屋は隣とその隣。

 食事も美味しいけど飛行機の中のものに比べればシンプル。

 グリーブトは万年雪の多い極寒の地だから地中に育つものが多く、暖かい料理が多いんだってさ。

 南国育ちの俺にはあったかい料理っていうのがなんとも不思議だったけど、雪の中はしゃぎ回って熱出した手前理解はできる、すごく。

 そんな時だ、扉がコンコン、と鳴る。

 俺が出ると、軍人さんが食事はどうするか、との事だ。

 フレデリック様は朝も食べてないから心配されてるのかも。


「あーっと、取りに行きます。部屋で食べたいそうなんで」

「ではお持ちします」

「え、いや、俺取りに行…きますよ」

「いえ、お持ちします。それと、下山されるのでしたら早い方が…。あまり遅くなると麓に着くのが夜になります。我が国は他国よりもはるかに陽が落ちるのが早く、また夜には熊など危険な生物も出やすくなりますので…」

「くま?」

「巨大で凶暴な肉食動物です。とても危険な生き物ですよ」


 えー…。

 なにそれ、そんなやついんのぉ〜?


「さ、サメよりやばい生き物なの?」

「…そうですね、地上のサメみたいな感じです」


 ちょ、ちょーやべーじゃん⁉︎


「き、聞いてくる! あ、えーと、ご飯は…」

「持って来ますね」

「ごめん、なさい!」


 軍人さんにお辞儀して、部屋に戻って今の話をヨナにする。

 けどヨナは…。


「お前なぁ、アルバニスには魔獣が出るんだぜ? 熊だのサメだの目じゃねーよ。けどまあ、心配してもらえんのはありがてぇけどな。…ま、それはそれとして昼飯は確かに部屋の方がいいな。フレディもそろそろ起きるだろう」

「…魔獣って熊やサメより怖いのか?」

「ったりめーだろ。個体にもよるが、邪気や負の感情なんかを含んだ魔力を吸った動植物なんかが怪物になるんだ。俺の数十倍でかいやつもザラだぜ」

「えええええ⁉︎」


 ヨナの数十倍⁉︎

 それって昨日の飛行機くらい⁉︎

 い、いや、もっと⁉︎

 こ、こわ〜!


「…そんな奴が人里を襲ったりすることもあるからな、王国騎士や勇士、傭兵はそのためにいるのさ。武術に耐性があれば王国騎士の魔法使いなんかも応援で戦ったりする。命懸けにはなるが民に尊敬される、正義の味方ってやつだ。子供はまず憧れるな」

「…そういえば前にもそう言ってたな…」

「ならもう少し詳しく教えてやろう。王国騎士にもいくつか種類がある。身体能力強化や武具強化魔法を操る王国騎士の中でも花形と言われる騎馬騎士隊。魔法での大掛かりな攻撃、サポート、回復などその時々に柔軟に魔力で対応する魔法騎士隊。海竜の末席、シードラゴンを駆り、海を守護する海竜騎士隊。天翔る飛竜の末席、エアドラゴンを駆り空を守る天空騎士隊。街を守る衛騎士隊。この五つが総じて王国騎士と呼ばれている」

「な、な、な、な、なにそれー⁉︎ 全部かっこいいー!」

「そーだろうそーだろう。…で、それぞれ五騎士隊を総括するのが騎馬騎士のランスロット・エーデファー。フレディの数少ない友人の一人だな。真面目で人間離れした魔力と剣技を備えた超人だ。年に一度行われる剣舞祭で連続優勝もしている、まさに国民的ヒーローってやつだな!」

「なにそれスッゲーカッケー! …あれ、ランスロット? どっかで聞いたような…?」

「ああ、フレディがお前の知り合いたちをアルバニスに送った時に頼るよう名前を教えた男さ。ランスロットならなんとかするだろう」

「…! リゴたち…そういえばもうアルバニスに行ったんだよな…。…今頃なにしてるんだろう?」


 いいなー、と思う。

 真っ先にアルバニスに行けて。

 でも知り合いもいない中、こことは全然違う世界でやっぱり大変な思いとかしてるのかな?

 俺も早くアルバニスに行ってみてーなぁ!

 ランスロットさんって人に会ってみてー!


「…そうだな、お前をアルバニスに連れて行った後のことも少し考えておいた方がいいか? …とりあえずお前はまず何をやりてぇ? 確か、俺たちについて来たいとか言い出した時は飛行機に乗りてぇっていってたよな? 乗るか? アルバニスの飛行機」

「! あ、そ、そういえば全然違うけど一応あるって言ってたっけ!」

「アルバニス王国の飛行機は三種程だな。大体一人乗りだ。俺たちの国はあえて空を使って移動する必要がねぇから、そこまで飛行技術は発展してねーのさ。どうしても空を飛びたきゃ飛行魔法を使えばいいし、大人しいエアドラゴンのレンタルも仕事として存在してる」

「なにそのワクワクに拍車かける魔法と職業ーー⁉︎」


 飛行機なんてなくても魔法で空飛べちゃうの⁉︎

 ド、ドラゴンにも乗れちゃうのぉ⁉︎

 夢が現実になりすぎだろアルバニスー!


「なに言ってんだ? そもそもお前、得意な属性『光』と『風』だろう? 『風属性』って事は飛行系の魔法も得意分野に含まれてるぞ?」

「ほあああぁ⁉︎」


 そ、それって、それってつまりいいぃぃい⁉︎


「(うわ、気持ち悪ぃくれぇ目が輝いてんな…)…じゃあ、最初の習得魔法目標は飛行魔法にしておくか?」

「す、する! 魔法、空飛びてー!」

「落ち着け」


 そうだ!

 フレデリック様が起きるまで魔法の練習しよう!

 ヨナが言ってた『魔力の凝縮』やろう!


「? なんだ、魔法の練習でもするつもりか?」

「うん! 早く空飛んでみてぇ!」

「…動ける程度にしておけよ?」

「…あ…うん…気をつける…」


 そうだった、この間やりすぎてぶっ倒れたんだった。

 でもその辺りの加減がよく分かんねーしな〜。

 そうだ、飯が届くまでにしよう!


「失礼致します。昼食をお持ち致しました」

「早!」

「そうか?」


 …結構喋ってたっけ?


 …………。

 それにしても、やっぱりグリーブトの料理って美味い!

 なんかいくらでも食えそう!


「…グリーブト料理ってウチの国の料理と似てるな」

「そうなの?」

「ああ、アルバニスは加熱しねぇと食えねぇ野菜ばかりなんだ。自然とこういうスープ系が多いくなる。なんか、たった数日なのに懐かしいぜ…」


 …グリーブト料理と似てるってことはアルバニスの料理も美味しそうだな。

 そっちも楽しみだ!


「…ん…いい匂い…」

「…フレデリック様! 起きたのか⁉︎」

「…フレディ?」

「…あーん…」

「起きろ!」


 …ぶ、ぶん殴った…。


「…ふぁ〜〜あ……よく寝た…。今何時〜?」


 寝起きのフレデリック様、なんかカワイイ…!


「もう13時になる! ったく、ほんとに寝汚ぇ人だな…」

「…………」

「起きやがれ!」


 ここにきて二度寝!

 さ、さすがフレデリック様だ…!

 ぶん殴るヨナもヨナですげーけど。


「…起きる、起きるよ……痛いなぁもう。…おや、二人とも何か美味しそうなの食べてるねぇ」

「あ、フレデリック様のもあるよ」

「…ん〜…先にお風呂はいってくるよ…ふぁ…ふあああぁ…」

「…そ、っすね…」


 しっかり目ぇ覚ましてきてくだせぇ…。





 ********



 それから三十分程で部屋に備え付けのシャワールームから全裸で出てきたフレデリック様。

 いやいや、いくら室内暖房ついてるからってっていうかぁぁあああぁ!


「王族風呂上がり全裸疑惑!」

「?」

「?」


 いやいやいやいや、なに「?」って頭にハテナマーク浮かべてんのこの王族たち!

 破廉恥! 破廉恥でござる!

 バッチリ見ちゃったよフレデリック様の全裸!

 ヨナほどとは言わないけど、思った以上に体バッキバッキだった!

 普段ケープとかロング丈のマントとかで分かりづらかったけど、脱いだらすごい人だった!

 下半身の凶器も体の割に、いや、多分標準よりは…だと思うし!

 ぬぅあああぁぁ、も、ものすごくいけないものを見た気分んんん!

 よかった、スープ類飲んでなくて!

 飲んでたら吹いてた!


「飯食ったら麓に降るか? なんか熊出るんだとよ」

「…くま? へぇ、いいな見てみたい。僕、野生動物には怖がられちゃうんだよね」


 まさかの見てみたい⁉︎


「ま、お前『幻獣』の血の方が濃いからな…。それと、こっちはかなり陽が落ちるのが早いみてぇだぜ」

「僕ら夜目は効くし問題ないんじゃない?」


 夜目⁉︎


「まあ、そういうよな…」

「え、えぇ〜〜…」

「それよりも、ニーバーナ王がいるであろう可能性が一番高い龍脈の中心点…そこへの行き方は調べておいてくれた?」

「ああ。ベルゼルトンに行く必要があるそうだ。ベルゼルトンとグリーブトの国境は島と島特有の絶壁があるらしいが、何箇所かベルゼルトンへ渡る橋があるんだと。ここから一番近いのはトルトニート岩壁橋だとさ。途中にルキニーって村がある。少し寄り道になるがここ寄っていいか?」

「ああ、例の飛行機乗りたちの故郷か。構わないよ」

「!」


 …東の壁海を越え、アルバニス王国に行った冒険者兄弟のことか…。

 ルキニーの村…村出身だったのか。

 きっとすごく努力して飛行機乗りになったんだろうな。

 かっこいいな…。


「で、そこまで行くのに移動手段は?」

「…麓の町でそりを雇うか、徒歩。もしくはスノーバイクだとさ」

「…なんだい、そのスノーバイクって」

「んー、なんでもこの国特有の乗り物なんだと。一人乗りで、足は速いし荷物は結構詰める。けど、雪の上しか走れねぇ、だとさ」

「それは橇も同じなんじゃないの?」

「いや、この国の橇は車輪がついてて、雪のない道は車輪を下げて使えるようになってんだとさ」





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